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転生したら王子になっていました~予想外の事態にも、奮闘あるのみ~  作者: 銀雪
第一章 王子の変化と王城を襲う陰謀
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『18、王都散策④~ショートコントとギルド~』

 何だ、アイツら……凄く怪しいんだけど。

 通りすがりの人たちも訝しげな表情で、明らかに場違いな二人を見ている。

 しばらく観察していると、どうやら道を通る人を残らず尋問しているようだと分かった。

 前世でいうところの検問というやつである。


 それだけなら問題はないのだが、厄介な事が一つ。

 どうやらフェブアー近衛騎士団長を探しているらしいのだ。

「確認させていただきますね」などと言ってフードも剥いでいるため、顔を隠す作戦も無理。


 それにしても、これは想定外。

 ターゲットがまさかフェブアー近衛騎士団長だとは思わなかった。

 もしかしたら俺じゃないかとは思ったけどね。

 とりあえず近くの路地裏で作戦会議を行うことにし、一時的に道を外れる。


「どうしようか、あの人たち。というか誰? フェブアー騎士団長の知り合い?」

「あいつらは騎士隊の書類担当官です。恐らく、私のサインか何かが必要な書類があったのではないでしょうか。王子の護衛であることをバラしてもいいのですが、何しろ往来ですので騒ぎになられると……」

「確かにそれは困る。出来れば遠慮してほしい」


 厄介だな……。ギルドとかで休憩がてらにやってもらってもいいが、既に時刻は十五鐘。

 父上からは十八鐘までに帰って来いと言われているため、あと三刻しかない。

 書類の量によっては俺が詰む可能性がある。


 ――何とか穏便に済ませられないものか……。

 頭を捻りながら書類担当官を睨んでいると、一つの疑問が浮かんできた。

 どうしてサリマ地区に続く道をピンポイントで塞いでいるんだ? ただの偶然か?

