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創造奇譚〜異能力者シュンの心は溶け切らない〜 第1話「見え隠れする慈善と偽善」

作者: 花浅葱

こんにちは、花浅葱です。

書きたくて短編を書いてしまいましました。


最初の数百文字は、プロローグなので少し時系列が前後します。

 

「人間の創造力には、無限の力が備わっている」

 とある暗室。一人の女性が、一人の少年に教えを説く。


「なんでかって?それはだな、0から1を創り出すからだ」

 人間の発想によって、この世は大きく変わってきた。


 その変化が、地球全体から見てプラスだったこともマイナスだったこともある。

 地球の均衡を良くも悪くも乱しているのは、人間という生物唯一つだった。


「その創造力が視覚的に───いや、五感全てで捉えることが出来るから視覚的ではなく感覚的に、だろうか?まぁ、いい。創造力が感覚的に捉えられることがある。その権能・異能を私達は()()()()()()()と呼んでいる」

 その女性の話を、少年はただ黙って聞いている。


「クリエイションは、音楽から小説。漫画やアニメに演劇、浄瑠璃に至るまで人間が創ってきた物───所謂『創作物』と呼ばれる物の全てだ」

「───じゃあ、俺のも…」


 その少年は、初めて声を出す。落ち着きのある女性の声に比べてどこか焦りの感情がその声からは感じられる。


「そうだ、シュン。あなたの持つその異能もクリエイションの1つだ。突如、異能が発現して怖かっただろうが共生していけばアドバンテージになるだろう」

「……共生していくには、どうしたらいいですか?」


「私達の仲間になれ、シュン」

 シュンと呼ばれた少年は、女性に仲間になるよう誘われる。


「私達と共に、悪しき異能と戦おうではないか。私達『ecifircas』はシュン。あなたを必要としている」

 誘い文句を聞き、シュンは静かに頷いた。



 ───これは、シュンが数々の異能(クリエイション)との出会いとの果てに成長していく物語である。



 ***


 西暦2038年。長期休みも中間に差し掛かっていたある暑い夏の日だった。


「はぁ…眠い」

 俺は、午前10時を過ぎた頃に自身のベッドから這い出た。


 ───と、自己紹介がまだだった。俺の名前はシュン。木村旬(きむらしゅん)だ。


 17歳のなんの変哲もない高校2年生だ。近くの公立高校に通っている。


「───って、こんな時間まで寝ちまった」

 俺は、そんなこと言いながら2階にある自室から1階のリビングにまで足を運ぶ。


 リビングに行っても、そこには誰もいない。夏休みの俺にとっては、いつもの光景だった。


「父さんは、今日も仕事か…」

 過労死するんじゃないかと思うくらい朝から晩まで働いている父さんは、ここまで一人で俺を育ててくれた。


 ───と、言っても父さんの名誉の為に否定しておくが決して妻に逃げられたのではない。


 逃げられたのではなく、先立たれたのだ。


 父さん曰く、俺には4歳年上の姉がいたらしいのだが、俺がまだ赤ん坊の頃に不慮の事故で姉さんと母さんは死んでしまったらしい。


 だから、姉のことも母さんのことも全くと言っていいほどに覚えていない。声を聴く術は無かったし、元より旅行が好きという訳では無かったらしく写真はほとんど残っていなかった。アルバムを覗いても、映っているのは幼き頃の俺と、俺の知らない姉さんだけだった。


 俺が、目にする母さんの写真は遺影として飾られてある結婚式の写真だった。母さんの、高校の卒業アルバムも残っていたのだが「高校だと若すぎる」という理由で却下されたのだと言う。


 ───と、俺の家族の話はこれまでにして俺は朝食を摂ることにしよう。


 俺は、冷蔵庫を開けてヨーグルトを取り出す。冷蔵庫の中に入っていたヨーグルトに触れると伝導により手もヒンヤリと冷たくなっていく。


「と、ジャムはどこかな」

 俺は、ヨーグルトを入れる器を取り出した後でジャムを探す。いつものように、ブルーベリージャムを入れて食べようとしたが見当たらなかったので、仕方なくいちごジャムにした。


「んじゃ、いただきます」

 俺は、ヨーグルトだけの食事を終えて自室に戻る。食事を終えてから、着替える派だ。


 私服に着替えた後、俺は部屋の掃除を行う。父さんが仕事でいない今、家事は俺の仕事だ。

 まぁ、父さんと俺の男2人で暮らしているので、どちらかが家事を行わなければ生活が回らない。


 掃除機をかけて、家中の掃除ツアーしていく。そして、父さんの部屋にも入る。


 ───すると、父さんのベッドの上に本来ならこんなところに無いであろう物があった。


「これは…長い髪の毛?」

 父さんは、こんなに長い髪の毛を持っていない。それどころか、最近少しハゲ始めていて色んな育毛剤を試している。


「父さん49歳。ついに、2度目の春到来か」

 俺が、高校を卒業するのと同じ時期に再婚するのだろうか。

 母さんが死んでから、約15年。ついに、父さんにも再婚する機会がやってきた。


「───俺に内緒にしてるってことは、指摘しない方がいいのかもな」

 そう言って、俺は気付いていないフリをすることにした。


 ───掃除を終えた後は、夏休みなのでダラダラと過ごした。



 ***


 父さんが帰ってきたのは、その日の9時を過ぎたあたりだった。

「ただいまー」

「あ、おかえり!」


 リビングにやってくるのは、スーツ姿の父さんだった。最近少し太りぎみだが、背が高い為太っていることを隠せている父さん。49歳で、ハゲを少し気にし始めた父さん。


「はぁ、今日も疲れた…」

「一日お疲れ様!」

 父さんは、ネクタイを慣れた手付きで取り外す。


「あ、今日のご飯は何?」

「今日はチキンのトマト煮だよ」

「そうか、じゃあすぐに着替えてくるよ」

「わかった、もう一度熱してからよそっておくね」

「お、ありがとう」

 そう言うと、父さんは自室へと進んでいった。


「父さん、いつも大変そうだな」

 俺の高校はアルバイト禁止なので、働くと言った経験が無く仕事の辛さというものがわからない。

 だが、社会に出て仕事をしている自分と言うものが想像できないので、もしかしたらヤバいんじゃないかという一種の焦りをも感じている。


 熱を通して、ボウルのように底が深いお皿にチキンのトマト煮をよそっていると、父さんが自室から戻ってきた。俺は急いで、ダイニングテーブルに食事を並べる。


「お、すまんな」

 そう言いながら、父さんはスプーンでチキンをすくって口の中に持っていく。


「うん、美味い」

 そう一言コメントを残して黙々と食事を続ける。


「そう言ってくれると嬉しいよ」

「あ、今度の土曜日はしっかり休みをもらえたからその時は俺が料理をするよ」

「わかった。土日、休みもらえてよかったね」

「あぁ、久々の2連休だ」

 父さんは、日曜日以外の週6で仕事をしている。いつもは、日曜日以外は休みを貰えないのだが夏休みということで長期休暇とは別に、土曜も休みをもらえたようだ。なお、父さんの「久々の2連休」という言葉にお盆休み・お正月休みは含まれない。


