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異世界を創って神様になったけど実際は甘くないようです。  作者: ヨルベス
第3章 水の街

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第100話 耳かきトラップ


「ピエール、可愛かったなあ……」


 ぽつりとアトリエに呟き。愛しい相手を想う乙女のそれでピエールを案じる。


 感動の再会を果たした彼の話によると、フィオーレ家はロザリーヌが居なくなったことで騒ぎに発展したらしく婚礼の儀はいったん中止。新郎新婦の両家とも捜索をしているらしい。フランヴェオが慌ただしくしていたのは、その件なのだろう。


 家の者が捜しているのならピエールに会ったのは都合が悪いはず……だが、驚いたことに弟は姉の行方を家に報告しないと言いだした。


 彼じょ……いや、彼は姉の婚姻に反対していた。


 バルガーネは結婚相手に相応しくない、とピエールは美しい顔貌に強い意思を宿して断言。家の取り決めには逆らえないけれど結婚はどうにかさせたくないと、見逃してくれるようだ。


 本当に姉思いのいい子だ。お前の判断は間違っちゃいない。


『姉さまは……これからどうするのです?』


 姉の身を案じるピエール。婚姻を避けているとしても行く宛が無いのでは心配していたが、ロザリーヌには従僕(特に俺)もレトもいる。従僕の扱いは納得せんが。


 杞憂を払拭してもらったピエールは俺達に宝石みたく綺麗な双眸を移し、信頼に足る者か見極め……いや、俺らを疑う余地は無かった。


『姉さまを守ってくださってありがとうございます。これからも姉さまをお守りください』


 満面の笑顔が、最高のご褒美だった。


 礼儀正しくて、傲慢な言動が無くて、貴賤の差を感じさせない。そして、あの愛くるしい笑顔。それはもう感極まった。抱き締めたかった。

 抱き締めようとして、危険を感じたロザリーヌに鉄拳をもって阻止された。


 あの後、ピエールを貴族街の入り口近くまで送って別れた。名残惜しさに後ろ髪を引かれて。


 ああ、もっかい会いてえ会いてえ。ピエールにまた会いてえなー。

 可能ならクソお嬢様と交換して俺のとこに居てほしかった。





 ……とまあ、そこまでは良いのだが。




「美味しくありませんわっ!! 何ですのこのお茶はっ!」


 カップがロザリーヌの手で卓上に置かれた。


 不満の評がけたたましく飛ぶ。用意してもらった茶が口に合わなかったらしい。


 茶を持て成してもらっているのにとことんワガママだな。このお茶、フィンチがご近所さんから貰って俺が淹れたんですよ。そこそこ良い茶葉を使ってるはずなんだが、こいつは……。


「なーにブー垂れてんだよ。黙って飲めや」

「なっ、なんですってぇ! 気の利かない従僕がっ……! ワタクシは農園で育った茶葉を使用して飲んでいますのよっ!!」

「いや、知らんが」

「きぃーっ!! ワタクシはフィオーレ家の娘ですのよっ! 持て成しは丁重になさいっ!!」

「はいはい」


 適当に返し、怒りをさらなる域へ昂らせる。しかし、その怒りが堕ちた令嬢に正当な待遇をもたらすことはない。暫くは庶民と同じ生活……じゃなくて元の生活に戻れる保証も無いんだったな。


「ごめんなさいねえ、お口に合わなくて。今はこれでご容赦してくださいねえ」


 安物の茶を飲まされプンプンに煙を飛ばす令嬢を、フィンチが宥めにかかる。

 そんな接待は良くない。事情が事情なだけに目上扱いはノーだ。


「優しくしなくていいぞ。下手に出ればつけ上がるだけだ。客扱いするなよ」

「いいの。フィオーレ家のご令嬢が来たんですもの。滞在してる今のうちに私の芸術品を鑑定してもらいたいのよ。良い機会でしょう?」


 お嬢様の傲慢な態度にフィンチは眉をいっさい顰めず、先を見据えた期待を抱いていた。


 貴族がすぐそこにいる。芸術家にとっちゃまたとないチャンスか。

 評価してもらえばロザリーヌを通じてフィンチの腕が貴族に知れ渡ることになる。だがコネクションの相手がこのワガママお嬢様でいいのか?


