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転生したら王子になっていました~予想外の事態にも、奮闘あるのみ~  作者: 銀雪
第三章  銀髪の兄弟と国を揺るがす大戦
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『94、教皇の権威』

ここから様々な事実が明かされていくパートに入りますよ!

騎士団が到着するとエーリルさんの指示のもとで侵入者たちが縛られていく。

自殺を試みた者もいたが、ツバーナに取り押さえられていた。


「エーリル、助かった。突然のことだったので騎士団も情報が錯綜していたんだ」

「全く・・・報告にいく人が多すぎるのね。対策を考えなきゃ」


要するに、今回の情報錯綜の原因は侵入者を発見した人が全員報告に走ったことだ。

これは報告を行える人物を限定すれば抑制することが出来るだろう。

全員が縛られたのを見届けると、部屋の奥に潜んでいたプリスト教皇が侵入者に近づく。


「あなたたちは・・・なるほど。デーガ教の信者ですか」

「デーガ教?名前からして今回の内乱の首謀者、デーガンを主とする一派ですよね」


エーリルさんがそう尋ねると、プリスト教皇が大きく頷いた。

どうやらデーガンなる人物は内乱を起こしたばかりか、新たな宗教の教祖になったようだ。

とんでもない奴である。


しかも俺たちを襲ったウダハル王国が背後についている可能性まで出て来た。

本当に各国の思惑が複雑に絡み合っているよな。


「大丈夫ですかね?いくら私がいるとはいえ、リレン王子が実質2国を相手になど・・・」

「確かに。デーガンなる者ならまだしも、ウダハルは些か手に余ります」


エーリルにフェブアーという強力な騎士が難航を示したとあらば予定変更が急務だ。

早速、父上が会議をしようとソファーに座ったとき、部屋に凛とした声が響いた。


「問題ない。我が国の聖騎士を派遣する。リレン王子には我が国には必要なのだ」

「何をおっしゃっているのです。この国の王太子を危険な地に派遣しろと?」


プリスト教皇の瞳を見つめながら父上が険しい声で言った。

部屋の隅にいたツバーナは殺気を感じ取ったのか、魔導具を構えている。


「いかにも。だから上級聖騎士を400は派遣すると言っているのだ。不満か?」

「しかし・・・我が国も3国を相手にしてますし・・・」


内乱鎮圧のためだけに軍を割くわけにもいかないと言外に伝えていく。

もはやこの2人の言い合いは本音を隠した心理戦の様相を呈し始めていた。


「だから我が国が聖騎士を派遣するばかりか3国を鎮圧すると言っているのですが」

「具体的にどうするつもりなのですか?怪しいですね」


確かにそこは気になるところではある。

何しろあの3国は宣戦布告をしているため、そう簡単には引き下がらないだろう。


「戦争をするなら信者に訴えかけると言うんです。イルマス教の信者は各国にいますから」

「それで各国が内部崩壊するのを狙うと?なるほど、それなら或いは・・・」


父上は瞠目をしながらプリスト教皇を見上げているし、完全にプリスト教皇のペースだな。

半ば達観しながら見ていると、横から妙な気配を感じる。

そちらに視線を向けると、ツバーナが真っ赤な石を耳に当てているところだった。

随分とシュールな光景だな。


「ツバーナは何をしているの?変な石を耳に当てて」

「エルフの国と連絡を取っているのよ。エルフの軍を派遣出来ないかと思ってね」


それが可能ならば心強い。

エルフの軍団は魔法に長けていると聞くため、戦争では大いに役に立つだろう。


「じゃあツバーナはそのままエルフの里と交渉をお願い。カルスは食事の相談をして」

「かしこまりました。グリーソン様と会ってきます」

「こちらは条件次第で何とかなりそうだから出来るだけフェアになるようにするわ」


カルスが部屋を退出していき、ツバーナも石に意識を集中し始める。

目の前では父上がプリスト教皇の口車に乗せられて、俺に命令を下そうとしていた。


「王太子たるリレンに命ずる。これよりイルマス教国に出向き、反乱を鎮圧してこい」

「かしこまりました。このリレン、必ずやお役に立って見せます」


息子である俺に対して勅命が使われたのは今回が初めてだった。

