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転生したら王子になっていました~予想外の事態にも、奮闘あるのみ~  作者: 銀雪
第一章 王子の変化と王城を襲う陰謀
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『2、知識を手に入れろ』

説明回です。

 さて、この状態で思い出してみると、リレンは勉強と全く無縁な人間。

 その度合いは、あそこで「本で知った」などどいえば多重人格を疑われるレベルである。

 でも、この世界で生活していく上で最低限の知識は欲しい。

 俺に自覚はないけど、一応王太子という立場なわけだし。


 そういうわけで俺は机に歩み寄り、引き出しの中にある資料を取り出す。

 これは五歳の誕生日の折り、父上が王国の勉強用にくれたものである。

 無論、前世の記憶が入り込む前のリレンは読んでいない。

 こいつ、国王になるつもりあったんだろうか。


 まあ、今は細かいことはいいや。とりあえず昼食の時間までこれを読んどくか。

 そう思って本を開こうとしたとき、あることに気づく。

 もしかして、この世界の文字読めなくない?


 当然、日本語などで書かれているわけもなく、俺は英語の成績も中の下くらい。

 中でも長文読解は大の苦手だった。

 早くも異世界生活に暗雲が立ち込めてきたか?


 などと考えながら本を開いてみると、幸いなことに、この本を読むのに苦労はしなかった。

 もちろん日本語や英語などではなく、よく分からない記号のようなものが並んでいたが。

 つまるところ、この年で文字を読めるように教育されたってことだろ。王城の教育環境、恐るべし。

 三十分ほど目を通した結果、三分の一ページ分には次のようなことが書かれていた。


 ここはオーハス大陸という大陸の南東部に位置する国、グラッザド王国の王城。

 この大陸には十六の国があり、そのうち四国が同盟関係にある(四国同盟というらしい)。

 グラッザド王国と特に親しい国は西部にあるカマーリ国だけ。

 東と西で真反対に位置するため、多数の輸入品をやり取りしているのだとか。

 国内は八つの郡に分かれており、総人口は一千万人ほど。


 そのうち王城の城下町、王都が位置するガードン郡には三百万人ほどが生活している。

 このガードン郡は国王である父上が直接統治しているが、残り七つの郡は父上に直接任命された領主が統治している。


 身分は王族、貴族、平民の三つで、奴隷はグラッザド王国では厳しく禁止されている。

 最も、貴族については公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵と地位ごとに肩書きが分かれており、伯爵以上は上級貴族、子爵以下は下級貴族となるが。

 平民についても農民や商人、冒険者など多数の層に分かれている。

 

 ちなみに領主や執事、メイドは貴族扱いのようだ。

 立場にもよるが、例えばリルだと男爵相当らしい。

 

 王族は、本当に王の血を受け継いでいるものに限定されるという。

 執事やメイドも貴族扱いか。まあ主人のために身を尽くしているわけだしね。

 指示される側の苦しみを分かっている俺は、この制度には賛成できる。

 多分、反対派も数多くいるのだろうなと思ったりもしたが。


 後のページは通貨関係か。

 小さいお金から順に、銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、白金貨となる。

 銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で大銀貨一枚と十進法で価値が増えていく。

 

 銅貨は日本円にして百円に相当する。最小の価値のお金にしては価値が高い。

 その法則に当てはめると、銀貨は千円、大銀貨は一万円、金貨は十万円、白金貨は百万円相当となる。

 しかし白金貨は材料が国内では取れないため、主に贈答用に使われているのだとか。


 そうだ。せっかくの機会だから、この目で王都を眺めてみるか。

 王城ならば少し高い展望台のような感じで見えるだろう。

 そう思い立った俺は、椅子を窓の近くに運び、窓の外を見た。


「うわぁ……すげぇ……」


 窓の外に広がった光景が凄すぎて、思わず絹川空の口調が出てしまった。

 俺の中に残っている自分のイメージと、素の口調が合わなさすぎて引くレベルだな。

 この口調は封印しておこう。


 まあ、口調の話はいいとして、話を王都に戻そう。

 窓の外に広がっていたのは、まるでヨーロッパのような洗練されて計算された街並みだ。

 

 石畳みの道路を通る色とりどりの馬車。荘厳な雰囲気を醸し出す噴水。

 噴水の周りには広場があり、穏やかな空間が広がっている。

 これを見ると、本当に転生できたんだなという感激に浸ってしまう。

 

