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異世界を創って神様になったけど実際は甘くないようです。  作者: ヨルベス
第2章 その魂、奮い立つ

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第64話 闇よりの来襲


「その顔、どうしたの?」


 ミリアムが怪訝そうに伺う。

 たくさん踏まれた足跡は、さぞ妙に映ってるだろう。


「ちょっとな……可愛い子猫ちゃん(、、、、、)の機嫌を損ねちゃったのさ」


 なーんて、お嬢様にやられた事を冗談で誤魔化したり。

 当然ながら「はあ?」と返ってきた。


 今この場に居るパーティメンバーは、俺とミリアムだけ。テレサもレトもカルドもいない。

 一人は昨夜の出来事(ラッキースケベ)で機嫌を損ねてるし、もう一人は何処かに行ってる……。


 悲しいかな。戦力が増強したはずが、今は二人だけ。

 ミリアムは十分強いが、全体的には心許ない。ここに残り二人と一匹が居ればもっと助かるのにな。


「昨日どこ行ってたのよ?」

「野宿だ」

「なんで? アタシのところ来ればよかったじゃん。なにも外で寝なくていいのに」


 男の(さが)にバカ正直に従うなら行きたかったよ。けど、そんな事したら問題になるから野宿したんだよ。

 まあ、結局トラブルは発生して今に至っているのだが。


「あの子は?」

「テレサなら来ないぞ。事情あってな……」

「ふーん……アイツ、感じ悪いよね。あんな態度してさ」

「そう言うなよ。テレサも仲間なんだから。次会ったら謝っておけよ」

「えぇー?」


 ミリアムは素直には頷かず、不満さえ唱えた。


「なんで? シンジはどっちの味方なの?」

「両方の味方だ。俺はリーダーだから平等に接しなきゃいけないんだ」


 それでも同意は得られない。眉が哀しげに下がっていく。


「……シンジはアタシのことが嫌い?」

「えぇっ?」


 様子のおかしい彼女の唇から、そんな質問が零れる。

 戸惑い、質問の意味を問おうとしたと時には……むぎゅーっと。ミリアムが腕に抱きついた。


 上目で見つめる双眸は、今にも涙が溜まってきそうだ。


「アタシが嫌いなら、そう言って。そしたら出ていくから」

「……嫌いじゃないって。出ていく必要もねえよ」

「じゃあアタシの方が好きなんだね! 嬉しい!」


 曇った表情を笑顔に変え、抱擁を強くする。自前の胸部がまたも腕を挟んできた。


 どうしてそんな事になると突っ込みたかったが、責める気になれず、不燃焼が溜息と化する。


 やれやれ、困ったもんだ。ミリアムも、俺も。

 でも今は俺達二人で何とかしないと……。


 ロザリーヌが提案した話も有耶無耶になってしまった。

 犬のようにベロベロ舐めたんだ。あの怒り様は無しになったと考えるべきか。


 よって平常運転……いや期限も迫ってるんで、少し急いで事に当たらねば。

 と言っても幸先は悪いんですけどね。シュヴェルタルの居場所も分かんないし。


「じゃあ、大好きなシンジには良いことを教えてあげまーす」

「なんだ、良いことって?」

「実はぁ……シュヴェルタルを見たって情報を掴んだの」

「ほ、本当か!?」

「案内所で手に入れたの。すごいでしょ?」


 ヤツの目撃情報……これは朗報だ。シュヴェルタルの捜索が進展した。


「でかしたぞ。目撃のあった場所を教えてくれ!」

「りょうかーい。でもその前に……シンジにはコレをあげる」


 渡したいものがあるようで、腰に提げていた小袋を探り始める。「手を出して」とも要求してきた。

 言う通りに出すと、色とりどりの小さい玉が数個、手の平に落ちて転がった。


「飴玉……?」

「違う違う。玉は玉でも、これは『ヤクダマ』。噛むと身体能力が上がるの」

「この玉が……」


 身体能力が上がる。つまりパラメーターが上がるのだろう。

 お菓子っぽい見た目してんのに、そんな効果があるのか。凄いな。


「色によって上がるものが変わるの。少しの時間しか発揮しないから使うタイミングを考えてね」

「わかった。有り難く使わせてもらうよ」


 効果は一時的か。と言っても、これは戦闘の手助けになる。

 相手が相手だからな。厳しい戦闘ほど重用する。使いどころを見極めて使用しないと。


 それじゃ準備は大体済ませたし、シュヴェルタルの捜索に行くか!





