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14. レアポーク男爵の頼み事

「君が魔法を使えるというノンバード族か」


 じろりとこちらを見下ろすレアポーク男爵。


 前世の経験で貴族の礼儀作法は頭に入ってるが、今の俺は貧乏農家のしがないヒヨコ。本物の貴族相手になんちゃって作法は必要ない。むしろ無礼だ。


「お初にお目にかかります、レアポーク男爵。フィード・メルティアスといいます」


 丸っこい身体を前に倒してお辞儀する。首がなく、頭部と胴体が直結してるので全身倒してるように見えるがお辞儀のつもりだ。


 レアポーク男爵が意外そうに片眉を上げた。


「……ほう。年齢の割には礼儀正しいな。面を上げなさい」


 言われた通り顔を上げる。


 子豚が真っ赤な顔で俺を睨んでるのが視界に入った。

 なんか怒ってるっぽい。何でだ?


 内心首を傾げていても子豚は顔が真っ赤なこと以外何の反応もなく、レアポーク男爵が再度口を開いた。


「先日は息子の愚行を諌めてくれたそうだな。感謝する」


「…………え?」


 父の予想とはかけ離れた反応に目を瞬かせる。


「なんだ、意外か? 他の領地の領主が平民、それも子供に頭を下げるのは。私が叱ると思ったならそれは間違いだ。愚息が周辺の領地で他者に嫌がらせしていたのは知っている。この子が自分から話してくれるのを待っていたのだが……君に制裁を下されたのがよっぽど堪えられなかったようだ」


「制裁だなんてそんな。俺はただ、魔法もどきを自慢して本来の魔法を汚す行為をした奴にムカついただけですので」


 真顔で正直にぶっちゃけたらレアポーク男爵が突如笑いだした。


「ははっ! 貴族相手にそこまで馬鹿正直に申告するなんてな!」


 最初の厳ついイメージが少し崩れた。

 どうやら厳ついのは見た目だけで中身は案外気さくなのかもしれない。


 一頻り笑ったあと、唐突に切り出された話題に首を傾げることになる。


「フィード君。君さえ良ければ、ボールを鍛えてやってくれないか?」


 ボールを鍛える。

 球体をどうやって鍛えろと言うんだ。玉投げでもすればレベルが上がるのか?


 そこまで考えて思い出す。ボールってのはレアポーク男爵の隣にいる息子の名前だったと。


「それはちょっと……息子さん嫌がってるみたいなので」


「えっ!?」


 真っ赤な顔でこちらを睨んでいるボールをちらっと見る。

 だが断った瞬間に顔の赤みは引いてしょんぼりした。

 俺に教わるのが嫌ならその反応はおかしいと思うのだが……


「こら、ボール。また顔が赤くなってるぞ。感情がたかぶると顔が赤くなる癖、いい加減直したらどうだ?」


「……直そうと思って直るものではありません」


「すまないな、フィード君。この子のコレは感情が昂ると出る症状なんだ。ちなみにさっきは君と再会できた喜びで興奮していたよ」


 赤面症みたいなものか。

 どう見ても怒ってるように見えたが違っていた。本人が嫌がってるなら無理に鍛えてもストレスになるだけだと断ったのだが、レアポーク男爵の解釈が間違ってなければ嫌がってはいないっぽい。

 本人が嫌がってないなら断る理由はないな。


「では、明日から」


 再び顔が赤くなるボール。さっきと同じ睨みつけるような眼差しに果たして父親の解釈は合ってるのだろうかと不安になったが、やけにそわそわして両手の人差し指をくるくると回してそっぽを向いているボールを見てなんとなく分かった。


「し、しょうがないな。お前がどうしてもって言うならやってやらなくもないぞ!」


 ツンッとした態度とは裏腹に口元がにやけている。素直じゃないな。


「嫌なら別にいいが」


「い、嫌なんて一言も言ってないだろっ!」


「そうか。なら弟妹達と一緒に鍛えてやる」


 俺としても、とても魔法とは言えない魔法を使うやつを矯正するのは吝かではない。間違った魔法の知識が広まるのを防ぐためにも、ここは一肌脱ぐしかないか。



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