「まあ、ワタクシに()てもらいたかったの?」

「はぁいっ! 如何でしょう?」

「そうですわねえ……」


 人選ミス等の不安要素など芸術家には一抹もなく交渉は進む。

 ロザリーヌが、フィンチの創作したモノが置かれた部屋を一瞥する。鑑賞は初めてではないが、品評はまだ貰っていない。


 芸術の美醜を見分ける目は備わっているのだろう。フィオーレの屋敷には芸術品がたくさん飾ってあった。最低でも数十万の価値はありそうなモノがだ。


「まあ……いずれも瞠るものがあります。あの像も……素晴らしい出来ですわ」

「本当!?」

「お父様も気に入るでしょうね。実際に鑑てもらわなければ分かりませんが」


 飽きるほどに芸術品を見て肥えてきた眼は、フィンチの腕を確かなものとして認めた。

 お世辞のない、実力を裏打ちする評価に、研鑽を積み重ねた芸術家は喜色大満開させる。そこからロザリーヌに詰め寄って、


「ご、御当主に取り次いでもらえるのかしら?」

「いいですわよぉ。お父様に取り次いであげますわ。このワタクシがっ!」

「もしもーし? そのフィオーレから逃げてきたんだからどうやって会うんだ?」

「あ……」

「そ、そうね。そういう状況だったのよね。残念だわ……」


 盛り上がったところに現実を突きつけられ、フィンチが肩を落とした。

 とはいえ実力はある程度保証されている。そっちの話は別の機会に勝手にしてもらうとして……。


「でも褒められて悪い気はしないねえ。脱いだ甲斐があるもんだ」

「はい? どうして貴方が気持ち悪い笑顔をしているんですの?」 

「あの像な、俺がモデルなんだぜ」

「ぶっ!」


 言ってすぐに、ロザリーヌが渋々啜っていた茶を吹き撒いた。

 うえ……顔にかかって濡れちゃったよ、きったねえなあ。


「あ、あれが……貴方ですって!?」

「そうだ。肌晒して頑張ったんだぜぇ。あんなところやこんなところをじっくり見られてな。きゃっ恥ずかしいっ」

「うぅっ、うっ……あれがブ男を素体(もと)にしているなんて。きっ、気分が悪くなりましたわ……っ」

「は? 気分が悪くなる要素がどこにある? あまりのクオリティの高さに感動して喜んで咽び泣け」

「咽び泣くものですかっ!!」

「私が作った作品(もの)なのに……」

 

 フィンチが傍観しながら呟いた気がしたが、作者そっちのけで炎は燃え上がる。


「あーあ、傷付いたわー。神様のハートがガラスでバリンバリンよ」

「貴方でなければ素直に褒められたのに……ああ、うぅっ」


 はーん? 手のひら返してそんな反応しますか、そーですか。


「おい、それ以上そんな態度を続けると、お前の弟で……」

「ピエールがなんですの?」

「妄想をする」

「!?」

「ふっふっふ……妄想だぞ妄想。俺の脳内でお前の弟とあんなことやこんなことをするんだぞ」

「あんなことやこんなこと……?」

「手を繋いだりぃ、一緒に歩いたりぃ、ほっぺをプニプニしたりぃ……」

「ひぃっ!?」

「お風呂にも一緒に入ってやるからなっ!!」

「ひいいいいぃぃぃぃっ!!」


 ぞわわーっと珠肌が粟立つ。ロザリーヌの顔が青ざめるもキッと睨んできた。


「なっ、なんて趣味の悪い……させませんっ、絶対にピエールに近付かせませんわ!! 絶対にっ!!」

「ほほう?」


 それはそれは、楽しみが増えたもんだなあ。

 いつかまた会いに行ってやる。ぬっふふふ!



