第16話 フェニックスの卵
ダイアウルフの毛皮を剥ぎ死体は焼き捨てる。持って帰れば結構な金額で売れるらしいのだが、森の奥深くで狩った獲物を運ぶのはとてもではないが不可能だ。
試験を受ける際に渡された、モンスターの討伐を記録してくれるカードを取り出す。
するとそこには確かに『Cランクモンスター ダイアウルフ討伐』と記録が残されていた。
「ここまでで三週間、一つ目の課題で一ヶ月かかってないんだから、まあまあかな?」
この先の試験の難易度を考えるとまだまだ油断はできないのだが、今はひとまず課題をクリアしたことを喜ぶことにしよう。
「おめでとうございます。それにしても、トロルではなくダイアウルフを狩ってくるとは思いませんでした」
国家冒険者専用窓口にて、以前手続きをしてくれた受付の女性が笑顔でそのようなことをいう。
「ええ……トロルが一切みあたらなかったもので……」
「あー、もしかすると先に受験した人たちが狩ってしまったのかもしれませんね」
彼女は心当たりがあるのか、乾いた笑いをするとそう告げた。
「それじゃあ、次の課題をお願いします」
「かしこまりました。では、討伐記録の魔導具を一度戻してください」
俺は彼女の言葉に従い、懐からカードを提出する。
受付の女性はそれをツルツルした台の上に置くと何らかの操作を行った。
カードが白く輝いた。
「では、こちらのカードに記載されているレアアイテムを三種類集めたら戻ってきてください」
書かれているのは、希少なハーブ、希少な鉱石、強いモンスターの部位などなど。とてもではないが、一つの場所で集まるはずもないようなアイテムがあった。
「この【コカトリスの卵】って、あのBランクモンスターのコカトリスですか?」
その中に、少なくとも現時点で場所が割れていて入手しやすそうなレアアイテムを発見する。
「ええ、そうですね」
「流石にそれは、鬼畜なのでは?」
確かにダイアウルフは倒せたが、対策をした上での話。これがもうワンランク上ともなると、今の俺では無謀な賭けになってしまう。
「実は今回のリストですが、貴族や商人から依頼されている品物が反映されています。この魔導具は国家冒険者も持っているもので、これさえあれば現時点で必要としているアイテムがわかって便利なんですよ」
「なるほど、つまり、二次試験は内容が変化する上、競争ということですか?」
「はい、王都に点在している国家冒険者の方々も、これらのリストを持っていますので、早い者勝ちですね」
受付の女性は満面の笑みを浮かべそう言った。
そうなると中々厳しいことになる。
相手は現役の国家冒険者で、王都周辺の地の利もあるのだ。
ここから後二ヶ月という期間内に五種類のアイテムを手に入れなければならないと考えるとそれ程時間があるわけではなさそうだ。
「ちなみに、コカトリスの卵ですが、最近とある国家冒険者が収集に向かったと思われますね」
俺が目撃情報を得たのが一週間前。森から戻る時にそれらしい人物と遭遇した覚えはないが、今も森の中にいるのだろうか?
「ありがとうございます。とりあえず向かってみます」
いずれにせよ、確実に目の前にあるレアアイテムを逃す手はない。
俺は戻ってきたばかりだというのに、森へと引き返すことになった。
北門を出てふたたび森へと入って行く。
その際に、門番をしている兵士に聞いたのだが、先日、凄腕の冒険者が何名か門を出て森の方へと向かったと教えてもらった。
おそらく、その中に国家冒険者もいるのだろうが、一日差ということなら、広大な森での探索を考えるとまだ挽回できるかもしれない。
ダイアウルフ探索とは別なルートで森に入った俺は、慎重に行動をする。
今回の目的がコカトリスの卵である以上、絶対に戦闘は避けなければならない。
相手に気付かれないようにコカトリスを発見し、罠を使って巣から引き離してその間に卵を入手する予定だ。
コカトリスは足が遅いことで有名なので、このやり方なら勝算はある。
そんなことを考え、今のうちに罠の配置に適した場所はないか調べていると、
「おっ、ハーブが生えてる」
久しぶりにハーブを発見した。
現在、パープルは引き続きテイマーギルドで預かってもらっているのだが、これを土産にしたら喜ぶかもしれない。
俺は何気なしにハーブを摘むのだが、
『Eランクアイテム ハーブを収集しました』
懐に入っていたカードが震え見てみると、現在俺が収集したアイテムがバッチリ記録されていた。
「これは……相当便利なのでは?」
流石は国家冒険者が持つ魔導具だけある。アイテムを入手したそばから情報が更新されるというのはありがたい。
それからも、何気なしに森に生えているアイテムを収集すると、その度にカードに記録されていく。
中には初めて触れるアイテムもあるのだが、この魔導具のお蔭でアイテム名が解るので便利な事この上なかった。
そんな感じで、丸一日掛け、森の奥へと進んだ俺は……。
「ん? あれは?」
何やら、森の広場に落ちている卵を発見した。
赤い模様が浮かんでいる、一抱えほどの卵。
ターゲットのコカトリスの卵ではないのは間違いないが、明らかにそれ以上の希少さを放っている。
俺は周囲を警戒しながら近付くと、その卵に触れた。
『Sランクアイテム フェニックスの卵を収集しました』




