第1話 異世界を創りたい
ファンタジー。それは人間が抱く幻想。
例えばある日突然、異世界に転送されるとか、特殊な能力を持つとか、可愛い女の子と運命の出会いを果たすとか個性豊かな仲間達とパーティを組んだりとか、強力な魔法を操ってみるとか、武器を持ってモンスターと戦うとか、そしてそして可愛い女の子達に囲まれてハーレムになったりとかハーレムになったりとか。
そんな、時の若者達が紡ぎ出す憧憬、イマジネーション。
抱かずにはいられない俺達の、もう一つの可能性。或いは希望を冠する情景。
ファンタジー。それは現実に存在しえない虚構。
例えばある日突然、異世界に転送されることはなく。
特殊な能力に目覚めることはなく。
可愛い女の子と運命の出会いを果たすことはなく。
個性豊かな仲間達とパーティを組むことはなく。
魔法なんてものはなく。
武器を持ってモンスターと戦うことはなく。
そして……可愛い女の子達に囲まれることはあり得ない。
そんな、時の若者達が紡ぎ出す妄想、デリュージョン。
摂取せずにはいられない俺達の、脳内麻薬。或いは希望を偽る現実逃避。
現実にファンタジーは存在しない。
……だからこそ、俺は願う。
「皆本進児よ。お主の願いを一つだけ叶えよう」
ファンタジーが無ければ創ればいい。
存在しないのなら一から組み立てればいい。
全ては頭の中にあるから。
「――異世界を、創りたい」
ファンタジー。それは人が生み出す、希望の新世界。