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第11話

 「あれ、あん時の化け物じゃねぇか?」


 銀髪の西村が僕を指差す。


「本当だ、ちょっかいだしてくるわ」


「おい、やめとけよ」


「あ、また俺がやられると思ってんのか?あんなのたまたま超常現象みたいのが起こったんだろ」


 泉田は西村の胸ぐらを掴み、凄む。


 「いや、思ってねぇよ……」


泉田はこちらへきて俺が座っている長椅子にズンッと横に腰を下す。


 「よぉ、久しぶりだな!」


「あ、はい……」


僕は怖くてゲームに集中できず、キャラクターを操作できない。


 「風宮、どうした?……隣の人誰?」


坂口はゲーム台の隙間からこちらを覗きこむ。


 「知り合いって言え」


泉田は俺の耳元で囁く。


 「……知り合い」


「嘘下手だねー、風宮がこんな柄の悪い生徒と仲良くなるわけないでしょ」


「おい、女あんまし調子のらない方が身の為だぜ、口は災いの元って言うだろ」


「冗談は顔がだけにしな、角刈り豚ゴリラ!」


「んだと、ゴラァ!」


泉田は声を荒げる。


「ププッ!」


僕は坂口の罵声に思わず吹き出した。


 「てめー、笑ったな!」


泉田は火山が噴火したかの様にに身体から湯気を出し、顔と耳を真っ赤にして眉間に皺を寄せ、人を殺めるような顔をこちらに向ける。


 一瞬で泉田の肘で鳩尾を打撃される。激痛で息がまともにできず鼻息が荒くなり、長椅子の上で疼くまる。


 「風宮!手を出すなんて最低!」


「俺を侮辱したんだから致し方ないよな、西村」


「おぅ……」


 「分かったわ!」


坂口はこちらへ回り、泉田の前まで来る。横の台にいた真面目そうな中学生らしき男の子はスッと立ち去る。


 「度胸があるなあんた」


「あんた、風宮に手を出したよね」


「あぁ、それがどうした」


「風宮に謝りなさいよ!」


 坂口は啖呵を切り、隣りの台の長椅子に足を曲げてのせる。


 「おもしれー、お前俺の女になら……」


泉田が坂口の手に触れようとした瞬間、坂口が泉田の顎に掌低打ちを喰らわす。


 ゴキッ!と鈍い嫌な音がする。


 「グワッッ!」


椅子から地面に泉田が倒れこむ。


 僕は痛みを我慢しながら立ち上がる。


 「風宮、大丈夫?」


坂口の背後にいた西村がナイフを忍ばせて坂口に向かって走ってくる。


 「危ない!」


僕は長椅子に飛び乗って走り、西村の顔を目掛けて飛び蹴りをするが西村の右胸に当たり右手に持っていたナイフが手元を離れ宙を舞って泉田の尻に落下して刺さる。


 「アッー!!」


「ナイフを抜かないと……」


西村が気が動転しながら言う。


 「いや、ダメよ。抜いたら出血してしまうからこの状態で救急車を呼ぼないと」


「僕が電話する」


僕はポケットからスマホを取り出し、119番に電話を掛ける。


 「お願い」


「俺は知らねー」


西村は泉田を置いて逃げる。


 「西村、西村!!」


 泉田がうつ伏せで尻にナイフが刺さった状態で叫ぶ姿は不謹慎ながらとても滑稽だった。


「呼んでも無駄よ、逃げたもん」


「なんて野郎だ…痛い!」


「大人しくしてなさいよ、傷口が開くわ。風宮、清潔なタオルとかある?」


「タオル?これなら使ってないよ」


 僕が渡したタオルを受け取った坂口は白いタオルで刺さってるナイフをしっかり固定する。


 「俺の尻を雑に扱うなよ」


「静かにしてな」


坂口は軽く泉田の腕をつねる。


 「いった!ひでーな、お前」


 「風宮、電話終わった?」


「15分ぐらいで来てくれるって。俺、店員さんに伝えてくるわ」


「分かった、私はナイフ尻の側にいる」


「ナイフ尻ってなんだよ、もう少しマシな……イタイって!」


坂口はまた泉田の腕をつねる。


       * * *


僕はコインゲーム周辺にいた店員にさっきの事件を話す。


 「救急車を呼んだって!?……まずい」


店員は焦った顔で大声を上げ、従業員だけが入れる扉を開いて足速と去っていく。


 僕は店員が入っていた従業員の扉を開けて階段を下ると分厚い鉄の扉があり、"開けるな危険"と書いてあった


 僕は扉に身体を当ててそば耳をたてる。


 「早く"トリー"をしまえ!パクられちまうぞ」


室内から足音が近付いてくる。


 「まずい!」


僕は勢いよく階段を駆け上がり扉を開け、澄ました顔で坂口達の方へ戻る。


 「店員さんは?」


「分かりましたって言ってたよ」


中は見れてないけどあの会話を聞く限り、"トリー"って薬物の隠語なんじゃないか?




 






読了ありがとうございます。


次話は3週間後の2月18日(土)に更新します!


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