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第15話

 阿澄さんを家まで送ってた日の夜、帰り際に阿澄さんは僕の唇にキスをした。突然の出来事に僕はあたふたではなく呆然とその場に立ち尽くしていた。僕に口づけした阿澄さんは視線を落として恥じらいを隠すように背を向けて去っていた。その日から阿澄さんのことを思うと胸が締め付けられる。これが恋だとしたら僕は……



          * * *


翌日の朝、母さんは僕の部屋のドアをノックする。


 「悟、今日お母さん早く出勤しないと行けないからいくね。ご飯はリビングのテーブルにあるかね。……後、昨日のハグ嬉しかったよ」


 ドア越しの母さんは嬉々とした声色で喋った。


 「分かった、母さんご飯ありがとう」


 僕はドアを開けて頭を掻いて母さんを見ずに感謝の言葉を発する。


「……あんた、どっか具合悪いの?なんか変よ」


「いや、何もないよ。ただ、感謝してるのを伝えたくて。あ、行かないと遅れるよ」


  母さんは僕が自分の内に篭っていて本音を吐いたりしないからどこか僕の健康状態が悪いんじゃないかと心配する。


 「じゃあ、行くわね」


母さんはジッと僕を見て軽く微笑んで部屋を去って行く。母さんのどこか安堵した後ろ姿を見てモヤモヤとした気持ちになった。何故なら、昨日の母さんとのハグは今までの感謝もあるけどなによりも別れのハグだったから。


         * * *


 重たい足を運び学校に着いて教室の後方のドアを開けて入るとクラスの生徒達はコソコソと話しながらニヤニヤとした表情で僕を見る。


 僕は自分の席に座り、下を俯いてると誰かが僕の肩をトントンと叩く。僕は振り返ると阿澄さんがいた。


 「昨日、私が風宮くんにキスしたところを見た生徒がいたらしくてさ」


なるほど、僕と阿澄さんが本当にできてるって思ってるわけか。阿澄さんは居心地が悪そうな表情ではなくむしろ清々しい表情だった。隣のクラスなのにわざわざ僕のクラスの教室に来て今の状況を教えてくれる余裕がある。


 「何、あんたらキモい視線送ってんの。私たちは付き合ってるんだからキスもするよ」


阿澄さんは教室にいる生徒達の耳に入るよう大声で話す。


 「あの2人付き合ってるん?」

「まじ、まぁお似合いちゃお似合いか」


「阿澄って顔は可愛いよな」

「え、お前B専?」


黒板近くにいた坂口と目が合い、堪えてた涙を制服の袖で拭いて教室を勢いよく飛び出す。


 「美也どこいくの!?」


坂口の仲良い友達が急に教室を飛びだした坂口に驚いて廊下に首を伸ばし、声を張って後ろ姿に呼び掛ける。


 「風宮くん、追いかけなよ」


阿澄さんは僕を気遣って言う。


 「いや、僕は君とこの街を出るんだ」


 僕は意を決してけた表情で阿澄さんにだけ聞こえるような声で言う。


 「じゃあ、もうここにいる理由はないよ」


阿澄さんは弾けた笑顔で椅子に座っている僕の手をギュッ握り、立ち上がらせた。

 

 「行こう!」


「うん……」


僕と阿澄さんは手を握ったまま教室を出る。教室にいた生徒達は呆気に取られていた。廊下に出ると奥から生活指導の谷村の野郎がこちらを見て指をさしている。


 「おい、2人とも何してる。教室に戻りなさい」


 僕と阿澄さんはまるで異国の地に旅行に行くときのように胸を躍らせながら谷村がいる方向に向かって走る。


 「2人とも立ち止まれ!」


谷村は睨みを利かせて怒鳴り声を上げる。


 「邪魔だよ!」


阿澄さんは谷村の股間を蹴り上げる。


 「グファァッ!」


いつめ偉そうに講釈をたれる谷村は膝から崩れて悶える


 僕らは足を止めずに谷村を通り過ぎで階段を下って昇降口に来て靴に履き替える。校舎の外に出て窓から僕らを眺める生徒達に2人で中指を立てて学校を立ち去る。


僕たちの人生はここから始まるんだ!!


読了ありがとうございます。


次話はちょっと未定です。7月は忙しいので次話を更新できないと思います。なので、次話は8月ぐらいになると思います!

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