「やっぱり、お盆休み以外にも、土曜が休めると嬉しいよな」

 父さんは、そんなことを言いながら口にお米を運んでいる。


「食器は父さんが洗うから、風呂入ってないなら風呂、先入ってきていいぞ」

「あ、わかった。んじゃ、風呂入ってくるね」

 俺は、そのまま脱衣場にまで向かった。父さんも、母さんが死んでから、俺が家事を一丁前にできるまでの間は家事を一人で行っていたので、しっかり家事はできる。


 ───まぁ、家事ができなくても皿洗いくらいできて当然だろうが。


 そんな事を思いつつ、脱衣場で服を脱ぎ風呂に入った。


「はぁぁぁ…いいお湯」

 風呂にゆっくりと浸かる。夏だろうと関係なく、俺は風呂に入りたい派だ。シャワーだと、風呂の満喫感と言うものが無いからだ。


「極楽極楽」

 風呂に入っていると、一日の疲れが取れる。「風呂」を考えた人はきっと天才だろう。

 俺は、今日一日の疲れを風呂にサッパリと取り払う。もっとも、今日は家で一日中ダラダラしていただけなのだが。


 頭と体を洗って、のぼせる直前まで湯船に浸かったら風呂を出る。そして、しっかりと体を吹いてパンツ一丁でリビングに。そして、冷蔵庫の中から紙パックの牛乳を取り出しコップに注ぎ、それを一気にゴクッッ!


「ぷはぁ!」

 これが、毎日の楽しみだ。全ては、この1杯を飲むためだけに頑張ってるようなものだった。


「お、シュン。あがったのか?」

「あぁ、入っていいよ」

「わかった、この企画終わったらな」

 父さんは、テレビに釘付けになっていた。ソファーがあるのにも関わらず、テレビの前であぐらをかいて座っている。


 ───こんな父さんにも、母さん以外の恋人ができたのだろうか。


 もうすぐ五十路の父さんに恋人ができた───と、考えると何かおかしい。


「うーん、相手もバツイチだったり?」

 そんな事を考える。まさか、20代のお姉さんだったりはしないだろう。それなら、死んだはずの姉だったと言われたほうがピンとくる。


「まぁ、父さんが幸せならそれでいいかな」

 俺は、テレビを見て爆笑してる父さんの横顔を見て、微笑んだ。


 ───ちなみに、まだパンツ一丁だ。


 ***


 時間が進み、土曜日になる。


 相変わらず予定のない毎日だ。俺は、朝早くに目が覚めてしまう。早朝───と言いたかったが、朝7時は早朝とは言えないので、「朝早く」と呼称する。


 7時は、「朝早い」のかと思った人もいるだろう。だが、寝坊助の俺にとって夏休みの朝7時は、かなり早いのだ。いつもは、9時まではほぼ確実に爆睡するのに今日はそれよりも2時間も早く起きたのだ。


 登校日は、朝6時に起きてるので、そう考えると永遠に夏休みが続いてくれと切に願うが夏休みが伸びるなんて事は無いので、「夏休みの終わりが近付いている問題」は毎年気にしないことにしている。


「───て、高2なら学習塾とか予備校には行かなくていいのか、って思われてるかもな…」

 誰に思われてるのか全く想定もつかないが、とりあえずそう呟いておいた。特に意味はない。強いて言うなら自分自身への戒めだろうか。


「朝早くに起きてもやることが無いという事実」

 夏休みの課題は、夏休み課題RTA(リアルタイムアタック)で夏休み開始前に全てを終わらせた。


「休みの有難さって、やっぱり忙しい時じゃないとわからないよなぁ…」

 そんなことを言いながら、俺はリビングの扉を開ける。

「お、おはよう。今日は早いじゃないか」


 リビングにいたのは、父さんだった。

「昨日も仕事だったのに、もう起きてるの?」

「あぁ、せっかくの休日だからな。ドラッグストアとかホームセンターに買い物に行かないと」

「それじゃあ、平日と同じように忙しいじゃないか」

「しょうがないな。でも、買い物に行けるのは休みの日じゃないと」


「そうだね、俺はお留守番で」

「はいはい、わかってますよ」

 父さんと一緒に買い物に行っても良かったのだが、気分が乗らなかったのでパスした。


 ───こんなんだから、夏休みの予定が全く無いと言っても過言ではないが。


 結局、今日も一日を無駄にして過ごした。特筆すべき休日だったとは言えないだろう。

 自分でも、少しは友達を誘って遊びに行くのもいいと思ったのだがいざ誘うとなると気が乗らない。


 ***


「惰眠を貪ることもせず、ただ似たようなニュースを見て今日も終わりか」

 同じ土曜日の夜、リビングに隣接したキッチンで父さんが料理を作りつつ遠目でテレビを眺めている。

 俺は、料理をしている父さんなんか気にせず、テレビの前においてあるソファに寝っ転がりながらテレビを視聴する。


「今日も、またずっとダラダラしてたのか?」

「まぁ…うん、そうだね」

 父さんの疑問に少し躊躇いつつも答える。


「そうか、ちゃんと外に出て運動しないと駄目だぞ」

「わかってるよ」

 父さんの言葉を適当な返事であしらう。運動しなきゃいけないのはわかっているが、運動しようとも思えない。


 相変わらず怠惰な自分に少し嫌悪感を抱きつつも、怠惰であることをやめられない自分を尊重してしまう。


「今は高校2年生だから、まだいいが高校3年生になったらしっかりと大学受験の勉強もしなきゃいけないんだから、学生の時代に夏休みをしっかり楽しめるのは高2の今だけなんだぞ?だから、この夏をしっかり遊び尽くしておかないと来年後悔することになる───ッ!」


 ”カンッ”


