表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界を創って神様になったけど実際は甘くないようです。  作者: ヨルベス
第2章 その魂、奮い立つ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/109

第60話 剣士カルド


 あれから捜し続け……その姿をようやく見つけた。

 青年の姿は、クエスト案内所にあった。


「いた……!」


 奴は案内所の隅っこのテーブルで一人過ごしている。見てる限り誰かとパーティを組んでる様子は無さそうだ。


『よう』


 好機――と思いきや、どこぞの討伐者が先に近付く。同じく彼の能力に惹かれ、パーティに引き入れようという腹づもりだ。


 声を掛けたが、青年は一度も顔を向けない。ひどく興味関心が無さそうだ。

 冷めた双眸は一片の関心を浮かべることなく、わずかに口を動かしてるだけ。何を喋っているかは聞こえないが、状況で察せた。


 苦い表情に変わった男が食い下がり気味に交渉を続ける。だがそれでも同じ結果に終わったらしく、悪態を見せて諦めていった。


 断ったか。他のパーティに入らなかったのはいいが、まともに交渉する気が無いみたいだ。


 昼間に見せてくれたあの技量は相当のモノ。半端な腕の者とパーティを組むのはお断りってとこか。

 そんな自信を持ったお前のステータス、この神眼()で確認させてもらおう。



〔???〕

《パラメーター1》

 体力:55732/55732

 筋力:4457/9999

 耐久:3664/9999

 魔力:3452/9999

 魔耐:2235/9999

 器用:4870/9999

 敏捷:5119/9999


《パラメーター2》

 技巧:472/999

 移動:516/999

 幸運:161/999

 精神:195/999




 つ、つよぉい……。


 一部を除けばフィーリ以上のパラメーターを誇っている。そりゃ強いはずだ。

 やはり欲しい。名前も素性も知らないが、アイツを仲間にしたい。


 だけどなあ……さっきのやり取りを見るに誘うのは難しそうだ。どうやってパーティに入れよう?


「なにやら熱い視線を向けておるのう」

「どひゃっ!?」


 とびきり優秀なステータスに夢中になっていると、ふいに少女の声が発生した。

 明らかに自分に向けられた声に不意打ちを突かれる。ビクリと驚きながら見廻すと、ニヤニヤしながら見上げる者がいた。


「子供か……?」


 話し掛けてきたのは、十代前半ぐらいの少女。

 外套を羽織り、旅の身であることを教える。


 その下には一風変わった服がチラつく。

 妙に凝ってるというか普段じゃ見かけない格好で、討伐者とも一般人のそれと異なっている。貧そ……慎ましいボディラインを敢えて見せているのが挑戦的だった。


「失礼なこと考えていまいか」

「いてっ」


 コツンと、少女の拳が頭に落とされる。シンジはダメージを受けた。

 じゃなくてっ。こんな子が案内所に来て何の用だ? まさかとは思うが、クエストを探しに来たんじゃあるまいな?


「あの男をじっと見つめおって……もしかしてアレかぁ?」

「ンなわけあるかっ。変な目で見るな。断じて違うっ!」


 イタズラ好きの小悪魔のように、くししっと少女は笑う。

 ロリっ娘のくせに妙な目で妙な事をして……将来が心配な方向にませてんなあ。


「じゃあ何というのじゃあ?」

「アイツをパーティに入れたいんだよ」

「ほーほぉー。お主もあの男をパーティに招き入れたいのか」

「かなり腕が立つようだからな。お前、アイツの事知ってるのか?」

「少々な。あれなる者の名は『カルド』。名の通った剣士じゃ」


 カルド……。


「剣の腕は軒並み優秀。閃光のように速い斬撃から【閃傑】と呼ばれておる」

 

