放課後の誘い
投稿遅くなりました。すいません。
今日も今日とて俺達学生は学校に通い授業を受ける。
別に勉強自体は嫌いではないが、代わり映えのしない授業を毎日受けるというのは一定のストレスを感じてしまうな。
まぁ授業が苦痛だと思うのは学生の特権みたいなものだし、一概に悪いものとも言えない。
それに授業で溜まったストレスを部活であったり、遊びであったりで発散させるのも学生の醍醐味だ。
長々とした授業が終わり、最後のチャイムが鳴り響く。
それを合図に多くの学生達が各々の行動を取り始める。
スポーツ用具の入った大きなバッグを持って部活に向かう者、最低限の荷物だけを入れた軽そうなバッグを持って帰宅を始める者、教室で談笑している者と様々だ。
そして俺はというと、特にやることも無いので早々に帰宅の準備をして帰ることにする。
「ねぇ佐伯くん」
「ん……?」
教科書類をバッグに詰め込んで、さぁ帰ろと席を立った時、華城に呼び止められる。
「何か用か?」
そう聞き返すと、少し顔を赤らめながら答える。
「この後暇かな? もし暇なら少し付き合ってもらえない?」
との事だった。ここで言う付き合ってとは、恋愛的な意味ではなく買い物などに付き合ってという事だろう。
「みんなで買い物にでも行くのか?」
「ううん、私と2人で……嫌、かな?」
なんとも大胆な発言に、息を呑む。
教室には、まだ半数くらいのクラスメイトが残っていたため、注目が自然と俺達に集まってくる。
スポーツバッグを持ち、部活に向かおうとしていた愛花もその一人だ。愛花を取り囲んでいる友達と共にこっちの様子をうかがっている。
ふむ……どう答えたものか。
ここで「全然暇! もちろん付き合うぞ!」っと言ってしまうと、愛花に『私に告白したのにすぐに他の女の子に行くんだ……』と思われてしまうかもしれない。
もちろん、それは悪いことでは無い。フラれたんだから新たな恋を探すのは当然な話だし、むしろ前向きな行動だろう。愛花にしても、いつまでも好きでも無い人から好意を向けられても迷惑だろう。そういう意味では、ここで誘いに乗っておくのもありかもしれない。
しかし、大抵の人間は自分に好意を向けていたはずの人間がすぐに他の誰かと親しくしていたらいい気はしないものだと思う。実際、俺なら「えっ」って思う。
華城とは昨日も一緒に遊んだが、その時は他にもたくさんの人がいた。だが、今回は二人きりだという。それはさすがにマズイ気がする。
ここは適当に理由をつけて断るべきか?
どうするべきか思案している時、唐突に愛花が音を立てる。
ガタンッ!
力強く椅子を机にしまったことによって、お互いがぶつかった音だった。
「あ、愛花?」
「どうしたの?」
心配そうに声をかける愛花の部活友達たち。それだけでなく、明らかに様子のおかしい愛花をクラス中が不審に思った。
「早く部活行かなきゃ……行こ、みんな」
そう友達たちに声をかけて、愛花は早足で教室を出て行く。
それに続くように愛花の友達たちもバッグを持ち、愛花を追いかけた。
「……?」
ふと、その愛花の友達たちに視線を移した時にちょっとした違和感を感じる。
何故だかその内の1人が笑っているように感じた。
◇◇◇◇
「……ちょっとビックリしちゃった」
愛花たちが出て行った後、教室内は突如として流れた緊張から解放されて、ほっと肩の力を抜く。
俺の目の前に立つ華城は、愛花の出て行った扉の方を見ながら、そっと胸をなで下ろした。
うん、確かにあれは俺もビックリした。
「話中断しちゃったけど、どうかな?」
「ど、どうかなとは……?」
「だから、付き合ってくれるのかって話だよ!」
そういえばその話の途中だった。けど、愛花のあの様子は多分怒ってたよな。
ってことは、ここは断るべきだ。
フラれたからと言って、愛花に嫌われるのは避けたい。恋人が駄目ならせめて普通の幼馴染の関係に戻りたいと思っている。
ん……? 自分で言ってて思い出したが俺、告白してから一度も愛花とまともに喋ってないな。
昨日、愛花に話しかけられた時も結局まともに喋る事は出来なかったし……これって結構良くない流れなんじゃないだろうか?
うん、やっぱりここは断るべきだ。
「あっと……悪い、ちょっと今日は用事が」
「いや、お前用事なんてないだろ。せっかく相手から誘ってくれてんだから付き合ってやれよ」
断わるためにそう答えようとしたら、今まで様子を見ていた真司がそう耳打ちしてくる。
「いや、用事は無いけど、でも愛花にフラれてすぐに他の女の子と出かけるって良くないだろ」
そう真司に言うと、ニッと口角を上げた。
「恋愛に良いも悪いもないって。一鈴にはこっぴどくフラれたんだろ? なら、お前が他の子と仲良くしてたって文句なんか言わないさ」
「それにお前、みんなの前で女の子に恥かかす気か?」
真司が視線だけ華城の方へ向ける。釣られて俺も華城の方を見ると、そこには瞳を潤ませてジッと俺の答えを待っていた。
「うっ……」
なんだか凄く悪い事をしている気分になる。
「さぁ、どうすんだ?」
「やっぱりダメ、かな?」
もはや逃げ場など、どこにも無かった。クラス中が俺の答えを待っているように感じる。
「いえ、喜んで付き合わせていただきます」
この一言によって、放課後のお出かけが決定した。