 自由に外に出られないのは残念だが、機会があったら王都散策もしてみたいな。

 出来る事なら自分の肌で王都の雰囲気を感じたい。俺はそういうタイプだし。


 そういえばアスネお姉さまは王都を直接見たことがあるのだろうか。

 あるのならばおすすめスポットとか聞いておくのも悪くないな。


 そんなことを考えていると、リルが部屋に入ってきた。

 何やら部屋の端に歩いたと思うと、今度はワゴンを押して俺のそばに寄ってきた。


「リレン様、王都を眺めているのですか?」

「うん。いつか城の外に出て王都を散策できないかな?」

「多分、もう少ししたら散策出来ますよ。私も詳しくは知りませんが、王族はお披露目パーティーの前に

王都を散策する決まりになっているようです」

 

ダメもとで尋ねてみたのだが、どうやらもうすぐ散策できるようだ。


「それは良かったよ。で、お披露目パーティーだっけ? それは何?」


 なんか嫌な予感がするんだけど。


「自分たちの跡継ぎを貴族が披露するパーティーです。今回はリレン様五歳に合わせて行われますよ」

「そ、そうなんだ」


 パーティーか……主役になるみたいだし、王族に媚びを売ろうとする貴族の対応が面倒そうだな。


「つまり、アリナ様と交代で王都散策ですかね」

 

 王都散策は一人がいいしな。それはありがたい。

 日時をずらせば、お土産が被るとかいう悲劇も避けることができる。


 そのまましばらく景色を眺めていると、ふとこの世界の仕組みが気になった。

 俺は王族ということになるのだが、役職などの体制はどうなっているのだろうか。

 この世界にも大臣とかはいるのかな?


 先ほどの資料のページを捲っていくと、それについて書かれている部分が見つかった。

 読んでみると、このグラッザド王国には六つの局が存在し、局というのは前世でいうところの省に該当することが分かった。


 財務を管理している財務局、農業関係の事柄を扱う農業局、魔法関係を扱う魔法局、

 外交関係を整理する外務局、取引を引き受ける取引局、騎士などが配備される戦闘局。


 この六局で国が成立しているということだ。

 特に仲が悪い局などは無いが、外務局と取引局はたまに喧嘩になることもあるという。

 外務局が友好を開いた国と貿易が成立しないなどという理由らしい。

 まあ、この二局についてはしょうがない気もするが。


 局のトップを大臣というから、この国には六人の大臣がいることになる。

 大臣は公爵クラスの貴族家の当主が行い、貴族の中でも大臣の椅子を狙っている人は多い。

 だからこそ王族に媚びを売ったりして重要役職につけてもらおうとするのだろう。

 王族側からしてみればその意図がバレバレなのは置いておく。


 あと知りたいのは王城についてかな?

 資料に目を移すと、この城は七階建てであることが分かる。

 ちなみにここは二階だ。


 最上階である七階には王や宰相の執務室があり、五階と六階に局の執務室がある。

 まさに国の政治の中心地だな。


 二階から四階までが王族のスペースで、一階は大広間などの施設が中心だ。

 前世で言えば、国会議事堂と首相官邸が一緒になった感じなのだろう。


 その他、敷地内には訓練場と温室があって、後者では野菜や果物などを育てているらしい。

 料理長の趣味かなんかだろうか。

 ひとまず知りたいことはあらかた知れたかな。

 そう思って資料を机の上に置くと、リルが微笑みながら話しかけてきた。


「あら、勉強熱心ですわね。日射病になってから変わられたみたいで」

「そうですか? ただ、行動を改めねばと思っただけだよ」

 

 はい、失敗しましたー。

 敬語とタメ口が入り混じって変な感じになってるし。

 言葉遣いは練習していかなきゃいけないし、もっと勉強もしていかなきゃ。


「私は昼食の準備がありますので失礼いたします。何かありましたら、ドアの外に控えている執事のカルスを頼って下さいね」

「分かった。昼食の準備よろしく」


 一礼した後、リルは退出していった。

 ううっ……今更ながらプレッシャーと決意が芽生えてきたよ。

 

 今なら委員長だった松村先輩の言葉が、どうして複雑そうだったか分かる。

 それは、指示する側というのは、それだけ多くの責任を背負うことになるから。

 

 例えば自分が国王になった時、目の前の王都が壊れたらそれは俺の責任だ。

 指示をミスした責任を負わなければならない。

 でも、自分が指示する側にしてくれと頼んだのだから甘んじて受け入れるしかないだろう。


 だからこそ俺は、それに立ち向かうためにも勉強しなければならないんだ。

 リレンとして、次期国王として相応しい振る舞いをしていかなければならない。

 まさに前途多難な道のりとなるだろうが、諦めるつもりは毛頭ない。

 

 俺はこの世界で、立派な国王になって見せる!

 流れゆく王都の街並みを見ながら、俺はそのような決意を固めた。


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