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24. ヒヨコとスライムの二人旅

 トコトコトコトコ。


 ぽよんぽよんぽよんぽよん。


 小さい歩幅でトコトコ歩く俺。

 その隣をまるでスキップするように跳ねるブルー。

 ウルティア領を出て、レアポーク領を抜けて、現在森の中をお散歩中。


「それにしても凄まじかったな……」


 ついさっき起こったレアポーク領でのちょっとした事件を思い出して苦笑いする。


 ウルティア領を出てすぐにレアポーク領に入り、領主の屋敷に挨拶しに行ったときのことを思い出す。



 レアポーク男爵と執事のエマルス、それとボールも出迎えてくれた。わざわざ仕事の手を止めてまで見送りに来てくれたのはちょっと嬉しかったが、ボールの様子がおかしい。


「フィード様。お元気で」


「何があろうとも前を向け。君ならどんな困難も乗り越えられるだろう。ただ、あまり周囲を驚かせるなよ」


「え?はぁ……?ボールも元気でな」


 レアポーク男爵の最後の言葉には首を傾げたが頷いておく。

 様子のおかしいボールにも声をかけたが返事がない。


「おい、ボー……ぐふっ」


 再度声をかけようとしたら突撃された。衝撃で後ろに吹っ飛んだ。


「うぇぇぇぇぇんせんせぇーーーっ」


 涙と鼻水で顔をぐっちゃぐちゃにして俺に抱きつき、数メートル先までコロコロ転がる。

 引き留めてくれるのは嬉しいが、汚い。顔をこっちに向けるな。


「ボール!フィード君が困ってるだろう。離しなさい!」


 レアポーク男爵が息子を叱り、引き剥がそうとするが俺を抱き締める腕の力は緩まない。


 本当に、初めて会ったときとは180度違うな。あの頃のクソ生意気な態度が懐かしい。今やこんなに丸くなって……体型じゃなくて性格の話な。

 俺を師匠と呼んで懐いてくれてるのはとても嬉しいのだが、俺にはやりたいことが山程ある。それはボールにも伝えたはず。

 旅立つことを最初に打ち明けたときはボールもついていく!と駄々をこねたが、領主の一人息子で次期領主なため認められなかった。


「ボール、ボール」


「うううう……」


「唸るな。何をそんなに嫌がるんだ?」


「だ、だってぇ……ぐすっ……先生が、いなくなって……もう会えないなんて、そんなの……っ」


 もう会えない?

 何を言ってるんだか。


「会えるぞ、いつでも」


「ふぇ?」


 きょとんとするボール。


「だから、いつでも会えるって。転移魔法使えば一瞬で帰って来れるから」


 しばらくは旅を楽しむつもりだが、帰って来ようと思えばいつでも帰って来れるぞ。

 あれ?転移魔法のことは言ってなかったっけ?だから皆大袈裟なまでに別れを惜しんでたのか?


「なっ……!?転移魔法だと!?」


 俺の言葉に反応したのはボールではなくレアポーク男爵だった。

 エマルスも信じられない目で俺を見ている。


「あまりに高度な術式で、その上膨大な魔力を使ってようやく使えると言われている転移魔法……何百年も前に使える者が絶え、いつからか魔法式が描かれた書物さえも存在があやふやになっている伝説の魔法を使えるのか!?」


 この世界では転移魔法は伝説扱いのようだ。

 前世の世界では普通に使われていたんだがな。


「まさか、そんなことが……」


「有り得ません……」


 呆然とした様子でぶつぶつ独り言を言い始めた二人。戻ってくる気配がないのでボールの腕から抜け出した。


「そういう訳だから、ちゃんと帰って来る。約束だ」


 いつになるかは保証できんが。


「ううう……絶対だぞ。べ、別に早く帰って来てほしいなんて思ってないんだからな!」


 お、久々のツンデレ。


 どうにか納得してくれてよかった。ずっと引き留められてたらまた決心が揺らぐところだった。



 跳ねて進むブルーの隣をゆったり歩く。

 急ぎでもないのでのんびり行くとしよう。


「アネスタまでは5日……人間の足で5日だから、俺の足じゃもっとかかるな」


 ブルーもいるから退屈はしないだろうが、森を抜けるまでは単調な生活になるな。


「これからよろしくな」


 こちらこそ、という感じで俺にすり寄るブルー。

 可愛い。ヒヨコの手で撫で撫でしてやる。


 さて、そろそろ昼飯にでもするか。


 適当な場所に腰掛けて異空間収納魔法から弁当を取り出す。

 これは母に持たされたものだ。異空間収納魔法は中の時間が停止すると言ったら、旅に出るまでに沢山作っておいてくれた。

 旅の道中に食べるものということで手軽に食べれるもの中心だが母の味は美味しい。大事に食べよう。


 横を向くと俺と同じことをしたいのかそこら辺に生えてる雑草を体内に取り込んで食事(?)をしているブルーがいた。

 スライムは基本食事する必要はない。だから俺の真似をしてるだけだろう。


 昼飯も食べ終え、少し休憩を挟んでから再び歩きだす。

 森には魔物も野生動物もいると聞いたが、まだ人の出入りが多い浅い場所だからか、野生動物は見かけるが魔物はいない。


 それからも休憩を小刻みに挟んでは進むを繰り返しているうちに暗くなってきたので野営の準備を始めていると、ブルーが体の一部を人間の手のような形にして俺の頭をポンポン叩いた。

 スライムにしては賢いから、体当たりするより効率的な方法を勝手に覚えたのだ。


「どうした?」


 ブルーは手の形を変えてある方向を指す。

 何かあるのかと探知魔法を使ってみると魔物の存在を感知できた。


「魔物を探知できるのか」


 森に入るときに広範囲で探知魔法で魔物がいるかどうか確認したが引っ掛からなかったので探知魔法は使わないでいた。

 まさかブルーに魔物を探知する能力が備わっていたとは。同じ魔物だから分かるのかな?


「寝てる間に襲われたらブルーじゃ対処できないよな。さっさと狩っておくか」


 野営の手を止めてブルーに留守番をさせ、魔物のいる方へと向かう。

 幸い魔物は1体しかいない。低級の魔物しかいないらしいのでサクッと討伐しよう。


 進んだ先にいたのはゴブリンだった。予想通り低級だったのでさっさと首を落として魔石を回収して死体は埋める。

 死体をそのまま放置しておくと他の魔物が寄ってくるからな。


 野営地に戻って火を起こし、母お手製の飯を食べてからブルーを枕にして就寝した。




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