それだけ父上はイルマス教の後ろ盾を得ることに重点を置いているんだな。

単に口車に乗せられているだけかもしれないが。


「リレン様、エルフの軍隊からの交換条件が来ました。人間界の時計を5つだそうです」

「時計か・・・。確かカルスの実家が時計屋じゃなかったかな?」


俺の首に今も掛けられている懐中時計は、カルスからプレゼントされたものである。

契約のトリガーだと知ったときは驚いたものだ。


「後でカルスに相談してみよう。とりあえず他の条件でもいいか交渉してみて」

「分かりました。王女の権威を最大限に使って頑張ってみます」


桃色の瞳をキリッと引き締めながらツバーナが部屋の隅っこに移動する。

ここでカルスが帰ってきた。


「リレン様、献立が届きました。当日は荷馬車を用意して持っていくそうです」

「なるほど。騎士たちの食事はいいんじゃない?問題は王族用とかいう献立だな」


俺は紙の一部を指で弾く。

王族用の献立、と書かれた欄には肉や魚をふんだんに使った食事が書かれていた。


「これはマズイでしょ。こんなに豪華な食事を作るにはそれだけ荷馬車が必要じゃん」


材料だけで、荷馬車何台分だよ。

戦場に進む道中でジェネラルミノタウロスの肉とか需要ないから。


「これは廃止して普通のでいいよ。差をつけるにしても銀貨5枚以上の食材は弾いて」

「はあ・・・了解しました。すぐに向かいます」


カルスは釈然としない表情ながらも頷いて部屋を出て行った。

俺はカルスを見送ると、顔を父上とプリスト教皇の方角に向けて1枚の紙を渡した。

その紙には献立が書かれている。


「裏が白紙だと思いますので、出陣の予定や仕事を書いて下さいませんか?」

「予定を把握しておきたいということか。分かった」


父上が何かを言う前に、プリスト教皇が紙を取ってペンを走らせていく。

意外と達筆で文字が読みやすい。


「えっと・・・やっぱりこういうのが必要なのですね。どんなことを話そうかな・・・」


俺は頭を抱えるしかなかった。

紙の上の方には“明日の9鐘にこの王城を出発”と書かれている。

それだけならまだいいのだが、横に“リレン王子による挨拶”などという文字が見えるのだ。

一瞬、見間違いかと思ったわ。


「僕、スピーチとか自信ないんだけど・・・。どうしようかな?」

「リレンの素直な気持ちを言ったらいいんじゃないかしら。それで十分よ」

「そうだな。リレンのスピーチなら大体のものがOKだろ」


うん?2人とも俺がよく知っている声だな。

予想通り、領地巡りの旅以来のフローリーとボーランがドアの前で不敵に笑っている。

後ろにはプルート騎士団長の姿も見られた。


「騎士団長の推薦で今回の戦いも一緒に行くことになった。よろしくな」

「・・・リレン様、よろしくお願いしますわ」


いつも通りに接するボーランと、父上ら重役への緊張からか声を強張らせるフローリー。

2人の差は顕著過ぎて、思わず吹き出してしまった。


「私はイルマス教国の教皇、プリストだ。改めてよろしくな、フローリー殿とボーラン殿」

「こちらこそよろしくお願いしますわ」

「不甲斐ない部分もあると思いますが、よろしくお願いします」


うわ・・・ボーランは夜逃げした長男の後を継いだからか、対応が上手い。

こんなの、普通の7歳じゃない!

――まあ、そんなことを言える立場でないのは十分承知していますが。


「リレン様、軍隊派遣の交渉条件がイルマス教の高聖水5本ということで纏まりました」

「ありがとう。高聖水なら金貨3枚だし、何とかなる」


横から歩いてきたツバーナにフローリーとボーランが瞠目して叫ぶ。


「「ツバーナがどうしてここに?」」

「何でって・・・私はリレン様についているのだから当然でしょ?メイドの代わりなのよ?」


さも当然のように言うツバーナに呆気に取られた2人は曖昧に頷いた。


「リレン様、騎士に驚かれながらも何とか銀貨9枚以上の食材を避けました」

「了解。フローリーたちも来たしそれくらいが妥当だね。後は寝て明日に備えるのみだ!」

「「「おう!」」」


子供たちの甲高い声が国王の執務室に響き渡った。


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