「…………バカみたい♪」





 村を離れ、ミリアムを先頭に歩いて行く。

 ようやく足を止めたその場所は、洞窟だった。


 ミリアムに視線を移すと、顔が縦に振られる。

 岩壁に大きくぽっかりと口のように開いた洞窟の中は暗く、松明かソーラダイトを使わないと進めなさそうだ。


「この中にヤツが……?」


 石の蓄光が洞窟に溜まる闇を薄くする。壁や天井は広く、時々大きく(ひら)けた空間がある。

 内部は一部手掘りした形跡が確認できる。おそらくは自然に形成されたのを掘って拡大したのかも。


 時に風が外から吹き、地形のせいか唸り声のように聞こえる。

 不気味な音が止めば不気味な静寂が訪れる。先の見えない空洞は、自分達以外の気配が感じられなかった。


「本当に……此処にいるのか?」

「いるっているって。此処に入って行ったのを見たんだって。もっと奥に行けば居るはずだよ」


 そうかもしれんが、道がいくつもあって複雑だ。しっかり覚えていないと迷ってしまう。

 洞窟の中は危ないところがあるし、加えてこういう場所には……。


『ギッ……』


 ほら、言った傍から出てきた。

 やっぱりモンスターがいるんだよなあ。


 初めて訪れる場所、慣れない地形は不利。おまけにシュヴェルタルが近くを彷徨いているはず。

 新手が来ないうちに早く討たなきゃだ!


「蹴散らすぞ!」

「合点承知! やってやるよー!」


 得物を構え、貰ったヤクダマを口に放り込みながら戦闘態勢に移行。二手に別れて撃退にあたった。





「片付いたか……」


 俺の方はモンスターがそこまで強くないこともあり、全部討てた。

 あとはミリアムの方か。あっちは大丈夫だろうか?


 見える限り、姿は確認できず。戦ってる途中ではぐれてしまったか。

 同じくモンスターと戦ってるはずの彼女の身を案じ、援護の為に向かう。


(アイツはどこ…………だっ……!?)


 事態は急転する。というのも、薄暗い闇に溶け込んだ怪しい影が突然躍り出てきたからだ。


 やべっ、間に合わない――!


「がっ……!」


 ゴツン、と頭が鈍い痛みを抱える。

 どうやらまだモンスターが居て、死角から襲ってきたらしい。


 油断……した……!


 全身が力を失い、自立すら不可能に。痛みで焦点が揺れてピンと合わない。

 こんな時にモンスターが襲い掛かってきたら……と危惧した先、足音が迫る。モンスターの足音ではなく人のものだ。


 確かめるように見下ろしていたのは――ミリアム。怪我は見当たらない。無事だ。

 油断を突かれたが、負傷の無い立ち姿に狼狽が和らぐ。


 良かった。ミリアムがやられていなくて。

 頭の痛みがひどい。応急処置をしてもらわなくちゃ……。



「ごっめーん。間違えちゃった♪」



 ………………は?



 助けてくれるはずだと思っていた……が、ミリアムは舌をペロリと出す。

 可愛らしい仕草の意味が分からない。何を間違えたと言うんだ……?


「でも謝る必要はないか。もう会うことないんだし」


 ミリアム……?

 さっきからお前、なにを……言っているんだ?


 地面に這いつくばる俺を見下ろし、彼女は壊れたようにクスクス笑い始める。やがて音量を上げて高笑いへと変貌した。


 態度が戦闘前(さっき)までと全然違う。まるで別人だ。


 何がおかしい? なぜ笑っている? 

 こっちはモンスターにやられてるんだ。笑っていないで早く応急処置をしてほしい。


「バッッッカじゃないの!? 騙されてやんの!」


 まだ何が起こってるのか解っていない。そんな反応を見たミリアムは可笑しそうに、声高に言い飛ばす。


 は? 何が? 誰が誰を騙すって……?


「あー、キモかった。金貰えるからいいけど、マジキモいわぁー」


 え? え? どういうこと?

