聖女さんは追放されたい!~王家を支えていた宮廷聖女、代わりが出来たとクビにされるが、なぜか王家で病が蔓延!えっ、今更戻って来い?一般の大勢の方々の病を治すのが先決なので無理です
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「シスター・セラ! お前との婚約を破棄し、この城から追放する!!」
舞踏会でひときわ大きなざわめきが起きた。
それも当然。
なぜなら、私の婚約者であり、なおかつ第1王子であるカイル殿下が、唐突に婚約破棄を私に宣言したのだから。
周囲には、王族や公爵家の方々をはじめ、他の諸侯の方々もいる。
そして、傍らには私ではない別の聖衣をまとった、見目麗しい女性がいた。美しい黒髪に少しきつめだけどエキゾチックな魅力をたたえた瞳。通った鼻梁と非の打ちどころのない完璧な容姿だ。
その女性は腕を殿下にこれみよがしに絡ませて、私を余裕の視線で見つめている。
ここグランハイム王国の王城での最大規模の舞踏会で、しかも衆人環視の中で女性を傍らにしつつ、こうした宣言がなされるということは、既にしっかりと根回しもされているということだろう。
つまり私……宮廷付き聖女として第1王子の婚約者であった私は、非公式ながらも(そして後日公式に決定がなされるであろう)婚約破棄を受けたのだ。そして、この城からの追放も同時に伝えられた。これは宮廷付の聖女役からのクビを意味する。
要するに『とっとと城から出て行け!』ということだ。
そこまで理解した私は思わずお腹の底から声を出した。
「やったああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
と。
「……は????????????????????????????????」
周囲の反応がそれはそれは冷たかったことは言うまでもない。
私は元々平民の出身で、聖女としての回復魔法に秀でていたことから、王家に仕えることになった。
最初は喜んだ。
なぜなら、宮廷付の聖女となれば、沢山の人達を救うことが出来ると思ったからだ。
でも、私の思っていた宮廷での生活は、想像していたのとは真反対だったのだ。
王家の方々や貴族の方々というのは、基本的には自分たちのことしか考えていなかった。
平民のことなど、どうでもいいと思っていらっしゃったのである。
私がいくら懇願しても、平民たちを癒すために城を出ることは許されなかった。
『お前は王家を病魔から守ってればいいんだ!』
その一点張りだった。
確かに、王家の方々の病気を治すことも、神の御心に沿うことかもしれない。
でも、平民は薬もなく、医者の手も足りず、回復魔法を使える聖女の手も足りていないのだ。
その上、
『はぁ、何で僕がお前のような平民出身の聖女と結婚しないといけないんだ!』
婚約者である第1王子からはそのように言われる始末だった。
グランハイム王国では、最も強い癒しの力を持つ聖女と第1王子が結婚するというしきたりがある。
それが王家の力を強め、強靭な生命力を持つ子孫をはぐくむことにつながるからだそうだ。
でも、殿下は諦めていなかったのだ。
こうして、私の代わりの聖女を見つけてきてくれたのだから!
「なんだと、貴様! やったぁ! とはどういうことだ!!」
あれ? なぜか婚約破棄をしてこられた殿下の方が激怒されている。
「いえいえ、これで一般の大勢の方々の病を治すことが出来ると思うと嬉しくて」
「くだらん。平民が病に苦しむのは当然だ! お前のそうした王家を軽視したことが今回の婚約破棄につながったのだ! 宮廷聖女の地位も剥奪される。ははは! 残念だったな、シスター・セラ! どうだ少しは悔しいだろう!!」
「いえ全然」
「なっ!?」
王子は顔を不快そうに歪めますが、そんなお顔をしないでください。
「人の命は平等ですもの。民草を大勢救うのが私の本懐です! 婚約破棄、ありがとうございます!!」
私はウキウキだ。
これでいーっぱいの人達を救うことが出来るのだ。王国内で少し活動したあとは、癒しの旅に全世界を巡ろうと思う。
あっ、そうそう。
私は新しい殿下の婚約者の聖女の肩をガシっとつかんだ。
「な、なんですか!? 私が殿下を横取りしたとでも!? そもそもあなたが平民を、平民をとうるさいからこんなことになったのですよ!!」
「ありがとうございます!!! 名前も知らぬ代わりの聖女さん!!!!」
「……は、はあ? 私はイゾルテよ!!」
呆気にとられているようですが、私はウキウキが止まらず気づけない。
まさに救いの女神に見えていたので。
「イゾルテさん! あなたが身代わりになってくれたおかげで、私は宮廷聖女を追放されることが出来ます! これから好き放題に、民草たちを癒していけます! これほどうれしいことはありません!」
手を握ってブンブンと握手する。
「はぁ~? 平民なんか放っておけばいいでしょ!? それとも同じ平民のよしみかしら? ふん、これだから平民出身者は困ります! やはり私のような由緒正しい家柄から出た聖女でなければ殿下がお可哀そうだわ」
あらあら、まぁまぁ?