 キッチンの方から、何か固い物が、固い物の上に落ちる音がして俺は父さんの方を見る。

「どうしたの、父さん!大丈夫?」


「ん…あぁ、少し指を切ってしまったみたいだ…」

「え、嘘?大丈夫?」

「ちょっと、絆創膏とかを取ってきてくれないか?」

「うん、わかった」


 俺は、棚の中から消毒液とティッシュ・それから絆創膏を取って父さんのいるキッチンまで持っていく。

「とか」に含まれていたのは消毒液とティッシュのことだ。


「大丈夫?」

「あぁ、そんな大きな怪我じゃない」

「カンッ」という何かが落ちる音は、包丁をまな板の上に落としたからなったようだった。


 俺は、ティッシュの上に消毒液を垂らしたものを渡す。

「シュン、ありがとう」

 父さんは、切ってしまった自らの左手の人差し指を消毒液のついたティッシュでポンポンと撫でるように拭く。


「すまない、絆創膏をつけて貰えないか?」

「あぁ、わかった」

 俺は、父さんの怪我をした左手の人差し指に絆創膏を巻きつける。


 ───その時に、何か違和感を覚えた。


「父さん、こんなに指細かったけ?」

「え?」

 俺の指摘───と言うよりかは、疑問が正しいだろう。俺の疑問を聞き、絆創膏を巻き終えたばかりの左手をグーパーする。


「うーん、言われてみれば若干左手の人差し指が細いような気がするような、気がしなくもないような…」

 そんな、曖昧な回答をしては首を捻っている。


「気の所為…なのかなぁ」

 父さんの怪我をした人差し指は、確かに細くなったような気がする。


「包丁、気をつけてね。今日は、俺がやろうか?」

「いや、それは大丈夫だ。今日は、俺がやるって前々から決めていたし」

「それは、そうだけど…」

 俺は、父さんのことが心配だった。


「包丁落としちゃうし、やっぱ危険じゃない?」

「大丈夫、大丈夫。お父さんは大丈夫だから」

「本当に?」

「あぁ、大丈夫だから安心してくれ。さっきは、少しビックリして怪我をしちゃっただけだ」

「ビックリって、なんでビックリしたのよ」


「包丁に死んだレイカが映り込んだ…かな?」


 レイカとは、俺の母さん───父さんと結婚して、俺と今は亡き姉を産んだ人の名前だ。

「え、それって疲れて幻覚が見えたんじゃないの?」

「そうなのかなぁ…」


 俺は、この時何故か父さんの部屋で見つけた長い髪の毛を思い出した。


「あ、もしかしたら父さんが別の人と結婚する事、止めようとしてるんじゃないの?」

 俺はこれを機に、父さんに聞いてみることにした。聞かないと己の中で決めていたが、やはり気になるものは気になるのだ。


「え、まさかねぇ?父さん、もうすぐ50歳だよ?恋人なんかできるわけ無いじゃんか。それに、父さんもうすぐハゲそうだし結婚どころか恋人も作れないような感じだよ」

「えー、本当に?」

「本当だよー」

「でも、俺はこの前父さんの部屋を掃除してる時に長い髪の毛を見たよ?」


「え?」

 父さんは、俺の言葉を聞いて怪訝そうに眉をひそめる。

「父さんに恋人ができて家に連れ込んでるんじゃないの?」


「いやいや、まさか。そんな訳ないだろ?父さん、ただでさえ仕事で忙しいんだから」

「本当に?」

「うん、本当だよ。それに、家には新しく恋人を作るほどの経済力は残念ながら無いからね」

「そうなの?」

「そうだよ、まさかシュンはただで浮気とか出来ると思ってるの?違うからね?父さんみたいなオッサンが女の子と喋るには5桁を超えるお金を払わないといけないんだから。そんなことをしてる余裕は無いんだし」

「そうなんだ…」


 父さんが、これだけ否定しているということは本当に父さんに恋人はいないという事だ。


 では、俺が部屋で見た長い髪の毛は誰のものなのだろうか。家に、長い髪の毛を持つ人物はいない。

 俺も、男だからあそこまで長い髪の毛は持っていない。


「本当に長い髪の毛があったの?」

「うん、あったよ」

「そうか…じゃあ、風でどこかから飛んできたのかもね。ほら、洗濯してる時とか?」

「うーん…どうなんだろう…」


 父さんの部屋に入るのは、父さんと俺しかいない。

 いや、父さんの部屋と限定しなくても俺の家に出入りするのは、俺と父さんくらいしかいないのだ。


 泥棒が入った形跡も無いし、父さんの恋人でもない。俺に女友だちを家に呼ぶ勇気なんてさらさらないから、それも違う。自らの名誉の為に言っておくが、女友だちがいないわけではない。断じて違う。

 決して、女子と話すと緊張して発現が支離滅裂になってしまう訳じゃ無いから、安心して欲しい。


 誰の髪の毛かわからないのだ。


「───うーん、何だったんだろう…」

「ほら、料理の続きをするから退いた退いた」

 俺は、父さんにまくし立てられてキッチンを出てテレビの前にあるソファに戻る。


 ───その日は、また平凡な日常を取り戻した。


 ───俺らの平凡な日常が、非凡な日常に一変するのはもうすぐの話だ。


 ***


 光陰矢の如し。

 夏休みも、もうすぐ終わりを告げようとしていた。その日の午後、俺は珍しく部屋に籠もって机の前に座っていた。


 ───いや、俺が勉強しているのが珍しい訳ではない。


 やるべき課題は、どれだけ面倒くさがろうといつもしっかりやっているし、提出物はいつも遅刻せずに出している。成績は、学年のトップ30%の集団にはギリギリ食い付けているので学業においてはしっかり行っているのだ。


「───うーん、わからん」

 机の上に開かれているのは物理の参考書。担当教師が弱そうなお婆ちゃんなのと、内容が難解で解りにくいことも相まって、授業崩壊しかけている物理の復習を行っているのだ。


「あぁ…今日は長引きそうだな」

 面倒くさいような。だが、嬉しいような。どうせ、物理をやめたらテレビをいつも通り眺めていつも通りの一日を過ごしてしまうので、物理をやっていても問題ないだろう。


 ***


 同刻。


「───レイカ?」

 シュンの父親───明彦(アキヒコ)は、洗面所の鏡に映る、死んだはず───自らが手腕を振るえなかったせいで()()()()の名前を呟く。

 今はもう亡き妻の姿が、包丁に反射して映ったように自らの姿に変わって写り込んでいる。


「───ッ!」

 突如としてアキヒコは頭痛に襲われる。思い出すのは、自らのせいで妻と娘を失った()()()のことだった。


 鏡に映るのは、自分の代わりに頭痛によりその目鼻立ちのキリッとした美しい顔を歪めた最愛の妻の姿だった。

 アキヒコは、妻以外の女性を生涯愛したことはなかった。


 アキヒコにとって、妻は自分の全てであった。妻の幸せは自らの幸せであったし、妻の痛みは自らの痛みであった。


 ───それほどまでに2人は愛し合っていたのだ。


「───レイカ…レイカ、レイカ!」

 アキヒコは、自らの代わりに鏡に映る妻───玲花(レイカ)の名前を叫ぶ。


 姿だけ見えるのに、会話を交わすことも抱擁することもその腕に触れることもできないのは、会えないと言うことよりも残酷で辛いことを知った。


「返事をしてくれ、レイカ!」


 ”ゴンッ”