 金が貰えるって何の話をしているんだ? 説明してくれよ。

 

「あぁ、言っておくけどシュヴェルタルはいないからね! 此処にはっ! ざぁーんねぇーんでしたぁー!」


 いない? この洞窟にヤツは居ないのか?

 どうしてそんな事を……。


「嘘を……ついてた、のか……? 俺を嵌める為に?」

「そうだよ、まだ分かんないの!? アンタを殴ったのもアタシ! アタシがやったの! 分かる!?」


 頭の中(しこう)がぐちゃぐちゃになった。


 どれだけ事実を突きつけられても、まだ信じている自分がいる。これが何かの間違いか、キツいジョークを仕掛けてきてると思いたかった。


 しかし現実は非情だ。


(ウソだ……)


 襲撃したのがモンスターじゃなくてミリアムだったなんて……。


 嘘だ嘘だ嘘だ! ウソだと言ってくれよっ!

 仲間だと思っていたのに……! 俺達これからパーティとして上手くやっていくはずだったのに! 本当に騙したのか……!?


(なんでっ、どうしてなんだよ……‼)


 信頼、憎しみ。あらゆる感情が粘性を有してドロドロに入り交じる。

 悲しくて、悔しくて……睨みつけた時、ミリアムが足を上げて頭を踏みつけてきた。


「ぐ、が……っ」

「おさらばね、といきたいところだけど……貰っていくね」


 これから死ぬ奴には必要ないし、と荷物やポケットに手を入れて物色し始めるミリアム。身の回りから財布やアピス族の預金カード、金目になりそうな物が次々と奪われていく。


 金が貰える……そうか。こうやって他人の所持金を盗み、金品を売り捌いて稼いだんだ。簡単に騙せそうな相手を狙って。

 手際が良い。慣れている証だ。



 そして……窃盗に慣れた手が、ダガーにも伸びようとする。



「良いモン持ってるよねー。これはなかなかの売値が付くよ」


 入念に手入れを施した刃面に、口元がにいっと笑う。かなりの金額が出ると予想してやがる。


(ま、待て……!)


 それは……フィーリから贈られたもの。命を落とした彼女が旅立ちの時の為に用意してくれたものだ。

 技術の程をはかる眼は持っていないが、かなりの手間が掛かっている。そして、なにより……フィーリの想いが込められている。


 背中を一押ししてくれた形見。それが、悪意を持つ者の手に渡ろうとしていた。


「じゃあこれはありがたく貰うね~」



 ――誰が、お前にやるものか。



 ゆらめく世界の中で、意識が一つの想いを頼りに覚醒する。


「くっ、手が邪魔で……取れないっ」


 奪われまいと、残った力を右手に集中させる。


 取られてたまるか。奪われてなるものか。

 金は取られても、それだけは……渡さん……!!


「もおー……! もういいっ。こうなったら潰してあげるっ」


 耐えかねて、得物を取った。握り締めたこの手をズタズタにしてまでも奪うつもりらしい。

 掲げて狙いを定めた時――ミリアムが何かを感じ取った。


「あ……?」


 生まれたのは、他者の気配。俺達以外には存在しなかった空間に誰かが割って入る。


 人だ。人がいる。ただし、それは人のような何か(、、)だった。

 全身が黒くて……これは……!



 ――シュヴェルタルだ。



 以前見た特徴と似ている。

 案内所が開示した情報通りの人型。これまでに遭遇したモンスターとは一風変わって姿形が異なる。


 黒っぽい全身はどうやら鎧らしい物に騎士や武士の鎧とは異なり、生物的な見た目。一部覗く肌は彫像のよう。

 目は瞳にあたる部分が見当たらない。生きてる者とは思えない白目だ。


 コイツが……シュヴェルタル……。

 此処には居ないはずじゃなかったのか?