 へえ、閃光のように速く斬るから【閃傑】か。実力を根拠に付けられた別名はちょっとカッコいい。

 リージュでその名を聞いたことがある。アイツがそうだったのか。


「名の通り腕は確かなんじゃが……他者との馴れ合いを好まない性格のようでの。常に一人で行動しておる。出身地も不明で誰も素性と過去を知らぬ」


 だからあんな風に一人で……。


 仲間がいないんじゃなくて作らない。誰のパーティにも自ら望んで入らない。

 一人でいるのは昔からああなのか、それとも頻繁な接触を避けたい事情でもあるのか……。


「そうか。で? お嬢ちゃんはアイツのファンだったりすんの?」

「さぁ~ての。通りすがりじゃよ。ただのと・お・り・す・が・り♪」


 などと少女はわざとらしく、そして変なポーズを見せた。

 たぶん本人は可愛げあると思ってんだろうけど、なんじゃこりゃ……。


「そんな事より、お主しゃれておるのう。そのタトゥー(、、、、)は悪くない」


 通りすがりと自称する奇妙な少女が、奇妙な事を口走る。それは細めたままの双瞳と共に、左手に描かれているものを指していた。


「良いタトゥーよな」

「お前……これのこと知ってるのか?」

「さあの。じゃがその上部に描かれた紋様はソール様を表すもの。よほど信心深いのじゃな」


 確かに円環の上の辺りに紋様が一つ刻まれてる。ソールから力を分けてもらった時に一緒に浮かび上がったものだ。

 この紋様がソールを表すものだって? そんな事を何故知ってるんだ?


「それじゃあの♪」

「あっ、おい……」


 子供染みた軽快な足取りで、少女はさっさと案内所を出て行った。

 結局何しに来たんだ……。


「変な子だな………」


 あの少女、不思議な奴だったな。

 討伐者とは思えない風貌。それに神素環紋の存在に気付いていた。

 胡散臭いが、適当に言っている様でもなかった。詳しく訊いてみたかったが、逃げられてしまったな。


 ま、今さら気にしても仕方ない。それよりも目の前の事だ。 

 確か……カルドだったか。彼をどうにか仲間にしよう。


 あの難儀な性格の人物をどう説得するかが問題だが、方法は閃いている。

 所詮は人間。どんな奴だって()を突いていけば上手くいく。カルドだって仲間にできるはずだ。


 どうやら最近手に入れたこのスキルが役に立つ時が来たようだ。

 これを使って説得してみせる。さっそく準備に取り掛かろう。





 準備が整った状態で、カルドの前に立ちはだかる。



 ()の姿で。



(どうだ、この姿はっ!)


 俺は今、異性に性転換している。

 スキル『女体化』を使い、女性に変わったのだ。


 すごいな、これは……。


 俯瞰し、己の肉体をもう一度確認。明らかに変わった身体付きは十分に感嘆を招いた。


 スキルは不思議だ。性別まで変えられるなんて。

 肉体が完全な女性の身体付きになっている。声も女性らしく高くなった。


 まさか女性に変身するとはなあ。

 胸は腫れ物みたいで膨らみがあり、アレが無くなってるから変な感じだが、どこからどう見ても女性に見えるだろう。


 これでカルドを説得する。これなら多少は油断を見せよう。

 女の色気をもって巧みに交渉すればパーティ加入に漕ぎ着けるはず。


 さあ、カルドよ。今からこの姿でお前を仲間にしてやるからな……!


「ねえねえ。隣に座ってもいいかな?」

「…………」


 反応無しかよ……。


「あ、あのぅー」

「勝手にしろ」

「く……っ」


 一度反応してくれたものの、カルドはそれ以上見向きすることは無かった。


 なんだよ、コイツ。すげー話しかけにくいぃ~。

 誰であってもこの調子か。まるで俺らの存在など路傍の石と同じなんだろう。

 一度も相手の顔見ないし、雰囲気が気まずさを通り越して嫌な感じだ。


 頑張れシンジ。この状況に負けるな。

 これもカルドを仲間にするため。そう、仲間にするためなんだ。


「キミ、ここで一人過ごしてるの?」

「………………」

「え、えーと、良い話があるんだけど、私のパーティに入らな――」

「断る」


 言い切る前に断られてしまった。

 返すの速いって。そこははっきり言うんかいっ。


 まだだ。まだ諦めきれないっ。お前がどうしても欲しいんだ……!


「…………」

「あ、あ、ちょっと待って! 話を……!」


 おもむろにカルドが席を立つ。付き合っていられなかったらしい。

 カルドは制止(カムバック)の声に耳を傾けることも足を止めることもなく、そのままクエスト案内所を出ていってしまった。


『へっ、逃げられてやんの』

『バカだなあ。閃傑は誰とも組まないのによぉ』


 せせら笑う声が残された自分を取り囲む。


 逃げられてしまった……。


 説得失敗。他人とつれないのは本当の話。パーティの招待も一筋縄じゃ通じなかった。

 だがこれで終わりじゃない。まだ手段はある。次の作戦だ!