 洗面所にて、鈍い音がする。鏡は割れて、()()()()()()アキヒコの目に届いていた女性───レイカの姿は消えてしまった。


 ───否。消えたのはレイカではない。


 最初から、洗面所にいたのは()()()()()()()だった。

 その代わり、突如として姿を消したのはアキヒコの方だった。


 そう、アキヒコだと思っていた人物はいつの間にかレイカに成り代わっていたのだ。


 元々アキヒコだったレイカは、鏡に頭をぶつけその反動で洗面所に倒れる。

 レイカがアキヒコだったことは、左手の人差し指に付いている絆創膏が証明してくれている。


 レイカの顔からは、割れた鏡が刺さったのか流血しているし鏡にぶつけた反動で倒れた時に背中を打ってしまった。


「───」

 アキヒコ───彼は───否。今の姿はレイカだから彼女が正しいだろうか。

 いいや、これは冒頭で説明した()()()()()()()だ。

 異能(クリエイション)によりレイカの姿になったアキヒコは、たった今自我を奪われ暴走を始める。


 ───彼を突き動かすのは、()()()の慟哭だった。


 ***


 あの日。玲花(レイカ)と、その娘───愛華(アイカ)が死亡してしまった15年前のあの日。


 ───何が起こったのか。それを、今から少し語ろうと思う。


 15年前。2023年のとある日だった。

 それは、夏のムシムシする暑さももうすぐ終焉を迎えようとしていて9月中旬のこと。


 当時2歳のシュンを祖父母の家に預けてから、アキヒコ・レイカ・アイカの3人は車に乗り込んだ。

 この時、アキヒコは34歳。レイカは32歳だった。アイカがもうすぐ6歳になるということで、誕生日プレゼントを買いにショッピングモールへ向かっていたのだった。


「プレゼント、何にしようか?」

「うーん、プイキュアのおもちゃ!」

 アイカは、日曜日の朝に放送されているプイキュアという女児向けアニメにハマっていた。


 プイキュアに変身するために必要なアイテムの形をした玩具を買おうと決めたのだ。


 車の運転はアキヒコが行っており、助手席には誰も座らず後部座席にレイカとアイカの2人が座っていた。

 これは、アキヒコが嫌われていたからなんかではなく、アイカが「ママの隣がいい!」と懇願したためだった。


 アキヒコは、安全運転だった。愛する妻と娘を乗せて、危険な運転などする訳がなかった。


 迫ってきたのだ、トラックが。アキヒコ達3人が乗る車より、数倍は大きいトラックが迫ってきたのだ。


「───危ない!」

 アキヒコは、車の右側から迫ってきたトラックにいち早く気付き、前方に進み避けようとする。


 ───が。


 車は動かなかった。まるで、その場にタイヤが埋められたかのように。泥沼に沈んだかのように。

 アキヒコは、確かにアクセルを踏んでいた。なのに、車は動かなかった。動くはずの車は、その場に留まり動くことを知らなかった。


 空回りするエンジンが、乗車する3人を嘲笑するかのような音を立てた。


「───ッ!」

 その瞬間、妻のレイカはアイカのことを抱きしめた。トラックの衝撃から、最愛なる娘のアイカを守るため。


 ”ドンッ”


 トラックに巻き込まれる、アキヒコ達3人を乗せた車。アキヒコは、咄嗟に振り返る。


 そこに見えたのは、上に乗り上げたトラックの重さによって潰れる車の天井。それに巻き込まれ、押し潰されていく最愛の妻と娘───レイカとアイカの姿だった。


「レイ──」

 名前を呼ぼうとした刹那。響くのは、爆発音。


 "バチチッ"


 ”ドォォン”


 爆風により、アキヒコは目を閉じてしまった。目を閉じざるをえなかった。


 ───目を閉じてもなお、アキヒコは愛する2人のこと考えるのをやめなかった。


 そして、自らの愚鈍さを呪った。焦り、3人の破滅を導いてしまった自らを呪った。

 そのまま、閃光と共にアキヒコの命は刈り()られ───




















 ───なかった。


 アキヒコは、目を開ける。アキヒコの脳内に入ってきたのは、上からトラックに潰され無惨な姿になっていた妻のレイカとアイカであった。


「な───」

 自らのみが、生き残った。愛する2人は死に、アキヒコ唯一人が生き残ってしまった。


「な………な……」

 アキヒコの口から、意味の伝わる言葉は溢れない。アキヒコは()()()()もできなかった。


 脳が追いついていないのだ。数秒の内に起こった出来事を、頭の中で何億回と繰り返した。リピートしてリピートしてリピートし続けた。されど、理解できない目の前の現状。いや、()()()()()()()()()()()目の前の現状。


 事故が起こり、十数秒が起こったこと。周辺を歩いていた赤の他人が恐る恐るアキヒコ達を乗せた車に近付いてきた頃だ。


「あああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 理解ができてしまった。目の前の現状を、脳は受け入れてしまった。


 ───そして、行われる発狂。


 レイカとアイカの「死」を受け入れたことによる発狂。そして、自らのみが生き残ってしまったという後悔。

 その体から溢れんばかりの───いや、溢れていた。アキヒコの後悔は、もう疾っくの疾うに限界値を超えていた。体が壊れるほどの後悔。その時、世界に音が響く。


 ”キィィィィィィィィィィィン”


 耳鳴りのような、音が響く。この音を聞けるのは、ごく少数の人物。


 ───そう、アキヒコのように体が壊れるほどの後悔を体験し異能(クリエイション)を手に入れていた人物のみだった。


 アキヒコは、目の前の現状を見て慟哭が止まらない。叫び、藻掻き、喘げどももう元に戻らない2人を目の当たりにしてアキヒコの心は破壊された。豆腐を握りしめて地面に投げ捨てた時のように心をグシャグシャにされた。


 ───この時だ。アキヒコが異能(クリエイション)を手に入れたのは。


 ───ただ、その異能にアキヒコ自身気付いていなかっただけ。


 2度、同じ思いをしないよう体が本能的に身につける耐性。それが、異能(クリエイション)の本質だった。

 そして、アキヒコもその異能(クリエイション)を手に入れる。


 異能(クリエイション)の名称は、全て人間の『創作物』から名前を取られる。

 それは、何故か。答えは単純明快。人間が創った『創作物』は人間の魂が形になったものだと言えるから。

 魂を具現化したものが『創作物』だからだ。


 アキヒコの異能(クリエイション)。その名も『モナリザ』。

 レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた人間史史上最高傑作のモナリザの名が、アキヒコの異能(クリエイション)には与えられた。


 ───だが、この時アキヒコは自らの異能(クリエイション)『モナリザ』を手に入れた事に気付いていない。能力が発動しても、それを確認する術が無かったからだ。


 それもそのはず。『モナリザ』の能力は、()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()ことなのだから。


「俺……じゃ………ない…」

 アキヒコは、自らが死ななかった事に世界へ憤怒を感じた。乗車したのも関わらず、奇跡的に自らが生き残ってしまったことに憤怒を感じた。


 そして、2人を殺してしまったという罪意識が心のなかで寄生虫のように蠢いている。

 その罪意識を否定するかのように、口から漏れ出てしまう言葉に、やはり憤慨を感じてしまうのはアキヒコ自身であった。


 ***


『モナリザ』により、自らの姿をレイカに変えたアキヒコ。今現在、自我を失っている。

 アキヒコの『モナリザ』には誓約があったのだ。


 ───否、この言い方だとアキヒコの『モナリザ』にのみ誓約があると勘違いされそうだから先に言っておく。

 どんな異能(クリエイション)にも、誓約がかかっている。その誓約が、重かろうと軽かろうと。


 アキヒコの持つ『モナリザ』の能力を説明することにしよう。


 先述した通り、アキヒコの『モナリザ』は自らの姿を、最も愛している異性に変えることが可能という能力だ。これは、着ぐるみのように体や服の上から直接最も愛している異性を───レイカの姿を被せるような感じだ。だから、自らの姿を鏡か何かで視認しなければその事に気付かない。また、着ぐるみのような物なので声や骨格などを変えるものでもない。


