表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/21

変わる日常

 次の日、俺はしっかりと学校へ登校していた。


 昨日はショックからズル休みしてしまったが、さすがに2日連続で休むわけにはいかない。メンタルも回復した事だし、不登校になる訳にもいかない。となれば学校に行くしかない。


 愛花とは同じクラスだから、顔を合わせるのは避けられないが、まぁ何とか頑張るしかない。


 クラスの奴には、何か聞かれるかも知れないが適当に誤魔化しておけばいい。


 ああでも、あいつには誤魔化せないかもしれないな。


 そんなことを考えながら、教室の扉を開くと、いつもの……いや、なんだか懐かしく感じる喧しい声が聞こえてくる。


「おっせーよ天成!!」


 その声の主は。教室に入ると同時に俺の肩に腕を回してくる。


「相変わらず声がデカいな真司」


「おう、それが俺のチャームポイントだからな」


 こいつの名前は、山川 真司(やまかわ しんじ)。同じクラスのクラスメイトで、中学からの付き合いのいわゆる悪友というやつだ。


「ん? お前その顔の傷どうしたんだ?」


「ああ、階段から転げ落ちたんだ。おかげで顔中傷だらけ」


「へぇー、珍しいなぁ。お前がそんなドジするなんてよ」


 真司と話しながら俺は自分の席へと向かう。その途中、既に教室に着いており、友達と雑談をしていた華城が俺に気付いて軽く手を振っていた。俺はそれに軽く手を上げて答えた。


「ん? 何だ?」


「いや、何でもない」


 真司はそれが自分に向けられたものだと勘違いしたのか、そう聞いてくるが適当に流しておく。


「けど、階段から転んだくらいでそんな傷になるか?」


 訝しむように、俺の顔をマジマジと見る真司。やっぱりこいつ鋭いよな。


「めっちゃ高い歩道橋からゴロゴロ転がったんだよ、そりゃあもうボロボロになるレベルのな」


「ふーん、まぁそういうことにしといてやるさ」


 なぜか上から目線でそう言う真司。


「てか、お前なんで昨日サボったんだ? 一鈴が来てんのにサボるなんて中学でも一度も無かっただろ」


 やっぱりそこ突いてくるよなー。……どうやってごまかそう。


「あー、うん、まぁちょっと体調がな」


 特に何も思いつかず、言葉に詰まってしまう。ヤバい、このままじゃバレてしまう。俺が愛花にコクってこっぴどくフラれてしまったということを。


 中学からの悪友である真司は、おそらく可奈と同様に俺が愛花に惚れていることに気付いている。そして俺が今まで学校を一度も休んだことの無い、超真面目な学生であるという事も知っている。


 そしてこいつは勘が鋭い。気付かれる可能性が極めて高いのだ。


「そうか、じゃあ昼付き合えよ」


「……は?」


 なんか会話がかみ合ってないぞ。どうした真司。


「それと今日暇だよな?」


「えっ? ああ、まぁ暇だけど……」


 何だこいつ? 急にどうしたんだ?


「よし、それじゃあお前も付き合えよ。丁度クラスの奴らと遊び行く約束してたんだ」


 状況を理解出来ていない俺を置いて、真司はどんどんと話を進める。


「おーい、みんな!! 今日、天成も来るって!!」


 真司は教室中に聞こえるくらいの声で約束をしていたというクラスメイトに声をかける。


「え!! 佐伯くん来るの!? マジで!?」

「珍しいー!! いつもは絶対来ないのに!!」

「おいおい、こんな日が来るなんてなー!!」

「てか、佐伯くんその顔の怪我どうしたの?」


 と、クラスメイト達は驚き? の声を上げる。


「やったー!! 佐伯くん!!」


 そして、華城は一人だけ喜びの声を上げていた。


 他のクラスメイト達は一度華城の方へ視線を向ける。


「あっ……なんでもないです」


 すると、顔を真っ赤に染め華城は黙り込んでしまった。

 

 まぁ華城のことは一先ず置いておいて、


「な、なんだよその反応?」


「お前が一鈴以外のクラスメイトと遊びに行くって言ったからみんな驚いてんだろ」


 そんなの驚く程の事でもないと思うんだが……


「お前さ、高校生になって俺や一鈴以外のクラスの奴らと遊んだことあるか?」


「いや……無いけど」


「そうだよなぁ、だっていつも誘っても一鈴の試合があるからとか、一鈴と遊ぶ約束してるからとか、言って断ってたんだもんなぁ」


 真司にそう言われ、昨日華城にも同じことを言われたことを思い出す。そんなに愛花ばっかりだったか?


「す、すまないとは思ってる」


「ふっ、まぁいいさ。お前が良いやつって事は普段の学校生活でみんな分かってるからな。多少付き合いが悪いからってお前を嫌う奴はいないし、それにみんなお前と遊びたがってたんだぜ。これを機にクラスメイトとも仲良くしてこうぜ」


 そう言った後に、真司は「なぁ! みんな!」とクラスメイトに意見を求める。


「そうそう、俺らも佐伯と遊びたかったんだよ。クラスメイトなんだし仲良くしよーぜ」

「私も佐伯くんに興味あったんだよね。愛花に一途な所とか結構好感持てるし」

「よーし、今日は楽しむぞー!」

「「「おー!!!」」」


 と、盛り上がりを見せるクラスメイト達。なんて言うか、仲の良いクラスだな。どこのクラスでもそうなのか?


「よーし、それじゃあみんな! 今日も一日頑張るぞー!」

「「「おー!!!」」」


 うん、元気が良すぎるね。今まで全然気づかなかったのが不思議なくらい特殊なクラスだわ。俺って本当にクラスのこと見てなかったんだなと少し反省してしまう。


 「はぁ」とため息をつきながら、愛花が部活の朝練でまだ教室に来ていなかったことに、俺は心底ほっとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] まだまだ序盤だと思いますが、楽しみに読ませて頂いています。 [気になる点] 改題名前のタイトル名、どこかで聞いたようなと思っていたら書籍化している作品で同名のものがあったのですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