相模國
・相模國
相模の国は風俗豆州に似ると言えども、人の気転変し易き所なり。
(相模の人は伊豆に似ているが、移り気しやすい)
栄える人には縁を以て親しみ、今日まで慣れし人にも時を不得して蟄居すると見るに則は遠り、無料人にも科を付て誹りをなし
(栄えている人には縁を繋いで誼を結び、今日まで親しくしていた人が突然謹慎させられると見るや疎遠になり、罪の無い人でも罪があるかのように非難する)
非有る人にも時めく人をは馳走してこれを褒美し、常に栄花を好み、好味を求めて酒色を玩ぶ風儀十人に九人如此也。
(道理を外れていても勢いに乗っている人には近づいて持て囃す、常に栄華を好んで美食を求め、酒宴にふける人が十人に九人は居る)
因玆主は被官に被放、被官は主を捨て、今日まで傍輩となりし人をも明日は主君と仰ぎ、主が被官になり、被官が主になる風俗なり。
(主人は家臣を追い払い、家臣は主人を見捨て、今日までの仲間だった人を明日には主君と仰ぎ、主人が家臣になり、家臣が主人になるのは当たり前のこと)
而も智あって智に迷い、義を知って義に迷う。
(知恵があるのに正しく使えず、何が正しいかを知っているのにその判断が出来ない)
誠に悪を備える風俗なり。
(実に質が悪い国である)
・超意訳
相模の人は伊豆の人に似ているが、とにかく節操がない。
時流に乗っている人にはすり寄って、気に入られようとおべっかを使う。
一方で今まで親しくしていても、落ち目となったとたん見向きもせず、有る事無い事吹聴する。
派手好きで、美食と酒と女が大好きな者が大半を占める。
そんな連中だから、主人と家臣は互いを見切り、主人と家臣と同僚が入れ替わるのなんて事はしょっちゅう。
頭も良いし道理も知ってはいるが正しい方向に使えない、実にどうしようもない連中である。
・私評
はて?どのあたりが伊豆に似ているのだろうか?
伊豆は『気分屋で気が強い、ヘソを曲げると面倒な田舎者』
相模は『時勢に敏感で軽薄なお調子者』
かなり違うと思うのだがな
・一言要約
時勢に敏感で軽薄なお調子者