 また、異性の姿───レイカの姿の時に怪我をすると、その部分は元の姿───アキヒコの姿に戻れなくなる。

 これが、アキヒコのベッドの上にあった長い髪の毛や、包丁で手を怪我したときに人差し指が細く感じたことの理由だ。


 ───ただ、元に戻れないだけならば特段問題はない。


 だが、問題は誓約なのだ。その誓約の内容は、「体の半分が異性の姿になると自我を奪われ暴走する。」という物だ。


 体の半分が異性の姿になると、自我を奪われ暴走すると言う、危険な誓約。


 アキヒコは、無意識の内に『モナリザ』を使用してしまい包丁や鏡に映る自らの姿に驚いたのだ。

 何故、今となって『モナリザ』を無意識に使用することが増えたのかはわからない。


 それよりも、アキヒコが鏡に自らの頭をぶつけその反動で壁に背中をもぶつけてしまい怪我をした部分が体の半分を超えたと言うことの方が問題だ。


 ───何故なら、アキヒコの自我が奪われ、レイカの姿をした人物が暴走を始めてしまうのだから。




 これが、全ての答えだ。『モナリザ』がアキヒコとその息子のシュンを取り巻く全ての問題の答えだ。


 ───答えが出て尚、シュンの事を蝕むのが暴走した『モナリザ』であった。




 ゆらり。


 ゆら、ゆらり。



 そう立ち上がったのは、レイカの姿をした、自我を喪失している『モナリザ』であった。

 そして、1歩。1歩と進んでいく。


 彼───いや、今はもうレイカの姿をしていて、今後は死ぬまではアキヒコの姿には()()()()から、「彼女」と呼ぶことにしよう。


 彼女は、牛歩のようにゆっくりと進んでいく。そして、辿り着いたのはリビングだった。


「───が……が…」

『モナリザ』は言葉にならない言葉を、口から吐き出す。


 そして、凶行に走ったのはすぐ後の事だった。


 ***


『モナリザ』が階下で暴走してるとは、つゆ知らずシュン───俺は、物理の勉強を続けている。


「えぇと…初速が21だから…水平到達距離は…」

 俺は、ブツブツ言いながら問題を解く。


 すると、鼻を襲ったのは何かが燃えるような匂いだった。

 焦げ臭い匂いが、俺の鼻に纏わりつく。


「……なんだ?」

 不可解に思った俺は、自分の部屋を出てリビングにまで足を運んだ。


「な───」

 俺の目に映ったのは燃え盛る真っ赤な炎だった。リビング中が、火の海に包まれている。


 ”ボワッ”


「うおっ!」

 インチキおじさんが登場しそうな音を出して、炎がより過激になる。俺が扉を開けて、酸素を送り込んでしまったからだろうか。


「何が起こってるんだよ…」

 俺は、理解できなかった。突如、リビングが燃えている。


「逃げなきゃ───」

 そう思った瞬間、俺の視界に入ってきた人物。それは、全くをもって見覚えのない女性だった。


「───誰」

 わからなかった。リビングを火の海にしたのは、この女性なのか。女性の体は、火に蝕まれている。


「他人の家に入り込んで自殺か?最後まで人に迷惑をかけて死ぬのかよ…」

 目の前の現状を、到底理解したくなかった。だが、真っ先にすることは決まっている。


 ───この家からの脱出であった。


 俺は、リビングの扉を閉めると急いで玄関まで走った。後ろから、女が追いかけてくる様子はない。

 このままなら、逃げれる。俺は、急いで外に出た。


 外には、閑静な住宅街が広がっているばかりだ。いつもの日常が、家の外では繰り広げられていた。

 家の前の道を歩く人物の姿は無い。目の前の道路には誰もいない。


 ───そう、思った時だった。


「父さんは……どこに?」

 車は、まだ駐車場に止まっている。外にはいってない。


 ───父さんは、まだ家の中にいるはずだ。


「父さんを、助けないと!」

 俺は、燃え盛る家の中に戻る。


「───火の回りが早い!」

 夏休みの今、俺は半袖だった。首元の布を無理矢理口の前まで持ってきて、煙を吸わないように善処する。

「どこに…行ったんだ?」

 もう、1階の全ての部屋に火が回っていた。1階にいれば、父さんは気付くはずだ。


「───じゃあ、父さんの部屋に」

 俺が階段を登ろうとした瞬間だった。


 ”ガッ”


「───ッ!」

 後ろから、誰かに俺の足を掴まれる。


 ”ガタンッ”


「───まず」

 俺は、家の中に現れた放火魔だと思われる女性に足を掴まれたのだ。女性の体の一部は、もう火に蝕まれ焦げ始めて黒くなっている。


 その女性は、俺と目が合うとニヤリと笑う。だが、その笑みに悪意や害意なんてものは感じられなかった。下衆さなど微塵もなかった。


 ───まるで、母親が我が子を見守るようなそんな笑みだった。


「やめろ、放せ!」

 俺は、その女性の顎を蹴飛ばし手を離させる。


 ”ボッ”


「───ッ!」

 その時、俺の着ていたシャツに火が付いた。一気に、俺の体は火に抱擁される。

 体を包み込むように燃える炎。体の表面をヤスリで削ったかのような痛みが、やってくる。


「───(つう)ッ!」

 俺は急いでシャツを脱ぐ。下着にも引火していたので、それも脱ぎ捨てた。


「それより、父さんも!」

 階段の踊り場まで、もう火が到達していた。先程よりも、幾分火の回りが早いような気がする。


 ”ドォォン”


 俺が、2階に上がるとほぼ同時に、外で爆発音がした。そして、窓からはモクモクと天へ天へと昇っていく黒い煙が見えた。車だ。車が爆発したのだ。


 ガソリンに引火し、そのまま大爆発を引き起こしたのだ。俺は、2階の窓を開ける。

 外には、野次馬が数人押し寄せていた。


「誰か、消防署に連絡してくださぁい!中に、まだ父さんが!」

 俺は、上裸のまま体を乗り上げ、外に人に叫ぶ。野次馬は、ビックリした表情で手の中にあったスマホで、どこかに電話をかけた。消防署に連絡を付けてくれたのだろう。


 俺は、体を家の中に引っ込めると急いで父さんの部屋まで走った。

「───まだ、父さんが」

 俺は、父さんの部屋の扉を蹴破るように開ける。


 ───が、中はもぬけの殻だった。


「嘘───」


 ”ボウッ”