「お、お兄ちゃん……」


 どこか痛々しさのある、振り絞るような呼び掛けに意識を引っ張られた。


 足を運んできたのは──ビィビィだ。


 付き添っていたテレサも同伴しているが、重い空気に包まれている。それからロザリーヌが「テレーゼ!」と目を輝かせてうるさい。


 俺らがアトリエに籠もっていた理由はビィビィにあった。

 ピエールに絡んできた男達に手を挙げたことで俺らは様々な懸念から一旦アトリエに帰ることに。今日はもう外に出るのは止めておこう。


 暴走した事実をビィビィは重く受け止めている。幾分か落ち着いてきたようだが、未だ不安に苛まれている顔色だ。


「わりぃな。面倒見てもらって」

「元気付けにレトさんに頑張ってもらって慰めてみたのですが……」


 ん? レトで?


「お人形さんの代わりになってもらったのですけど、レトさんがずっと怖い顔をするので駄目でした」

「お、おう、そうか……」


 その時の光景はさぞシュールに映えたろうな。

 四肢をフリフリ操られてのテレサの芝居。だが怖い顔したレトを見せられてもビィビィの気分が優れるはずもない。


 うーん、どうしたものか。まだ明るい時間帯だから容易に外を歩けないし……。


「ねえ、そこのあなた」


 頭を悩ませている時に、よりにもよってロザリーヌが話しかける。ビィビィがビクッと震えた。


「な、なあに?」

「来なさい。あなたにはまだ用がお済みになっていませんでしたわ」

「いじめんじゃねえぞ」

「おだまりっ! さあ、こちらに来なさいな」

「う、うん……」


 華奢な手招きに誘われ、ビィビィがおどおどしながら近付く。こんな時にロザリーヌはどうする気だ?


「き、来たよ……」


 自信無さげに目の前に足を運んだ彼女を、ロザリーヌは──なんと自前の豊胸に寄せて抱擁した。


 んんんっ? これは何事だあ……?


「お、お姉ちゃん?」

「あなたには感謝の礼を言っておりませんでしたわ」


 と言いながらもビクッ、ビクッと断続的な拒絶の痙攣。しかし、嫌悪よりも優先するものがあったのかロザリーヌは耐えて抱き締める。そして、


「ありがとう。あなたが救ってくれたおかげでピエールは酷い目に遭わずに済みましたわ」

「でもビィビィは……」

「いいんですのよ。あなたは悪くありませんわ。ワタクシの弟を守ってくれたのですから」


 愛する家族であるピエールを救った恩への感謝を、ロザリーヌは自身の腕に抱いた小さな身体に沁みこませる。直接的には何もしていないが結果的には弟を救った。一番の貢献者に律儀にも礼を尽くしていた。


「あ……」


 ビィビィはひどく目を丸くしている。まさかこうなるとは思わなかったから。

 俺らも意外過ぎる行動に驚いていた。


 これは……なんだ、ロザリーヌもやるじゃねえか。朝は嫌がっていたくせにハグなんかしてよお。

 ははっ、ビィビィの表情(カオ)を見てみろ。涙を流してる。泣いているが、それは嬉し涙。嫌な気分が解れて表情が明るくなってやがる。


「っ……綺麗なお姉ちゃん、ありがとう!!」

「いっ!! い゙いいいぃぃぃぃ〜〜!!」


 嬉しさで感極まり、ぎゅーっと抱き締め返す。それにロザリーヌは毛を逆立てた。

 いいぞ。お前がくれた愛情表現のお返しだ。そのまま堪えろ堪えろ。


「あら、良かったじゃない。お姉ちゃんにありがとうって言ってもらえて」

「うんっ!」

「ねっ、ビィビィ。お願いがあるんだけど」


 感謝のハグが行われている最中、フィンチが話を持ってくる。なあに、とビィビィが訊くと、


「絵のモデルになってみない?」

「もでる……?」

「絵画ですか。それは素敵な話ですね」


 次は絵か。いいねえ。フィンチも面白いこと思いつくなあ。モデルがビィビィとはなあ。


「よかったじゃん。お前が絵になるんだぜ」

「ビィビィが絵になるの?」

「そうよ。じっとしなきゃいけないんだけど手間を取らせないように努力するわ」

「だそうだ。できるか?」

「……うん、いいよ」


 間を挟んで首が縦に振られる。興味はあったようだ。

 ビィビィの絵か。どんな絵になるか見てみたくはある。暇だし作業を見ていこうかな。


「ではその間にシンジさんは私とお話がありますので離席しましょうね」


 とはならず、テレサが唐突にそんな事を言い出した。


「へ? 話?」

「一緒に来てください」

「ん? おう……」


 よく分からないまま──ぽつんとロザリーヌは一人で放っておかれる形に──退席するテレサの後を追って歩く。

 二階まで行き、部屋へ。話とは何だろうか?