「やっぱり、イゾルテさん、あなたにはぴったりの職場だと思います。癒しを与える仕事なのですが、やはり色々マナーであったり、言葉遣い、こうした社交なども求められるので、私にはどうにも馴染めませんでした。私はただ大勢の方々の癒しを与えたかっただけですので」
というわけで、
「さようならー!!! こんなこともあろうかと、荷造りは完璧にしておりましたので!!! しばらくは王国の民の救済のために数日とどまりますが、困っている人たちがいる所を沢山巡る諸国巡礼の旅に出ますので、王家のことは宜しくお願いします!!!」
笑顔!
とにかく嬉しい!
大勢の人達が私を待っている!!
待っていて、私の聖女ライフ!!!
いっぱいたくさん癒して差し上げますからね!!!
夢にまで見た生活が、私を待っているのです!!!!!!
こうして私は既に荷造りされていた荷物を持って、もともと荷物はそれほどないのでそのまま馬車に乗り込んで王城を後にしたのだった。
~なお、王城では~
「くそ! なんなんだあいつは! 最後まで忌々しい!」
「まあまあカイル殿下、せいせいしたではありませんか。それに殿下にはこの私がおります。王家の聖女は私がしっかりつとめますから」
「そ、そうだな。ふぅ、確かに平民が出て行ってせいせいしたよ。イゾルテ公爵令嬢、これからも頼むよ。ふふ、身分も美貌も申し分ない。やはり僕に相応しいのは君さ」
「はい。お慕いしております殿下。うふふ」
そんな会話がなされたようであった。
★★★☆★★★☆★★★
さて王都に少し滞在した後、私はミリゲット村という寒村へやって来た。
疫病が蔓延しているという噂を聞いたので、王都を離れて急行してきたのだ。
「あら」
早速入口に村人がいたので、話しかけてみる。年齢は初老くらいだ。
「村人さん、村人さん。ここはミリゲット村であっていますか?」
「そうだが、ここを通す訳にはいかん。早く帰れ!!」
何だか剣呑な雰囲気で追い返そうとしてきた。
でも、ここで帰るわけにはいかない。
何せ恐ろしい病魔がうずまいているというのだから。どこまで私の力が効くか分からないが、頑張って少しでも村の人々のお役に立つのだ。
「どうして追い返そうとするのですか?」
「ふん! お前の知ったことではない! いいから、悪いことは言わん。この村には近づくな。もうそっとしておいてくれ」
ふむ。
最初はよそ者に対する意地悪で言っているのかと思ったが、どうやら違うようだと察する。
「優しい村人さん。あなたは私のような村外の人間に病が感染らない様に、わざわざ門番をしてくれているのですね?」
「ふん、馬鹿を言うな。よそ者を入れたくないだけだ。さあ、帰った帰った! それと、俺にもう話しかけるな」
「なるほど!やはり病気が感染らないように気を使ってくれているのですね!」
「しつこい女だな。そんなんじゃ、ゴホ!!!! ゴホゴホゴホ!!!!!」
突然、強くせき込みだす。と同時に、見れば、手の平に軽い血のまじった痰がついていた。
「やっぱり! あなたも罹患しているじゃないですか! 見た所、漏魔病か」
「……触るな、くそ。あんたにも伝染っちまうぞ。この不治の病に」
門番の男性はとても優しい方のようだ。
自分が重い病に苦しんでいるというのに、こうして他人に気を遣うことが出来る。
でも、
「一つ間違いがありますよ。村人さん?」
「はぁ? 何を言って……」
男は怪訝な表情を浮かべる。
「それは不治の病なんかじゃありません。魔力を溜めておく魔力胞という体内の器官の疾病です」
「そんなことは知っている! だがこれを治せるような癒し手なんて全世界でも数えるほどしかいない!」
「えっ? そんなに少ないんですか?」
それは意外だった。
私は確かに優れた癒し手と言われて王家に仕えていたが、そこまでだとは思っていなかったのだ。
まぁ、実際にこの男性が完全に正確な知識でしゃべっている保証はない。
いや、むしろこのような致死性の病魔に冒されれば、大げさに言いたくもなるだろう。
それにしても、漏魔病の原因は何だろうか?