 俺の背中から押し寄せるのは、熱風。上裸の俺は、直にその熱を感じる。

 サウナとは、比べ物にならないくらい熱い。体が、焼け焦げてしまいそうだ。

 まだ、先程俺の体を抱いた炎のチクチクとした痛みは残っている。


「マジか……よ」

 横目に入ってきた炎により、俺の部屋はもう灼熱地獄に変わっていたことを気付かされる。

 俺の部屋は、参考書や漫画などの紙で一杯だった。その、すべての紙を炎は食い散らかしていく。


「父さん……部屋にいないなら、どこに」

 俺は、まだキチンと探していないところを見つける。リビングだった。俺は、リビングを覗いて家事になった事に気付いた。リビングの入口から見て死角となるところを数カ所ある。


 ───もし、そこに父さんが倒れていたら。


 俺の体は、寒くないのにも関わらず───この火に囲まれた状況で「寒い」だなんて傍から見ても思えないのに俺の体には鳥肌が立っていた。


「急がないと!」

 俺は、炎に蝕まれた階段を降りていく。足裏から、熱した鉄板のような熱さが襲いかかってくる。

 だけど、上裸の今、転んでしまえばただ事ではない。足裏を犠牲に、涙目になりながら俺は階段を降りた。


 その時だった。


 ”ドッ”


 ”グララララ”


 崩壊。


 俺らが今まで踏みしめていた階段が、地に落ちた。そして、そのままジェンガのように2階部分も崩れ落ちていく。まるで、上から何かに押し潰されるように。


 ───まるで、トラックに車が押し潰されるように。


「マジか!」

 俺は、咄嗟にしゃがむ。足元には、先程まで着ていた黒焦げたシャツの残滓があった。


 ”ドォォォ”


 大きな音がする。俺は、怖くて目をつぶった。音が収まり目を開くと、玄関の目の前は2階部分の瓦礫で覆われていた。


「靴も履かせて逃してくれねぇのか!」

 俺は、そんな事を叫ぶ。だが、玄関が瓦礫に覆われたところで窓を割って逃げればよかった。


 それよりも幸いだったのは、父さんがいるかもしれないリビングの入口が瓦礫に覆われていないことだった。

 俺は、急いでリビングの入口まで走る。足裏から感じる痛みは、もう感じられなかった。


 極度の集中状態にいるのだろうか───


 ”ガクッ”


「───ッ!」

 突如、俺は床の熱烈なキスをしてしまう。「極度の集中状態にいて、痛みを感じない」なんて言う、漫画のようなものではなかった。俺の足は、もう炎に蝕まれ痛みを感じるほどの神経の働きをしていなかったのだ。


「嘘だ……」

 俺は、熱された鉄板のような床の上に、上裸のまま転んだ。俺は、体中を炎と接してしまった。

 その「熱さ」という痛覚は、遅れて体にやってきた。


「───ッ!」

 転んだという予想外の事実を理解した後、脳が処理したのは「熱さ」という信号だった。

「熱さ」という信号を「痛み」という信号に変換して、俺の体を蝕んだ。


「痛み」とは生存の危機を知らせる為に存在している。故に、不老不死かもう既に死んでいる人物には痛みが届かないのだ。


「逆に、痛いと言うことは、生きている証拠ォ!」

 俺は、叫ぶように自らの身体に喝を入れて、自らの四肢に仕事をさせる。


 俺は、リビングの扉に飛びつくように移動する。そして、扉を開いた。

「な───」


 リビングは、黒とオレンジの2色に染め上げられていた。黒と、オレンジ以外の色を見つけることができない。キッチンの方を見ると、ほとんど黒くなっており、壁の中に埋められていた柱がみるみるうちに燃えていくのが見えた。そして、反対側。テレビのある方向を見ると───


「父……さん?」

 父さんが、そこにはいた。部屋の真ん中で、涙を流して倒れていた。


 ───いや、この炎の中涙なんて確認できなかっただろう。


 仮に泣いていたとしても、この温度ではすぐに蒸発してしまうはずだし涙の跡もすぐに消えてしまうのだろう。だから、俺の脳が勝手に補完した()()()()だった。


 ───だって、本当に涙を流していたのは俺だったのだから。


「どう……して……」

 放火魔であろう女性は、どこにも確認できなかった。もう、逃げたのだろうか。


「父さん……」

 まだ、生きてるかもしれないという希望はあった。父さんに、負傷は確認されなかったから。

 俺は、父さんの体を背負おうと父さんの体に手を伸ばす。


「───」

 驚き。いや、悲しみだろうか。


 ───否。答えはその両方。


 驚きと悲しみのアンビバレンスが俺の体に押し寄せる。この、アンバランスなアンビバレンスが、父さんの「死」と言うものを表現していた。


 もう、わかったのだ。父さんに触れてこの炎の中なのに冷たくなっていたのだから。

「父さん……どうして………どゔじで!」


 父さんを失い、酷い後悔に刈られる。炎に蝕まれ、命を落としたしまった父さんに自らの行動が愚鈍だったことを気付かされて、後悔という罪悪感に潰されそうになる。いや、もう潰されていた。潰されてなお後悔に生かされていたのだ。全ては、この炎が悪いのだ。この炎に。あの、放火魔にやられたのだ。


 憎い。あの放火魔が憎い。あの父さんを殺した放火魔が憎い。後悔と憎しみ。そして、罪悪感。そのようなドロドロした感情によって、体は崩壊を迎え───。


 ”キィィィィィィィィィィィン”


 耳をつんざくような音が、世界に響く。


 その直後だった。俺の上から2階だった部分が降ってくる。瓦礫に押し潰されて死ぬのだろうか。

 家族は、もう皆死んでしまった。もう、いっそこのまま俺も死んでしまって──



 ***


 危機的な状況だが、「何故、アキヒコの死体があったのか」という疑問に答えるため少し、時間が欲しい。


『モナリザ』の能力は、アキヒコの生命のろうそくが尽きたことによって解除された。

 全ての能力が死亡して解除される訳では無かったが、『モナリザ』は解除された。


 これは、異能(クリエイション)が発現された時のアキヒコの感情に由来する。

 アキヒコは、自らの愛する妻と娘を失った時に「俺じゃない」と呟いた。


 その言葉の前には、2つの意味をくっつけることができる。

 それは、


「どうして死んだのは、『俺じゃない』んだ」

 と言うものと、


「2人を殺したのは、『俺じゃない』んだ」

 と言うものであった。


 前者は、愛する2人が死にアキヒコの心象を。後者は、2人を殺したのは自分ではないという言い訳が表されている。アキヒコは「自らは被害者がいい」と言う心持ちがあったのだ。

「自分はやってない」という弱い感情が、アキヒコの心の中には少なからず存在していたのだ。


 ───そして、暴走して被害を出した後死亡した場合、責められるのは誰か。


 ───答えは、レイカでありアキヒコではない。


 ───アキヒコは、能力を解除すれば死体として発見されるので「被害者」なのだ。


 異能(クリエイション)は、本人の弱い心をも投影する。残酷だが、それが異能(クリエイション)だ。


 ***


 俺は、そのまま死んだ父さんと共に瓦礫に押し潰され───







 なかった。



「───え?」

 俺が、目を見開くとそこに広がっていたのは銀世界。


「どういう……」

 言葉を全て吐き出す前に、俺の体はブルリと一度大きく震える。そして、顎がガチガチと震えだす。


 先程まで、あんなに熱いところにいたのに突如として冷凍庫の中のような温度のところに早変わりしてしまった。


「何が………」

 俺は、理解できなかった。俺は、立ち上がってみる。足裏は「熱さ」という痛みから「寒さ」という「苦しみ」に変わっていた。気を抜くと、足元にあるツルツルとした冷たい物体のせいで転んしまいそうだ。