「話ってなんだ? 二人じゃないとダメな話なのか?」


 尋ねるとテレサは……ベッドに腰を下ろす。ぽんぽんと太腿を軽く叩いた。


「どうぞ」


 謎だったテレサの行動の意味がはっきりと解った。解っていてもなお現実を疑った。


 こ、これは、この構えは、あの膝枕っすか!?

 まさか膝枕してもらえるなんて! 俺にも美少女の膝枕イベントが来たあぁぁぁぁっ!!


「いいの!?」

「はい、遠慮なく。耳かき、してあげますよ」

「み、耳かきぃ!? 耳かきもしてくれんのかよっ!」


 やった! やったあ! 神様はとても喜んでおります。

 膝枕に耳かき! こんな可愛い美少女相手に耳かきしてもらえるとは有り難い。感謝感激雨あられーってな。


「是非ともお願いしますっ!」


 笑顔で迎えられ、歓喜しながらテレサの大腿部(ふともも)に頭を預ける。いやー心地良い感触ですねー。


「ほぉうっ!?」


 耳かきタイムが始まる。せっせと耳かきが動き耳の穴がほじくられる。

 なんて気持ちのいい。力加減はちょうど良く、労りさえある。音も触感も心地良い。テレサには耳かきの才能があったんだ。


「おー、いいよお。上手じゃーん」

「ありがとうございます。それでですね、シンジさん……」

「ん?」

「変装してフィオーレさんのお屋敷に向かった後、何があったのか……とってもとっても知りたいのですが、話してくれますか?」

「はえ……?」


 幸せいっぱいのタイムは長く続かなかった。


「うーふーふーふー」

「あのー、テレサさーん?」

「私、知りたいです」


 優しく訊かれているのに声音が冷たく刺々しい。


 こ、この感じはっ、この口調は……!!


 瞬間、テレサの目的を悟った。

 これは耳かきという餌で釣った罠であり尋問だ。俺はその罠に嵌まったのだ。


 どうやらフィオーレ邸の行った時の話を詳しく知りたいようだが……迂闊に喋っちゃいけないような気がしてならない。


「教えてくれますよねえ?」

「んーーーーーー……話すほど面白い話はないヨ?」

「そんなことはありませんよ。シンジさんからフィオーレさんの弟さんと同じ匂いがしましたから」

「!?」


 に、匂いが!? ピエールの匂いが判るのか!? 色々とおかしいだろっ! テレサが怖えよっ! 


「あの子のだったのですね。では、もう一方の匂いは誰なのでしょうね? とっても知りたいのでお屋敷での事話してください。それまで逃がしませんよ」

「あ、あはは。逃がさないって物騒ダナー」

「話してくれないと私、何をするか分かりません。耳の穴が開いちゃうかもしれませんよぉ。手元が狂わないようじっとしていてくださいね」


 そっと顔が近付く。濃くなった陰影がテレサを不気味なものへ変えた。


 あ、ああっ……に、逃げられない。耳が人質にっ! 耳質にっ!


「あぎっ!?」

「手ごたえが……あ、大きな耳垢が取れました。よく聞こえるようになったんじゃないですか?」

「ひっ、ひいぃぃぃぃ。あひっ」


 クンッと首の向きを変えられた。

 真上を向いたところでストップし、見下ろすテレサと視線が重なる。


 な、なんで? 顔の向きを変えて……?


 その理由は、反対側の耳にも侵入した感触が教えてくれた。


「こっちも入れてあげますね」

「なっ……両方!?」


 反対側の耳穴にも耳かきがインンンンッ!!

