伊豆國
・伊豆國
伊豆の国の風俗強中の強にして、その気に乗る時は強し。
(伊豆の人の気は強い中でも特に強く、調子が良い時は強い)
その気に不乗時も強し。
(調子が良くない時も強い)
この国風とは云いながら、気質の稟る所都而清なる所を自然と得たるものなり。
(この気の強さは、自然の清らかさから来るのであろう)
雖然一花気にして、今日は互いに命を投げうたんと約する所の人にても少しも違有る則は、数日の約を一時に忘れて、俄かに亦遺恨の甚た強くして、大敵と成って、あたら施さん事を常に巧みにする風俗なり。
(しかしながら、気分が変わりやすく、今日互いに命をかけるほどの約束をしても、少しでも意にそぐわない事があれば、数日前の約束を忘れて、いきなり恨みだして、敵対してこちらの邪魔をしてくる)
然故に人皆気一統にして亦格別なり。
(だからかして志を同じとした時はとても固い結束となる)
この国を率いるには耳目よりして是を覆せしむべし。
(この国を率いるときは、中心よりも周囲から覆させるべきである)
気は皆天気にして陽也。
(この気質は天気に例えるなら太陽である)
陽は昇る也。
(太陽は昇るものである)
されは怒る気強故に、怒り深きものは名利を好むものなり。
(それは怒気が強いからで、怒気が強いものは名声・利益を好むものである)
いかにも随てこれを可服也。口伝
(下手に出て説得すれば成功しやすい、仔細は口伝による)
・超意訳
自然が多いからか、伊豆の人は調子とか関係なくとにかく気が強い。
ただ気分屋で気にくわない所があると昨日今日で敵になってしまう。
でも団結したときは梃子でも動かないから、周りから少しずつ軟化させるしかない。
気が強いって事は怒りっぽいって事で、そういう人は名声や利益に弱いから、おだてる様に説得すれば成功しやすいかもよ。
・私評
表立っては居ないが、言外に『面倒な田舎者』扱いが見え隠れする。
それでも駿河よりは好評価であると言えよう。
・一言要約
ヘソ曲げると面倒な田舎者