 俺は、父親の死体を跨がぬように移動し俺らの周りにあった少しくすんだ水色の物体───氷に触れた。


「冷たっ!」

 その温度、幻覚などではない本物だった。


 突如。そう、突如として氷は現れたのだった。その氷は、部屋中の壁・床・天井を覆い尽くしていた。


「何が起こったんだ?」

 俺は、理解できなかった。頭では理解できなくても、体は理解の是非など無視して悲鳴をあげる。


 俺は、上裸で氷まみれの場所に現在いるのだ。寒くて、凍死してしまってもおかしくない。

 窓から脱出しようとしても、氷が邪魔で窓を叩き割ることすらもできない。氷を殴っても、俺の拳に鈍痛が走るだけだった。


「とりあえず、羽織るものを……」

 俺は、部屋から出ようとする。扉のドアノブを捻───れない。


 扉まで、凍りついているのだ。


「閉じ込められた?」

 俺は、氷の密室に閉じ込められていた。


 衣服として機能しそうな物は、ほとんど燃え尽きてしまっていた。

 俺は、震えることしかできない。


「結局……死ぬのかよ…」

 理不尽な放火魔から、逃れたと思ったのも束の間。俺は、理不尽な寒さに殺されることを悟った。


「消防士だって、こんな冷凍室みたいな場所…困るだろうよ…」


 ”パキパキ”


 そんな音が、足元から聞こえてくる。寒さで、震えつつも俺は足元を見る。

「な───ッ!」

 俺の足には、氷がまとわりついていた。俺の体が、氷に飲み込まれている。


 パキパキと音を立てながら、氷は俺の体を飲み込んでいた。足元が固定されていく。


 動けない。


「俺は……このまま死ぬのか?」

 氷に飲み込まれる中で、俺は恐怖に体を埋めた。これほどに寒いのに、もう体は震えていなかった。


 ───いや、()()()()()()()()()()()()


 俺は至って冷静で、疲れていないように見えるが体は物凄く疲れている。


 眠りにつく寸前のような感じだった。それでも起きているのは、極端な寒暖差で目が冴え切っていたからだ。

 もう、既に氷は腰辺りまでやってきていた。冷たい氷が、何も着ていない上半身に密着してしまい冷たい。


「あぁ…死ぬのか…俺は………」

 氷と共に絶望にも飲み込まれたような感覚がする。体が、悲鳴をあげている。


「凍死って…失神できないのか…こりゃ、辛いな…」


 ───と言っても、俺は目が冴えきっていて眠くならないだけで本来なら低体温になりスリープモードになるはずなのだが。


「綺麗に死ねるだけ…マシか…」

 生を諦めた、その時だった。


 ”ドォォン”


 氷の密室に、爆発音が響く。俺は、爆発音がした窓のある方向に頑張って首を動かす。


「これだけの氷…半暴走に近いか?」

 そう言って、入ってきたのは黒髪ロングの女性だった。落ち着いた声をしている彼女を見て、助かったと内心で思ってしまった。


「あ、あそこに人がいますよ、リーダー!」

 次に聞こえてきたのは、可愛らしい少女の声だった。


「助けて……くれ…」

「きゃ!こんな寒い中上裸なんですか?どうしてそんな格好をしてるんですか?」

 可愛らしい声の少女に疑問を持たれる。そんな中でも、氷は俺の体を少しずつ包んでいく。


「早く助けてやるんだ……」

「はい、わかりました!」

 落ち着いた声の女性の提案により可愛らしい声の少女は、敬礼ポーズを取る。


「少し、チクッとしますから気をつけてください!『曽根崎心中』!」

 何もなかったはずの少女の両手に、2つの人形が突如として現れる。そして、少女はその2つの人形を俺の足元に投げて───


 ”ドォォン”


 先程、氷の密室に穴を開けたように俺を包もうとしていた氷に穴が開いた。俺は、解放され床に倒れ込む。


「ナツキ、そいつを背負ってとりあえずここから脱出するぞ」

「わかりました!」

 ナツキと呼ばれた、可愛らしい声をした少女は疲れ果てた俺を背負うと2人が入ってきた場所から外に出た。


 外に出ると、落ち着いた声をの女性にこう聞かれる。

「これは、お前の異能(クリエイション)───異能力か?」

「異能力?クリエイション?」

「いや…発現したばかりなら、制御できないのも当然か…」

 女性は、顎に手を当てて何かをブツブツ呟いている。


「そうだ、能力解除をしてもらえればわかるな。解除、してもらえないか?」

「解除?どういう事?どうやって?」

 俺は、わからない事ばかり説明されて頭がこんがらがってしまう。


「そうだな...腹から空気を抜くような感じ…と言ったら伝わるだろうか?」


 ”フー”


 俺は、とりあえず言ってみたように空気を吐いてみる。ちなみに、まだナツキと呼ばれていた少女におぶられている。空気を吐くと、どこか清々しい気持ちになった。


「やはり、お前が能力主だったか………この能力、名付けるならば『冬の花』だな……」

 落ち着いた声の女性は、また一人でブツブツと呟いている。女性の向いている方向───()()()()()()の方向を見ると、そこに残っていたのは炎により燃え落ちた自宅だった。先程まで、俺の体を蝕んでいた氷や、リビング中を包み込んでいた氷なんてものは綺麗サッパリなくなっている。


「───な!」

 思わず、驚きの声をあげてしまう。落ち着きのある声をしている女性は、俺の方を見る。


「私達と一緒に来てくれるか?少年」

 新手のナンパか、と一瞬心をよぎってしまったがすぐにその案を心の奥底のゴミ箱の中に捨てる。


「俺の話を……全て信じて聞いてくれるのなら……」

 俺がそう言うと、落ち着いた声のしている女性は静かに微笑んだ。そして、こう告げた。


「では、私達と一緒に行こうか、少年」

 女性は、こんな炎天下の夏休みなのに羽織っていた上着を俺に着せる。上裸だったことを再確認し、凄く恥ずかしい気持ちになりながらも俺は少女の背中から降りた。


「───痛ッ!」

 地に足をつけると足裏に痛みがやってくる。


「当たり前だ、火傷をしているんだぞ?」

 落ち着いた声のする女性は、その持ち前のツリ目でこちらを睨んでくる。深緑色の瞳は、実に綺麗だった。


「───でも、なんか少女に背負って貰ってるって考えると少し恥ずかしくて…」

「では、男のメンバーを呼ぼう。そこまでは、ナツキ───この少女に背負われることを我慢してくれ」

「あぁ、そうしてくれ」


 ───そんな会話をしていると、玄関の方からは消防車の音が聞こえてきた。やっと到着したのだろう。


「───バレると面倒なことになりそうだ、早く行くぞ…」

「はい!わかりました!」


 ”ダッ”