 両耳同時に耳かき。これは予想外だ。


「おおぉ、おぉ……」


 ほんとに上手いな。穴を直接見ていないのに二本の耳かきが正確に両耳の中を掻いてくれている。


「こぉーり、こぉーり、こぉーり……」


 耳かきに合わせて甘い声が落とされる。

 囁くように優しく、ただ怖くもある声が、快感を倍増させる。両耳から生まれる快感の波濤は理性を奪っていく。


 持ちこたえられない……うっ、ううっ……うぐあぁぁぁぁっ!!

 ダブル耳かきの舞いがっ!! うごご……いいっ!! ぎもでぃいいよおっ!!


「あっ、あっ、あっ、あっ」

「正直に言ってくださいねえ〜?」

「あっ、あっ……ね、念能力の集大成、それは強化系、変化系……」

「違います。誤魔化さないでください」


 超絶な耳かきテクに堕ちた俺は、洗いざらい打ち明けてしまった。




「――という事でして」

「はあ。シンジさんはまったく……まったく!」

「いでぇ!!」


 失望の溜息の後、掌底がぽんっと顔に落とされた。それも一度だけでなく。

 怒っている。ロザリーヌの為に入れ替わりをして、バルガーネのセクハラに耐えてやり過ごしたのに、いったい何が気に食わなかったんだろうか。


「やっと、分かりました。もう一つ分の匂いはっ、フィオーレさんのお母さんだったんですねっ」

「いでっ! テレサさん、テレサさんっ。俺の顔は●ンキーコンガではなくて……っ」

「めっ!」

「ぶべぇっ!!」


 強めの掌底が一発。それを最後にテレサの手が折檻が止まった。


「はい、これで終わりです。聞きたいことは聞きましたし、もう許してあげます」

「そ、そう? そいつはよかった」


 尋問を伴った耳かきタイムは終了。テレサの中で気持ちの整理が付いたらしい。何を許したのかは分からないが。

 耳がすごくスッキリしている。テレサに耳かきしてもらった分ありがたみもある。またいつか頼もうかな。


「シンジさん、また一つお尋ねしたいんですが」

「な、なななんだ?」


 耳かき(さっき)の事もあり自然反射で身構えてしまった。

 テレサの話は予想を外れ、


「私達は旅をしていますね? 大精神(かみさま)を助けに……今はこの街に滞在していて、アプスさんを助ける為にビィビィちゃんのお友達を捜しているのですよね?」

「うん、まあそうだけど?」


 洞窟に居たあのデカいのを何とかするにはビィビィが必要だ。だからビィビィの頼みを果たす必要がある。


「そうですよね……」

「なんで今更訊いたんだ?」

「その、ビィビィちゃんの事ですけど……」

「どうかしたか?」


 再確認したテレサは何故か表情を曇らせていた。

 曇っている理由を、俺は次のテレサの言葉で知る事になる。




「何もかも終わったら──お別れ、するのですか?」



 ピクリと反応して、そこから……口を噤んだまま呆然としていた。


「あ──」


 お別れ? ビィビィと?


 いつかは来ることだ。ごく当たり前の展開が遠からず約束されている。旅の足を止められないから。


 でも……モンスターを捜して、アプスを助けて、それで……終わり? 終わりでいいのか?


 ビィビィのことは放って街を離れる? 次の場所を目指したらビィビィはその後どうする?

 フィンチに任せる? それで解決? いや、フィンチに責任を放り投げてどうする? 本当にそれでいいのか?


 じゃあ連れていく? テレサのように旅の供にして? 

 ダメだ、違う。連れて行くのは解決になってない。ビィビィが望んだとしてもだ。


(それは……それは……)


 言葉にすらならなかった。

 どう答えればいいのか、その時が来たらどうすればいいのか。

 分かっていたようで何も考えちゃいない自分がいた。


 テレサが俺を見ている。答えを待っているけれど、迷いがあることも察している。


「私、ビィビィちゃんがちょっと心配です……」


 彼女から投げかけた言葉が重石となって降りかかった。






〔マルタナ・テレーゼ〕

《スキル》

『キーンセンス(シンジ)』

 ・シンジに対し感覚を鋭くさせることができる。

  [着脱不可]


  

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