8.キノコだらけの料理と気づき
その後も、キノコ料理が次々登場してきた。
細かく刻んだ野菜とキノコをドレッシングで和えたもの、タレに漬けたキノコを三等分して飾ったものなど、いろいろな種類はあるもののどれもキノコの料理。
朝からこんなにキノコを見たのは初めてかもしれない。
なんせ、朝食にこんなたくさんのキノコが出てきたことなんて、今まで一度もなかったのだ。いや、たくさんでなくても、朝からキノコ料理が出されるなんて珍しい体験である。
「ははは! よし、食べるぞ!」
「キノコ、凄くいっぱいありますね」
「先日一気に購入してきたからな! 準備万端だ、なかなか計画的だろう!」
計画性を自慢し始めるジルカスは放っておいて。
取り敢えず食べてみることにした。
まずは、フォークで、刻んだ野菜とキノコをドレッシングで和えたものを口に含んでみる。顎を動かすと、シャクシャクシャコシャコという爽やかな音がして、心地よい食感だ。
「どうだ? 美味しいだろう?」
「……確かに、美味しいです」
ほのかにレモンの香りが漂う真夏のような味わいのドレッシングが、噛み心地の良い具に絡んで、絶妙な味わいである。
「気に入ったか!?」
「はい。このドレッシングが良いですね」
「だろう! それもハーブで手作りしたドレッシングだぞ!」
なぜそんなにハーブを持っているのだろう、と不思議に思いつつも、料理を食べ進める。
大きめキノコは調味料の濃厚な味わいが美味だったし、スープは様々な種類のキノコの噛み心地が独創的だった。タレ漬けキノコは、少し舌が痺れるような感覚があるものの、それがまたスパイスになっていて、くせになる味だ。
キノコだらけの朝食なんてキノコが嫌になるのでは、と考えていたが、その予想は良い方向に裏切られた。というのも、どれも味が違うから飽きがこないのだ。料理ごとの味わいの差がここまで大きいと、同じものを食べているという実感が湧かない。どれもキノコ料理であることは目で見て分かっているのだから、不思議なことだが。
「我が妻に気に入ってもらえたようで何より! 三年練習してきたかいがあった!」
三年も練習してきたというのか、妻にキノコ料理を振る舞うために。相手が誰かすら不明であるにもかかわらず、そんな膨大な時間を使ってきたというのか。
その話を聞いたら、私は「もしかしたら善い人なのでは?」と思うようになってきた。
短絡的過ぎるかもしれないけれど。
「……ありがとうございます。美味しいです」
「ははは! これで貴様も我が妻となる気になっただろう!」
妻となる決意はまだ固まっていない。ただ、彼が妻を迎えるために重ねてきた努力を知ったら、少しくらいなら受け入れても良いのでは、と思えるようになってきた。今度は逆に、私なんかで良かったのか、と不安に思えてくる部分はあるけれど。
「どのみち元の世界には帰れないんですよね」
「あぁ! 無理だ!」
「……ですよね」
ここと日本を行き来できれば良かったのに。
それなら、もっと気楽にジルカスと交流できたのに。
「少し……もう少しだけ、考えさせて下さい。これからのこと……まだ、考えがまとまりません」
「ははは! そりゃそうだろうな! いきなり連れてこられたのだ、悩むのは当然。我が一族の妻たちも、皆、最初は嘆いていたと聞いたぞ」
ジルカスの言葉を聞いて、そうか、と思う。
こんな目に遭ったのは私が最初ではないのだ、と気づいた。
私は、私だけがこんな不幸に巻き込まれたかのように錯覚していたが、それは間違いだったのだ。ジルカスが存在しているということは、母親もそのまた母親も存在していたということで。彼の一族が代々召喚の儀式を行っていたのなら、その母親たちは皆、別の世界から連れてこられた人だということ。彼女たちは皆、私のような目に遭い、結果的にこちらの世界で生きることを選択したのだろう。