「なに……いつの間に後ろに……」


 肩から垂れた手には既に、情報にあった大振りの剣が握られていた。


 刃がキッと向きを変える。

 肌が粟立ち、強烈な胸騒ぎが起こった。


 避けろ――と心の声が叫ぶ。しかし、それは無残にも反映しなかった。


「ぁぎっ……!?」


 薄闇を断じる斬撃が、ミリアムを凪いだ。


 寸前にミリアムが守りに構えるも――ばきゃり。

 盾替わりとなった彼女の得物(ダブルセイバー)が、たった一振りで砕かれる。頼もしい存在感を放つ大振りの得物が、大小の断片となって散った。


 それだけでは終わらず、さらなる現象が起こる。

 金属のバラバラに崩壊する音に続いて、赤い液体がばっと満開した。


 血だ。血が飛沫となって噴出する。


 悲鳴を上げて取り乱すミリアム。気づいた時には、赤い()が顔から胴体にかけて浮いていた。


 恐ろしく速かった。長身の剣なのに全然目に捉えられなかった。

 なんとも速く、なんとも力強い。しかもそれを片腕で……。


 生物的な鎧っぽい足が緩慢に動き始める。さらなる追い打ちが始まった。


「あぎっ! ぎゃっ……」


 斬る。刺す。斬る。刺す。

 一定のプログラムを施された機械のように、斬撃と刺突を何度も繰り返す。


 残虐的な光景に、シュヴェルタルは無言。沈黙を保ったまま剣を振り、鮮血の花弁を散らし続ける。


 姿を見せた時からそうだが、言葉の一つも発していない。

 殺意も悦楽も感じられず、ただ同じ行動を続ける姿は不気味だ。


「ぎっ! やめっ、ぐぎぁ……っ!」


 命惜しむ声は通じない。剣を振るう動作も止まらない。

 ただひたすらに、ひたすらにミリアムに剣を叩き落とす。叩き落とす。叩き落とす。


 赤の絵具に染められるミリアムはひどく痛々しい。人というより痛めつけられた肉片に見えてしまう。



 逞しい剣を握る腕がゆっくりと上がる。嫌な予感が走った。

 あれを受ければ――死ぬ。そう察知したのはミリアムも同じようで、悲鳴が鼓膜を揺らす。


「助け……て……」


 生へ執着する声が振り絞られ、零れ落ちる。

 その一言に、四肢がドクンと熱を帯びた。



「やめろおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」



 駆ける。鮮血に染まったあの灯火(いのち)へめがけて。

 肉迫し、刃を向ける。俺の存在にシュヴェルタルは気付き、剣を構え……ようとはしなかった。


「ああああぁっ!!」


 手負いの身ながら、全力でシュヴェルタルを退かせようと攻める……が、最低限の動きで躱され、あるいは簡単に受け止められた。


(こんなのって……!)


 制されている……っ。


 さっき『ソードバスター』のスキルを付けたんだぞ。このスキルは剣を持っている相手と戦っている時のみパラメーターが上昇し、相手の攻撃命中率を下げる効果がある。

 だから、こんなにもあっさりと手玉に取られるのはおかしいんだ。


 技量の差がある。それもかなり離れている。

 スキルを身に着けても、その差を埋められない。 


 コイツは……剣の使い手として遥かな高みがある……!


 ただの屍人(リビングデッド)だと思っていた。

 今はその認識が薄れている。このモンスターはまさしく訓練を積み重ねてきた武人(、、)だ。



 こうなったら、魔法で視界を一旦潰して――



「ぁがっ……っ!」


 妙な動きを見せたかと思えば、瞬く間に長剣が鳩尾を貫く。その一撃で、身体を駆らせていた戦意が消失した。

 血が刃を伝って漆黒の面に落ちる。呼吸もヒューヒューで、喉を上った血が息に混じる。


「か……っは……」


 動け、ねえ……っ。

 か、完敗だ。もともと勝てる相手じゃなかった。ミリアムがあっという間に戦闘不能になったのだから、俺の腕じゃ敵うはずもないか。


 しかし、こだわるのは勝ち負けではない。


 背後まで貫通していたるであろう剣が抜けたのを機に、ふらふらになった足取りでミリアムの傍へ。

 血だらけの顔が「嘘……」と疑わんばかりに瞼を剥いて凝視した。


「アンタ、なんで……」

「いいからっ!! ぐ……!!」


 背中が鋭い痛みを帯びる。シュヴェルタルが切っ先を埋めてきたからだ。

 ザクッ、ザクッ、と剣尖が背中を穿つ。重量ある剣は落としただけで致命傷にもなり得る。


 まとめて殺す気か。そうはさせん。


 身を張って、シュヴェルタルの攻撃からミリアムを守る盾となる。一撃も彼女を傷付けやさせない。



 もはや無傷の部分が無いくらい続いた頃。突然止んだかと思えば――――ザクリと。

 後頭部から顔面を貫く鋭い痛みが、思考(、、)を潰した。





「――――っ!」


 意識が復活した。


 辺りは静かで、息遣いが平時より大きく聞こえる。襲撃が嘘の出来事に思えた。

 幻……でもなく、ソーラダイトに蓄積された光の弱り具合が、時の流れを教えてくれる。


 シュヴェルタルは……? アイツは何処へ行った?

