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王子様とランチ


アルベルト様主催のお茶会の招待状が来ましたわ。

先日の宣言通り、お見舞いも届きました。

果物は好きです。嬉しいです。一緒に「健康になる祈りが込められて云々」とブローチを贈ってくるのはやめてもらえないでしょうか。お茶会でつけて行かないといけませんよね。そうですよね。はぁ。誰が来るのかはわかりませんが、毎回毎回絶妙に身に付けないといけないものやら、感想を求められる本やらを贈られるのは困るのです。おまけにあの人、公衆の面前でさりげなくそのことに触れては周囲に勘違いさせて楽しむ悪癖がある。なんの恨みがあるんですか。お父様は野心家ではありません。そつなく王家に尽くしていますし、ウィリアムズ公爵家の脅威になるような資産もないですし、私が知る限り家の扱っている商品だって全然違うはずです・・・。王国随一の石炭やら食料品やらの商才溢れるあなたのところとは違うのです。細々と楽譜を売りつつ、世の中に音楽を普及させることをのんびり楽しんでるお父様なんです。目をつけないで!



さて、一学年上のアルベルト様とはありがたいことに学園では過度に接触せずに済んでいる。

それでも、ミザリーに泣きついた一件以来、ミザリーとアルベルト様は知人から友人手前までにはなってしまったらしい。おかげさまで見つかるとランチに誘われるので、ミザリーがアルベルト様に恋しないか気がきでない。見た目は完全にヒロインなんだけどなぁ、ミザリー。


「アルベルト様、何していらっしゃるの。早くしなければ五月蝿い御令嬢に囲まれましてよ?」


「手厳しいなぁ、ミザリー嬢。やぁローズ。本日も見目麗しいね。陽光に銀の髪が映えるね。」


「ええ、確かにローズは美しいでしょうね。」



台詞が!悪役令嬢っぽいよミザリー!!

暫定、モブの親友に嫉妬する発言はあるし、他の御令嬢を五月蝿いって言っちゃったよ!

方向転換!方向転換しないと。あきらかにここ一ヶ月のランチで二人の間の会話は気安くなっている。なんとか。なんとか穏便にミザリーを守らないと。


それともまさか、私ヒロインなんですか?

え、アルベルト様との仲を引き裂こうとしているミザリーということ?

私はこんなにミザリーと仲がいいのに?それはない。多分。ミザリーはいい子!

うん。アルベルト様にミザリーが恋をするのは本気で嫌だけど、ミザリーがちょっと元気なヒロインの可能性だってるんもんね。うん!これならヒロインのミザリーを応援する、モブ友人のローズ。親友の相手にやや難があるけど、ミザリーが幸せならそれでもいい!


「あれ?アルベルト。君、こんなところでお嬢さん方とランチしてたのかい。」


「ごきげんよう、カイン殿下。」


「ご、ごきげんよう。カイン殿下。」


中庭のテーブルから慌てて立ち上がり、私とミザリーは目上の方への礼を取る。学園内では略式の挨拶が推奨されているし、よほどの身分差がなければ気安く付き合ったりもする。だが、夜会などで会話をしていても彼だけは別格である。


カイン・ルクサーヌ殿下。この国の第一王子である。

そして、私の記憶が覚醒したときに攻略対象の1人だと考えたうちの一人でもある。褐色の髪にエメラルドの瞳。アルベルト様が金髪碧眼でやや哀愁というか色気のある雰囲気に対して、殿下はいかにも人好きのする穏やかな雰囲気の王子様である。乙女ゲームって、確かパッケージとかに大きく書かれる王道のメインキャラクターがいるはずよね。雰囲気だけならアルベルト様っぽいけど、王子様がいるなら王子様がメインって感じなのかしら?性格的には、ミザリーにはぜひともカイン王子の方にいって欲しい気がするけど、王子様の婚約者になって断罪ルート、みたいな展開になったらそれこそたまらない。カイン王子とはこのまま距離をとっていく方針でいこう。いいよミザリー!完全に王子様をスルーするノーマルの対応・・・だと思う!


「こんにちは。ミザリー嬢。ローズ嬢。よろしければ、ご一緒しても?」


「光栄です。」


「はい、こうえ・・・」


ミザリーに続き、お辞儀をしたところだった。


「ローズは男性が苦手だからなぁ。家の付き合いがあった私とは、すっかり打ち解けているけれど。ねぇ、ローズ。いくら王家の、王子様でも、別にカインのわがままを通してやることはないんだよ。女性は嫌な男性を断る権利があるからね?」



誰が!誰と!打ち解けていると!!

ランチでも最低限、失礼にならない会話をしているだけです。覚醒以前の記憶をたどっても、私が過度に男性が苦手なこともない。苦手なのはあなたです!あ、な、た!


そりゃあ、カイン王子と関わらないですむなら嬉しいですよ。平和ライフにミザリーと出発です。

だからといって、我が家は普通の伯爵家なんです。やめて!家が潰れるじゃない!


「まさか、そんなこと。カイン殿下、ぜひともご一緒して下さいませ!アルベルト様はその・・・ええ。小さい頃は確かに、大人の男性が怖かった時期もあったかもしれません。きっとそのことを覚えていて、揶揄われたのですわ。」


「ありがとう。じゃあ遠慮無く。いやぁ、親友ながらアルベルトは相変わらずだねぇ。」


「ローズがかまわないなら、私も依存はないよ。カイン。」



同情されている?え、私カイン殿下にめちゃくちゃ憐みの視線を向けられてる!

王子が知っているレベルでいじめ!!


「カイン殿下。それ以上はローズが困りますわ。紅茶でよろしいでしょうか。ミルクはいかに?」


「ミルクは無しで。ありがとう、ミザリー嬢。」



ミザリー・・・記憶が戻る前なら、優しいあなたに感動できたはずなのに。

今の言葉はアルベルト様を好いているから?それともまさか、カイン殿下にみつめられたローズ、に嫉妬したということなの?どういうこと。ミザリー・・・私、ミザリーに嫌われたりしない?



「ローズ?食が進んでないわ。また具合でも悪くした?フルーツなら少しは食べやすいかしら?」



やっぱりミザリーは優しい!うん!

ミザリーがヒロインでも悪役でも、私はミザリーを守って平和に暮らそう。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・




とある屋敷にて。



「姉様に会いたいなぁ。はぁ。」




小さな呟きを聞いていたのは、栗毛の猫だけだった。















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