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公爵令嬢アリシア


アルベルト様の実家こと、ウィリアムズ公爵邸は洗練された内装も勿論だが、その庭園の美しさで名を馳せている。特に、薔薇のシーズンは見事でありまだぼんやりしていた頃・・・つまり私がこのような事態におちいるずっと前はお茶会に呼ばれるのは楽しみだった。といっても、私はあまりお菓子やお話には興味が無くある程度楽しむと庭園の薔薇を見に行っていた。元の名前とは真逆だが、自分の名前は気に入っているからかもしれない。


惜しむべくは、薔薇が似合う髪色とは言えないところである。美しくないとは思わないし、両親から色濃く受け継がれたプラチナブロンドは嫌いではない。でも、やや影のある雰囲気は私が好きな薔薇には似合わない。そう。それこそ昔、まさに薔薇が咲くために生まれてきたような少女を私は見たことがあった。


まぁ、目下私が考えるべきことはこのお茶会を上手いこと切り抜けることであるけれど・・・



「ローズ!来てくれて嬉しいよ。ミザリー嬢も来ているよ。今日のドレスも格別に美しいね。君は青や紺も素敵だけれど、深い緑も良く似合うね。」


「ま、まぁ。アルベルト様ったら相変わらずお上手ですわ。先日は色々とありがとうございました。ミザリーは先に来ていたのですね。楽しみですわ。」


「では、一旦失礼するけれど。また後でたくさん話そうね、ローズ?」


「え、ええ。アルベルト様。の、後ほど・・・」


心臓にわっるいいい!!有無を言わさない美形の微笑みが今は怖い。どうして?コマンド入力で逃げられも攻撃もできないとか詰んでるじゃないの。



馬車を降りて数秒でエスコートが始まるのはどういうことなんでしょうか。ほらもう、若干ざわつかれましたわ。仲間内のお茶会といっても、公爵家の茶会。どこでどう噂がまわるかわかったものではない。アルベルト様の意図も、私の立ち位置もわからない今。下手に動いて誰かを刺激したくはない・・・。



「ローズ!ごきげんよう。アルベルト様がお迎えに行っていましたのね。」


「ミザリー、ごきげんよう。今日は淡い黄色のドレスなのね。とっても素敵だわ。」


「ありがとう。ローズが緑と言っていたから、お互いに映えるようにしたのだけれど、どうかしら?」


レモンイエローのふわふわのドレスに、緩く巻いたミザリーの髪は素晴らしく似合っていた。うーん、まさにヒロインって感じなのよねぇ・・・。


「そういえば、アルベルト様の妹さんもいらっしゃるわよ。ご挨拶に行きましょう?ついたばかりでしょう?」


「妹さん・・・アリシア様ね。久々にお会いするわ。」


「中等部にいらっしゃるけど、学園では関わる機会は少なかったものね。夜会にはよくいらしているけれど・・・ローズはあまり来ないんだから。今度は一緒に行きましょうね!」


「ええ・・・そうね。」



夜会なんて何が起こるかお茶会以上にわからないところ嫌だけど・・・ミザリーの好意は無下には出来ないわ。それとも、こうやって私は何かしらの運命を突き進んでいるのかしら。ああ、幸せな結婚と平穏な暮らし・・・せめて後者だけでも叶えたいわ。



「アリシア様、ごきげんよう!前回の夜会以来ですわね。今日はローズも来てますのよ。」


「ごきげんよう、アリシア様。お久しぶりです。」


「ローズお・・・様っ!!!!っとミザリー様!失礼。会えた喜びに、つい。」


アルベルト様の妹、アリシア・ウィリアムズは壮絶に美しいと評判だった。ここしばらく会っていなかったが、そう。アルベルト様と同じ金の髪に碧眼。ミザリーが優しく、ミモザやコスモスに愛されるような雰囲気なら、アリシア様はまさに薔薇そのものである。瞳はアルベルト様がやや哀愁に寄っているのに対して、妹のアリシア様は妖艶ささえある。これで私やミザリーの一つ下なのだから驚きである。


彼女については幼い頃の印象が強いが、今会ってみると外面だけならまさにライバルのご令嬢といった雰囲気・・・。


「おね・・・ローズ様っ!この間、学園で倒れられたと聞きましたわ。兄がとてもとても心配していましたの。ミザリー様が最初にお助けになったとか。」


「ええ。でもすっかり良いようですわ。今度、夜会にも来るよう言っていますのよ。」


「まぁ!ローズ様が夜会に出るのは久々ですわね!楽しみですわ。お兄様もきっと喜びます!そうですわ。お兄様とパートナーになっていただけなくって?きっと素敵ですわ・・・。」


「えっ。」


「あら、素敵ね。」


ミザリーが若干ため息をついているのが気になるのだけれど・・・どういうこと?やっぱりミザリーはライバルなのかしら?え、いやよ。ミザリーとの仲良しエンドに行くんだから。乙女ゲームにそういうエンディングがあるか知らないけど。なんていうか、あまりやらなかったけどRPGのノーマルエンドみたいな。裏ボス倒さないエンドみたいな?


「はは・・・あ、アルベルト様なら私よりお似合いのご令嬢が沢山いらっしゃると思いますわ。」


「あら!お兄様はいつも夜会は私と出ますの。でも、私もデビュタントしましたし。兄といつも一緒はつまらないですわ。ね?ローズ様?お兄様も絶対絶対、ローズ様がいいって言いますの!ね?」


「まぁ、アルベルト様は断るどころか、多分この後にでもお誘いしてくるんじゃなくって?」


「まぁ!ミザリー様!ええ!ええ!そうですわね。お兄様を探して参りますわ!」



そうだった。


アリシア・ウィリアムズ公爵令嬢。


幼少期からキツ目の美人顔だったというのに、彼女の性格はまさに天真爛漫かつ夢見がち。


ぼんやりモードの15年の記憶から思い出すに・・・彼女はなかなかの兄好きである。それも・・・ブラコンではなく、兄の望みを内容はわからないけど叶えちゃうタイプのヒロインタイプ・・・。



完全無欠の侯爵令嬢と名高いミザリーは、相変わらず隣で苦笑している。ああ、ヒロイン顔・・・。


「はぁ。アリシア様は相変わらずね。」


怖い怖い。どういう意味?!顔と発言があってない!


アリシア様も真逆とういうか・・・ミザリーとアリシアの中身が逆というか・・・いよいよわからなくなってきたわ。どういうこと・・・?



「おね・・・ローズ様!ミザリー様!兄を連れて参りましたわ!」



お茶会に招かれた人々が振り返る声でアリシア様が戻ってきた。



最高に楽しそうな微笑みを浮かべた、彼女のお兄様を連れて。










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