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人国記を読む  作者: 三河
畿内5ヶ国
19/80

山城國

山城国は今の京都府南部地域です。

挿絵(By みてみん)

山城やましろ

山城の国の風俗は男女ともにその言葉自然と清濁分かり善くして、譬ば流水の滞うる事無うしてさきよきか如し。

(山城の人は男女ともに言葉が聞きとりやすく、例えるならば水が滞ることなく流れているかのようである)


世俗にその国風はその水を以て知ると云うこと誠乎。

(世間ではその国の性格はその国の水で知ることが出来るというが、本当の事である)


城州はその水潔うして、万色を染むるに、その色余国にはるばる違える事、従古至て今如斯。

(古今山城の国の水は清らかでどのような色でも染める事が出来、その出来栄えは他の国とは全く異なるものだ)


人の膚の滑なること亦是如斯。

(素肌が滑らかなのもそのためだろう)


女の姿、音聲の尋常なることならう国なし。

(女性の見姿、声色の素晴らしさは他の国には無い)


然れども武士の風俗不好事中々不及仔細也。

(しかし、武士としての立ち振る舞いがよろしくない事は言うまでもない)


その所以て考えるに、王城の地にして常に管弦の楽を翫うことを見馴れ、或いは商売の人等は遠国波嶋までも偽を以て実とする習いなれば、殊に王城の地如斯。

(なぜなのかを考えると、王城の地では音楽を見聞きし奏でることに馴れ、あるいは商人たちが遠くの国・海を越えて島に行っては嘘偽りをさも真実のように語るからで、このあたりは王城の地だからこそといえる)


されば常に実を忘れて虚を談するを以て世を渡るを本とす。

(だからいつも本音ではなく、建前で話しながら世の中を渡り歩くのが当たり前になる)


たまたま実儀の人ありといえども、その邪に推隠され、或はその実を隠して、その風儀勤るの類有と見えたり。

(たまに誠実な人が居ても邪推されたり、その誠実さを隠したりして、そんな風を装っている類のように見える。)


如斯の武士千人に一人なれとも、この人も後は如形の悪き形儀になる也。

(そのような武士ですら千人に一人しか居ないが、そんな人も後には悪い形儀になっていまう)


然れば総て此国の風俗実を用勤る人少なき故に、不知義理也。

(よってこの国の人は誠実さを持つ人が少ないので、義理を知らない)


義理を不知故に、勇臆の義を沙汰すれども、余所の事に心得る故也。

(義理を知らないから、勇気があるか臆病なのかを判断しようとしても、他所事のように取られてしまう)


この気質を不離也。

(この気質は離すことが出来ない)


自然に好き人あるは 口伝

(このことを風流や雅と親しむ人が居る 他は口伝による)


・超意訳

山城の人は言葉は流水のように滑らかで耳当たりが良い。

水を見ればその国が分かるというが、これは本当だね。

山城の水は良いよ、清らかで染物にはもってこいだ。

水が良いからか肌も滑らかで、女性の美しさは他国の比ではない。

ただ、武士としては明らかに駄目の部類。

何といっても王城の地、歌舞音曲に溢れ、商人が行きかい虚実が混じりあっているからそんな風になる。

たまに誠実な人が居ても周囲が周囲だから見えないし、そもそもそんな人は千人に一人も居ない。

もし居ても次第に周囲に染まってしまう。

そんなのだから、基本的に義理を知らないし、勇気があるのか無いのかはぐらかされる。

この気質はどうしようもないが、風流・雅だと好む人も居る。


・私評

今も昔も京都は変わらないということか。

最初に水に例えているのも、京都の捉えどころの無さを示唆しているように見える。

・一言要約

何といっても王城の地

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