ただ、原因が分からないが、今はそれどころではない。まずしなくてはならないのは。
「行きますよ、村人さん」
「な、なにを……」
私は神に祈る。癒しを行うのは神の恵みであり、その子供たる精霊の起こす奇跡だ。
「水の精霊ウィンディーネよ、彼の者の病をいやしたまえ。『生命の水』」
私が呪文を唱えるのと同時に、先ほどまで土気色だった男性の顔色がみるみる上気していく。
「な、なんだ!? さっきまで息苦しくて、立ってるのもやっとだったのに!? そ、それに、なんだか久しぶりに…‥、腹がへったな」
「健康になった証ですね! いやぁ良かった良かった!」
「あ、あなたは一体、何者だ……。い、いえ、どなたなのですか!? こ、こんな奇跡、信じられない!!」
「大げさですよ。うふふ、でも本当に元気になったみたいで良かったわ」
「で、ですが申し訳ありません。俺なんかに貴重な回復魔法を使ってもらって……。村には俺より幼い子供や女、それに老人たちが何十人もいるのです。なのに、俺に回復魔法をつかっちまったから、もうあいつらに使う魔力が残っては……」
「いえいえ。何回でも、いえ、何百回でも大丈夫ですよ!」
「…………は?」
私の言葉になぜか村人の目が点になるのだった。
「はあああああああああああああああああああああ!? あんな奇跡の回復魔法を何回でもおおおおおおおおおおおおおおおおお」
村人の驚きの声が、村中に響き渡るのだった。
★★★☆★★★☆★★★
「いえ、あの、漏魔病を治癒しただけですので、それほど大したことでは」
「いやいやいやいや!!!! どこのどなたか存じませんが、それはそれは大したことです!! し、しかもあんな奇跡の回復魔法をあと何百回もっ」
「はーい! ストップです、ストップ! それは分かりましたから!」
必死になって止める。
本当にそれほど褒められるほどのことはしていないからだ。
だって王宮でも、
「貴様の治癒など大したことない。調子に乗るなよ平民風情が!!」
とよく言われたものだ。
なので、漏魔病を治したくらいでこんなに感謝されることに嬉しさはもちろんあるけど、恥ずかしい気持ちになったのだ。
きっと新しい聖女さん(確か名前はイゾルテ公爵令嬢さん)はもっと凄いのだろう。
まぁ、そんなことよりも、だ。
「さあ、案内してください、村人さん。えっと、お名前は……」
「ハンスです。聖女様」
神の奇跡、特に回復魔法を使用する者を聖女という役職で呼ぶのである。
「そうですか。ではハンスさん。案内して頂けますか?」
「ははー、聖女様の仰せのままに!!!!」
「そういうのはいいですから! 普通でお願いしますってば!!」
「滅相もありません、聖女様!!」
(大げさすぎますってば~)
と私は困りながらも村の中へ導かれたのだった。
★★★☆★★★☆★★★
「おい、本当にこれだけの数の患者を治せるのかよ、ハンス……」
「不治の病だぞ……。確かにお前が元気になったのは分かったし、すごい聖女様が来てくれたのも分かった。だがな……」
「そうだ。回復魔法の数には限りがある。神の奇跡である以上、何度何度も使えるもんじゃない。漏魔病ほどの疫病を治すとすれば、すごい奇跡だ。せいぜい一人か二人が限界のはず」
ざわざわ! ざわざわ! と、村人たちがハンスに呼び出されて広場に集められた。100人近くいるだろうか。
でも、これだけではなく、家の中で寝たきりの人達もいるらしい。
そちらも早急に癒しを施さないといけない。
でも、まずは動ける人を治す! 重傷者からだと時間が凄くかかる! だからまずはすぐに済む人たちをドンドン治して行くのだ。