 ”ダッ”


 そう言うと、落ち着いた声の女性と、俺を背負っているナツキと呼ばれた少女は塀を乗り越え屋根の上を猫のように走っていった。俺は、正直ヒヤヒヤしていた。


 途中、ショウゴと呼ばれた男性の仲間が到着したが、ナツキさんの方が安定して俺を運べていたというのは、また別の話だ。


 ***


 俺は、落ち着いた声の女性がリーダーをしていると言うチーム『ecifircas(エシフィーカス)』のアジトに到着した。そこは、ビルのような建物だった。もっとも、ビルと言うほど大きい建物では無く高さのある一軒家と言う感じが正しいのだが。


「それで、少年───まずは、名前からだな」

 俺達は、ビルの一角の少し薄暗い部屋でサエカさんと机を挟んで座っている。サエカさんの表情は至って真剣だ。


「えっと、俺の名前はシュン。木村旬だ。えっと…」

「私は、大沼冴香(おおぬまさえか)だ。皆には、サエカなりリーダーなり呼ばれている。まぁ、好きに呼んでくれ」

「えっと、サヤカさんは俺の話を話を信じてくれるんですか?」

「あぁ、もちろんだ。君は良くも悪くも異能力を持ち合わせているからね。是非、話を聞かせてくれ。脚色なしに、本物だけのノンフィクションを」


 俺は、サエカさんに全てを話した。火事のこと。父さんのこと。放火魔であろう女性のこと。そして、謎の氷のこと。


「───そうか、私の意見を聞いてもらってもいいか?」

「はい、いいですけど……」

「きっと、君のお父さんも私やシュンと同じ異能力者だ」

「───え?」


「これは、私の憶測だ。信じるも信じないも君次第だし、冗談半分で聞き流して貰っても構わない。君の父さんと、放火まであろう女性は同一人物だ」

 そう言った。俺は、首を傾げた。サエカさんの言っている意味がわからなかったからだ。


「まぁ、最初はよくわからないよな。少し、待っていてくれ」

 サエカさんは、紙とペンを持ってくると「父親=放火魔の女性」と書いた。


「君の父親は、異能(クリエイション)───異能力で、放火魔の女性の姿になっていた。その時、声は聞いたか?」

 俺は、静かに首を振った。


「そうか…では、憶測の域を出ることはないな……」

 サエカさんは、少し残念そうな顔をすると紙とペンを仕舞おうとした。


「……もう少し、サエカさんの説を聞かせてください」

「え……いいのか?」

「はい、憶測でも聞きたいんです」

「そうか……わかった」


 サエカさんは、少し嬉しそうな顔をする。その顔が、実に綺麗だった。

「このイコール関係が成り立つとするならば、君の父親の声がどこからも聞こえなかったのも、姿がどこにも確認できなかったのも理由になる。だって、君は家中を探したんだろう?それに、肝心の父さんはリビングで倒れていた」

「───では、何故火を」


「自我を奪われていたから…かな?」

「自我を奪われる?」

「あぁ、能力に体が乗っ取られる…体の主導権が奪われるみたいな感じだ」

「どうして火事なんかを?」

「そこまではわからない、だが、誰かを殺したかったから……とは予想がつくな。それが、自分自身だったという可能性もある。心のどこかで、何かの後悔があったのかもな……それこそ、その女性に関する」

 サエカさんは、俺の方を見る。だが、見ているのは俺ではなかった。俺の後ろ───どこか遠くを見ていた。


「それで、さっきから言ってる異能力?えっと、なんでしたっけ…クリ…クリエイション?みたいなのってなんですか?」

異能(クリエイション)を持つもの同士、話しておく必要があるな。」

 サエカさんは、背もたれに背中を付けて、目を閉じる。


「まず、クリエイションの意味は、『創造』だ」

 サエカさんは、目を開く。


「そして、君の能力は『氷を作り出し操ることができる』……と、言ったものだろう。まだ、隠れた能力があるのかもしれないが、まだ私達はそれを知る由はない」

 サエカさんは、そしてニコッと笑う。

「君の能力を私が勝手に名付けた。聞いてくれるか?」

「はい」

 俺は素直に返事をする。

「君の氷を操る能力を私は『冬の花』と名付けた。どうかね、気に入ってくれたかな?」

「はい!」

 俺は、即答で返事をした。俺が名前をつけると「アイスなんちゃら」とか「フローズンなんちゃら」とダサい名前になりそうだったから、素直に承諾したのだ。


「人間の創造力には、無限の力が備わっている」

 サエカさんが、俺に教えを説く。


「なんでかって?それはだな、0から1を創り出すからだ」

 人間の発想によって、この世は大きく変わってきた。


「その創造力が視覚的に───いや、五感全てで捉えることが出来るから視覚的ではなく感覚的に、だろうか?まぁ、いい。創造力が感覚的に捉えられることがある。その権能・異能を私達は()()()()()()()と呼んでいる」

 サエカさんの話を、俺はただ黙って聞いている。理解はできていた。


「クリエイションは、音楽から小説。漫画やアニメに演劇、浄瑠璃に至るまで人間が創ってきた物───所謂『創作物』と呼ばれる物の全てだ」

「───じゃあ、俺のも…」


 俺の能力は「氷を操ることができる」と言うものだと、サエカさんの言葉から理解していた。


「そうだ、シュン。あなたの持つその異能もクリエイションの1つだ。突如、異能が発現して怖かっただろうが共生していけばアドバンテージになるだろう」

「……共生していくには、どうしたらいいですか?」


「私達の仲間になれ、シュン」

 俺は、サエカさんに仲間になるよう誘われる。少しばかり、悪い気はしなかった。

 家族は全員此の世を去ってしまい、もう生きる意味と言うものもわからなくなってきた。


「私達と共に、悪しき異能と戦おうではないか。私達『ecifircas』はシュン。あなたを必要としている」

 サエカさんは、笑顔でこちらに手を伸ばす。この手を掴めば、サエカさん達の仲間になれるのだ。

 俺は、その手を握って静かに頷いた。


「では、シュン。これからよろしく頼むな」

「はい!」


 ───これは、俺が数々の異能(クリエイション)との出会いとの果てに成長していく物語である。

最後までお読みいただきありがとうございます!


とりあえず、短編としてたまーにあげようと思います。

連載にすると「毎日投稿しなければ」という強迫観念に駆られてしまうので...




アキヒコ(木村明彦) 異能(クリエイション) 『モナリザ』

自らの姿を、最も愛している異性に変えることが可能。着ぐるみのように上から被さるような感じであり、声や骨格などを変えることはできない。また、異性の姿でいる時に怪我をすると、その部分は元の姿に戻れなくなる。体の半分が異性の姿になると自我を奪われ暴走する。 


元ネタ レオナルド・ダ・ヴィンチ作 モナ・リザ

能力名初期案 『見え隠れする慈善と偽善』

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