 そこまで遠くに行ってなかったようで、時間を掛けずに案内所の外を歩いているカルドを見つけた。

 先回りし、前方から近づいて行く。この新たな姿で!


「ねえねえ、お兄ちゃんっ」



 幼女シンジ、たぶん八歳ぐらいっ!



 女シンジに続き幼女バージョンのシンジ爆誕。

 今度は性転換に加えて『幼体化』のスキルを加えて装着してみた。


 本当に小さくなったなあ俺。目線が低くてカルドがデカく見える。

 こんなあどけない少女の姿だ。これなら警戒しないだろ。


「……どうした? オレに用か?」


 おお、さっきと反応が違う。凄腕の討伐者も小さな女の子相手じゃ油断を見せてしまうか。

 じゃあその隙にお前をパーティに加入させるっ。くひひっ!


「お兄ちゃんは討伐者の人? お名前を教えてほしいな」

「……カルドだ」

「カルドって言うんだ。カルドお兄ちゃんはどこから来たの? お家はどこ?」

「……とても遠い場所だ。家は森の中にあった」

「そうなんだ。ところでカルドってどう書くの? 綴りを教えて」


 と、予め用意していた紙とペンを渡す。

 最初こそ怪しく感じていたカルドであったが、子供の見た目のおかげか警戒を解いて受け取ってくれた。


「さあ書いて書いて〜」


 ふっふっふ……その紙は契約書。小っちゃい文字で契約事項が書いてある。「○○は以下の事項に従います」とも書かれてある。

 名前を書いた時点で契約が成立。お前は俺のパーティに強制加入することになる!


 カルドの手にあったペンが少しだけ紙(契約書)に近付く。その間が縮んでいくごとに笑ってしまいそうになった。


 ふふ……名前を書け。名前を書け、カルドよ。

 契約書に記して俺の仲間になれえぇぇぇぇ~!


「……もう暗い頃だ。あまり外に長居するものじゃない」

「へ……?」


 あともう少しで契約書に触れそうだったペンが止まる。気づかれたのかと焦ったが、実際は違った。

 時はもう夕方。子供が外に居続けるのはよくないと思ったようだ。


「こんな所にいないで家に帰るんだ」

「いや……名前……」


 真っ当な対応をしてくるカルド。まるで保護者そのものだ。

 無愛想な部分は抜けきれてないが、パーティの加入を断った時とは違う感情(もの)を含んでいた。


 意外だ。冷徹そうなのに、こういう一面があったんだ。


 それ以来カルドは二度と紙に名前を書こうとしなかった。

 二度目の作戦失敗。子供の姿が逆にこの結果を招くとは思わなかった。


(ど、どうしよ……っ)


 次の手が無くて困っていた俺を、カルドが優しく手を掴んでくる。


「家はどこだ? 送ってやる」

「あ、あの……」

「案内を頼む」





「はーい。どちら様ですか?」


 カルドに連れられ、家に到着。そう、テレサの家だ。


 先に戻っていたテレサが戸を開け応じるなり「あ……」と。

 自分を助けた人物が何の用だろうと疑問を抱えている様子。それに構わずカルドが話を切り出した。


「この家の者か? 家族を送りにきた」

「え? え?」

「あまり目を離すな。夜は危険が多い。姉ならしっかり面倒を見ろ」

「は、はいぃ……?」


 言ってる事に理解ができないテレサ。至極当然のリアクションだ。

 だって連れてきた少女……つまりその姿を被った俺は、テレサから見れば妹でも村の子供でもない、ただの知らない女の子なのだから。


「夕暮れ時は家に帰って過ごせ。家族を心配させるな」


 冷えた雰囲気からは想像付かない優しい声音が降り掛かる。

 結局断ることもしない、というか返す言葉が思い付かないテレサに俺を預け、カルドは……夕闇の色の降りる村の中へ発っていった。


「キュー?」


 何とも言えない微妙な空気が漂う中、レトだけが姿の変わった俺を突いてくる。

 カルド兄ちゃん、優しかったよ……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