 尋ねてみると、フェブアー近衛騎士団長は首を横に振った。


「時間はあと三刻ですので、そろそろお土産を買う時間だと推測できます」

「王子ですので、そのついでにギルドを見るだろうということも」


 騎士の一人も補足した。

 うーん。その通り過ぎてぐうの音も出ないな。何か突破する案は転がっていないだろうか。

 そう思いながら辺りを見回していると、とある人物が視界に入る。

 特徴を観察しているうちに、一つの案が閃いた。


「よし、ショートコントをやろう!」


 突然叫んだ俺にポカンとしている四人に、たった今思いついた案を説明していく。

 説明し終わった際には、全員が黒い笑みを浮かべていた。

 半刻ほどで準備を整えた俺たちは、書類担当官の前に歩み寄っていく。


「そこの親子連れ、止まれ。貴様らはフェブアー近衛騎士団長の一行か?」

「誰それ? おじちゃんたち、道を塞いじゃダメなんだよ!」


 精一杯の裏声を駆使して、平民の無邪気な四歳を演じる俺。

 幸いにも、こいつら二人は俺が王子だと気づかなかったらしい。


「そうだな、ゴメンな坊主。すぐ済むからね」


 苦笑いする書類担当官が、隣にいたもう一人の書類担当官に目配せした。

 目配せを受けた書類担当官は、いきなり隣の女性のフードを剥いだ。

 俺に正論を言われてイラッとしていたのか、確認もなし。

 こちらとしては好都合なのだが。


「キャア! あなたたち、いきなり何をするんですか!」


 フードの下から出てきたのは、尖った耳の女性。

 正確に言えば、エルフの仮装をしたフェブアー近衛騎士団長である。

 厚紙を尖った耳の形にカットし、着色しただけの質素なものだが、一瞥させるだけなので問題は無い。

 作戦通り、呆気に取られている彼らを尻目にフェブアー近衛騎士団長がフードを被り直す。


「わ! ご……ごめんなさい!」


 フェブアー近衛騎士団長の殺気をまともに食らい、ビビる書類担当官の二人。

 そこに、地獄の底から響いてくるような暗くて低い声が突き刺さった。


「――不問にしてあげるから早く通しなさい。あと、ここから去れ」

「「ご、ごめんなさーい!」」


 一陣の風が吹き抜けるがごとく走り去っていく書類担当官の二人。

 その姿が完全に見えなくなると、フェブアー近衛騎士団長が大きくガッツポーズ。


「やったわ! あの二人組を追い払った!」

「あの二人に何か問題でも? あと偽の耳は取ってね」

「はい。実は……」


 その後の話を大雑把にまとめるとこうである。

 あの二人組は若干、強引なところがあり住民からの評判も悪かった。

 それでますます不機嫌になり、ますます嫌われていくという負のループを経験。


 やむを得ず、ブルート副近衛騎士団長が書類担当官に異動させたのだが、今度は上司のサインを取るために街中まで追っかけてくる、ストーカーまがいのことをし始めていた。

 その事でフェブアー近衛騎士団長は随分と苦い思いをしたらしい。

 だから、お灸を据える事が出来てて良かったと思っているのだそうだ。


 そんな事を話しているうちにギルドにたどり着く。

 ギルドは木製で三階建て。剣が交じり合っているいかにもな看板が吊られていた。

 中に入ると、正面にカウンター、左手にボード、右手に酒場がある。


 俺たち六人は空いている席に座り、メニューを眺めていく。

 結局、全員が紅茶を頼み、お茶タイム……と思ったのだが、謎の男たちが近寄ってくる。


「よう、そこの女! そんなガキと冴えない男は放っておいて、俺たちと飲まない?」

「断る。お主にも連れがいるではないか。そちらに戻れ」


 顔が赤く染まっているし、いわゆる酒に酔った冒険者に絡まれるテンプレであろう。

 しかし、そんなものは関係ないとばかりに別のテーブルを指さすフェブアー近衛騎士団長。

 その横では、四人の騎士たちが射殺すような視線を向けている。

 すると男はその態度が気に入らなかったのか、騎士の一人に詰め寄っていく。


「ああん? 何だその視線はよ! 俺をバカにしてんのか?」


 凄く助けてあげたいが、この脳筋、口撃が通じる感じじゃないからなぁ。

 即座に実力行使で潰しにくるのは目に見えている。

 どうしようかと様子を伺っていると、詰め寄られた騎士が体を反転。男の後ろに回った。


 そして男が振り向いた隙を見計らって、首に一発手刀を下ろす。

 男は泡を吹いてひっくり返り、ピクリとも動かない。

 どうやら気絶させたようだ。全員が目を見開き、サッと視線を逸らしていく。


「騎士さん……随分強いんだね……。頼もしいや……」


 あまりにも華麗な一撃に驚き、言葉が出てこない。

 そんな俺を見た五人が盛大に噴き出し、再び周りの注目を浴びる。

 こんなんじゃ、いずれ王子だとバレてしまう!


 全員が飲み終わっているのを確認して会計をサラッと済ませると、さっきの書類担当官ばりの速さでギルドを飛び出した。

 後から必死の形相で追いかけてきた騎士たちにジトッとした視線を送る。


「あんなに注目を浴びたら僕たちの素性がバレるでしょ」

「「「「「ごめんなさい!」」」」」


 五人が一糸乱れぬ動きで頭を下げた。俺はため息交じりに歩き出す。


「行くよ! いざ、サリマ地区に!」


 隊長になった気分で十分ほど歩くと、サリマ地区に到着した。

 モダンな街並みが広がっており、今までの街とは明らかに雰囲気が違う。

 手頃なお土産屋を探していると、やがて一軒の店を見つけた。

 看板には『指輪のお店 フタンズ』と書かれている。


 指輪かぁ……。そうそう買う機会もないし、お土産にはちょうどいいんじゃないか?

 そう思った俺はその店に入ることにした。


「うわっ……すごく綺麗……」

「お主、何用でここに来た?」


 店の中には色とりどりの宝石が散りばめられた指輪や、どうやって彫っているのかと思うほど精巧な指輪が並んでいる。

 しばらく眺めていると、背後から声が聞こえてきた。

 驚いて振り向くと、店主とおぼわしき老婆が不機嫌そうにこちらを睨んでいる。


「あ、いや……お土産を買おうかなと思いまして。すっごく綺麗ですね」


 微笑みながら言うと、店主は一瞬だけ顔を綻ばせた。

 だが、その顔はすぐに引き締められ、不機嫌そうな顔に取って代わっていく。


「出て行け。これから忙しくなるからな」


 やがて、一言だけ呟くと老婆は奥に引っ込もうとする。

 その態度にイラッとしたのか、フェブアー近衛騎士団長が老婆との距離を詰めた。


「おい、そこの老婆、無礼であろう」

「はっ? あたしゃいつも通りだよ。忙しくなるんだからとっとと出て行っておくれ」

「その態度が無礼だと言っておるのだ!」


 ちょっとちょっと……店の中で喧嘩は止めようよ。

 俺がポンポンと軽く手を叩くと、当事者の二人が一斉にこちらを振り向いた。


「フェブアー、もう良いから下がって。フタンズさん、お忙しいところ失礼しました」


 抑揚のない口調で言うと何かを感じ取ったのか、苦々しい表情で下がっていく。

 丁寧な所作でお辞儀をして、店を退出。

 結局、近くにあったお土産屋で王都の紋章が入った短剣を購入してから帰路についた。


「どうしてあの老婆に何も言わなかったのですか?無礼が過ぎます!」

「あくまでお忍びだからね。それに忙しい時に押し掛けたのはこっちだし」


 未だ納得がいかない様子のフェブアー近衛騎士団長にそう伝えると、一旦下がらせる。

 あーそれにしても楽しかったー! と俺は心の中で思いっきり叫ぶ。


 待ちに待っていた王都散策は、短剣と様々な思い出を残して終わりを告げた。

 また、いつか来れるといいな……。

 夕焼けに染まる王城を見ながら、俺は心からそう思ったのだった。


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