「この人数を治すには、何日かかることやら……」
「大丈夫ですよ、一瞬で治せますので!」
「は?」
「はい、集まってください、集まってください! いいですね? 集まりましたね? 漏れはありませんね?」
「え? え? え?」
「では行きますよ~……」
私は呪文を詠唱する。
神様に感謝を、そして精霊に祈りを、人に祝福を。
先ほどの水の精霊ウィンディーネにお願いして使った回復魔法の、拡大バージョンだ。
「水の精霊ウィンディーネよ。その大いなる力によって、我が腕、我が瞳、我が手足の届かぬ地まで、その癒しの枝を伸ばしたまえ。≪生命の泉≫!」
上空に水の精霊の姿が一瞬垣間見えた。そして、村の上空を気持ちよさそうに一回りすると、キラキラとした雨を降らせる。それは人々にあたると、中に吸い込まれるようにして消えた。
すると、
「は? え? えええええええええええええええええええええええ!?」
「あれ? 呼吸が苦しくないぞ!?」
「えっ、痛くない!? めまいもしない。歩ける! 歩けるぞ!!」
わーっ!!
という大歓声が巻き起こった。
「ほ、本当にあの少女がやったのか!? この百人近くの病魔を一瞬で治療したってのかよ!?」
「ありえないぞ! 本当に!? あの少女が一人で!?」
「まさに女神様だ!!」
「「「「女神様! 女神様! 女神様!」」」」
なぜか女神様コールが起こったので、
「ス、ストップ! ストーップ!!」
私は赤面してやめさせる。
確かに漏魔病の治癒はしたけど、そこまで感謝されることじゃない。
他の聖女がたまたまこの村に訪れなかっただけだろう。
私は平凡な聖女に過ぎないのだから。
「そんなに大したことはしてないから、そのへんで」
「ええ!? いえ!? あなたはそれはもう相当なことをされて……」
「そ・れ・よ・り・も! もっと重病人がいるんでしょう? その人たちを癒したいと思います。誰か案内をお願いできますか?」
その言葉に、元気になった村人たちは率先して案内してくれたのだった。
いやぁ、たくさんの人たちを癒すことが出来て、しかもこんなに感謝されるなんて、今日はついてるなぁ。
そう心から思うのだった。
王家にいた時は、治癒をしたとしても、感謝なんかされたことなかったから、こうして感謝までされることに感動すら覚えてしまう私であった。
というわけで、1日のうちに村中を回って、癒しを施しまくったおかげで、このミリゲット村の漏魔病は、一夜にして撲滅されたのである。
「はぁ~、良かった。私でも治せる簡単な病魔で」
「いや、聖女様だから出来たと思いますが」
私がひと段落して額の汗をぬぐって呟くと、村人の誰かがつっこんだ。
もう、大げさだなぁ。
★★★☆★★★☆★★★
~一方、その頃王城では~
「くそ、ゴホゴホ! 熱がまたぶり返したぞ! イゾルテを呼んできてくれ!!」
第1王子たるこの僕、カイル様の命や健康は、何者にも優先される。
何せ将来の王だからだ。
だから、平民の命などどうでも良いし、他の貴族どもも僕にかしずくことが当然である。
忌々しいシスター・セラは、平民出身だった。
そんな下賤な血筋を王家に入れるのは、いかな理由があろうと嫌だったし、代わりの聖女を見つけたと父や母を説得し、なおかつ縁戚関係にある公爵などにも根回しして、やっと婚約を破棄して、あの忌々しい平民出身の女を追い出したのである。
やれやれ。せいせいした。
あの時はそう思った。
だが、あれ以来どうにも城の様子がおかしいような気がした。
病気になる者が後を絶たず、またモンスターとの戦いで負傷した者たちの回復のスピードがどうにも遅いのだ。
まさかシスター・セラを追放したせい?