 何処にもいない。静かな場は、自分以外の新しい気配を一切生まなかった。


 ヤツは……消えたか。殺したと勘違いして離れたらしい。

 いない事を確認して、血溜まりを形成する肢体へ視線を落とす。


「ひでぇ……」


 ズダボロに痛めつけられたマネキンに見える。生き死に多少慣れていても惨たらしい。人が受けるやられ方ではない。

 具合を確かめるも、無惨な有り様は絶望的観測だけを与えられる。


 十中八九、死んでいる――。


 それが誤ったものであると判明したのは、血垂らす口元に耳を当てた時だった。


「……う、あ…………」


 驚いたことにまだ呼吸をしていた。

 ひどく弱いが息はある。脈も微かな生の鼓動が残っていた。


 生きて……いる……!


 だがシュヴェルタルから受けた傷はひどい。意識も死ぬ手前の状態に近い。

 早く治療を受けないと死んでしまう。


「助ける必要なんてないのにな……」


 シュヴェルタルが現れる前の出来事が、記憶に再現される。


 裏切られた時は相当ショックだった。

 パーティの一員なのに、騙すために近寄ってきた。

 言葉も感情も偽物で、ミリアムにとっては仲間じゃなくて搾取の対象でしかなかった。


 人を騙して、傷付けて、大切な物を奪おうとして。

 報い……そう、これは偶然にも訪れた、悪意に対する仕打ちだ。


 でも、だからって死ぬのは当然ってことにはならん。必然じゃないんだ。

 まだ生きてるのなら、生きてもらわなきゃな。


「フィーリ……」


 かつて目の前で息を引き取った人物が、助けようとして出来なかった命がある。

 避けられない死ではあったが、生きるべき命を喪った。


 だから救う。今度こそ救ってみせる。この命を。


「もう二度とするなよ……って言っても聞こえないか」


 早く村へ戻って人を呼んで、傷を治してもらわなきゃ。

 それだけで済めば良いものを、現実は好い持て成しを与えてくれなかった。


「っ、しまった……」


 四方からぞろぞろ現れる魔性の気配。それはより濃くなっていく。


 最悪にも現れた敵の数は二匹や三匹程度じゃない。見る限り何十匹もいる。数に物を言わせた肉壁に逃げ道を塞がれ、囲まれてしまった。


 周囲は多数のモンスターだらけ。こっちは重傷の怪我人が一人で、救援は望みナシ……。


 なんだ、かなりのピンチじゃねえか。

 こういうの何て言うんだっけ? あ、四面楚歌か。状況も似ている。


 助けてやると決めた時に現れやがって……一人じゃ倒すのは愚か逃げ切る事も難しそうだ。

 諦めてこのまま二人共々食い散らかされるか? 答えはノーだ。


 これは……楽じゃねえなあ。


 悲観してもいいのに、フッと笑える余裕がまだ残っている。

 抜け出すのは簡単じゃないだろうが、関係ない。やり通してみせる、という意志だけ。


 袋に仕舞い込んでいたヤクダマをいくつか口に放り込む。それからスキル『幼体化』でミリアムを幼女くらいほどに小さくする。

 持ちやすくなった身体を肩に担ぎ、群れを一睨(ひとにら)み。

 

「死ぬんじゃねえぞ……!」


 擦り減りゆく命を繋ぎ止める為、群れが塞ぐ出口の方へ走り出す。



 さあ、此処から脱出だ。





皆本(みなもと) 進児(しんじ)

《スキル》

『ソードバスター』

 ・剣使いの相手と戦っている時、自身の《パラメーター1》がアップし、相手の攻撃命中率をダウンさせる。




《アイテム》

『ヤクダマ』

 ・摂取すると《パラメーター1》の能力値が一時的にアップする。ヤクダマの種類によってアップする能力値が変わる。


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