「馬鹿馬鹿しい! げほげほ!!!!」
はげしく咳き込みながら俺は歯ぎしりをする。高熱が出てきて、思考がまとまらない! くそが!
「あんな平民の女にそれほどの力があったわけがない!」
だが、ならばなぜ今自分はこうして病床にふせっているのか。
そのことを僕は考えないようにした。
そのことを認めれば僕は、自分の失敗を認めることになるから。
将来の王たる者、絶対に失敗など許されないのだ。
「ええい! イゾルテはまだなのか、くそ! 早くしろ! 第1王子たる僕が呼んでいるんだぞ!!」
手元の鈴を何度も鳴らす。
すると、申し訳なさそうな表情の執事が入室してきた。
「お前など呼んでいないぞ! 宮廷聖女のイゾルテを呼べと何度言えばっ……」
「無理です」
「分かる……って、え?」
こいつは今、何と言った?
第1王子である私の言葉を否定したというのか?
俺はそのことに愕然として、思わずパクパクと口を開閉することしかできない。
だが、執事は済まなさそうな表情で、しかし、淡々と説明をする。
「イゾルテ様は殿下へ1時間前に癒しの呪文を使用され、現在魔力切れを起こしています。というか、それ以前にも、何度も殿下の病の治癒に当たっていますので、オーバーワークかと……」
「は、はぁ!?」
俺は思わず驚くのと同時に怒鳴る。
「そんなわけないだろうが! この程度の病の治癒なら、シスター・セラならば幾らでも出来たぞ!」
「恐れながら、それは彼女が特別だっただけではないですか?」
「なぁ!?!?」
最も聞きたくない言葉をあっさりと言われて、俺は目をむく。
「馬鹿な! たかが熱を下げるくらいでっ……」
「一時的に病気を回復させることはできても、今のように再発することが多いのです。ですので、シスター・セラのように何度も神の奇跡を行使できる存在はなかなか探しても……」
「もういい! いいからイゾルテを! イゾルテを呼んで来い!!!」
俺は怒鳴り散らして、執事の言葉を聞こえないようにする。
僕は失敗などしていない。
采配ミスなどしていない。
卑しい身分のシスター・セラに才能などあるはずがないのだ。
僕には高い身分の公爵令嬢イゾルテのほうがふさわしい。
しかし、
「はぁ、はぁ……。カイル……殿下。すみません……」
「イゾルテ……。お前、随分……」
俺はそこでグッと言葉を飲み込んだ。
なんとイゾルテはここ数日でぐっと老け込んでしまったのだ。
髪の毛はほつれ、あの美しかった白磁のような肌は、今はガサガサになっていた。
エキゾチックだった瞳は弱弱しく濁っている。
とても、俺に回復魔法を使用できる状態でないことは一目で分かった。
くそ。
くそ。
くそ! くそ! くそ! くそくそくそくそくそ!!!!!
俺は内心で絶叫する。
(なんでこんなことにっ……!!!!!!!!)
俺の叫びは誰にも届くことはなかったのだった。
こうして、シスター・セラと第1王子カイルは、対照的な道を歩み出した。
セラは聖女として多くの民を癒すことに夢中になって世界を駆け巡る一方で、グランハイム王国は護国の柱であった聖女を自ら追放するという最も重大な過ちを犯してしまったのだった。
セラの治癒無双の旅は、今まさに幕を開けたのだ。
【★☆大切なお知らせ☆★】
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