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ファンキー!ブンカサイ!

ラッスン…げふんげふん。

 …


 僕の名前は早良和輝。福崗県立二階堂高校に通う二年生です。僕は新撰部という一風変わった部活動の部長で、なんやかんやしています。毎年の恒例行事である文化祭で、キャバクラをやることになった僕たち。

 どうすんの!?どうなっちゃうの!?リッスントゥマイハート、ルッキンフォーユアドリーム!?はい…テンションが迷子。


 パン!パン!


 上空に打ち上げられる空砲。

 いよいよ文化祭本番、一日目の土曜日です!毎朝通る校門にはピンク色のアーチが飾られ、とても華やかな雰囲気!校庭では主に体育系の部活動がテントを張って露店を、文化系の部活動は教室や体育館で様々な催しを開催中でございます!空は快晴!お客さんの来場も少なくない!最も稼いだ部活動には十万円という賞金が出るので、僕ら新撰部も頑張って優勝を目指すぞ!


「さて、いよいよクラブ『(まこと)』が開店するわけだが」


 屋上で最後の打ち合わせ。金髪オールバックの同級生、黒崎健吾くんがそう言いました。

 誠…?いつの間にか勝手に名前つけたんだ…新撰組の「誠」の文字から取ったのかな?


「こ、高級クラブみたいだね」


「昨日徹夜で二秒で考えたからな」


 どっち!?


「…そ、そっか!よし、それじゃみんな頑張ろう!」


「まずは客引きしないとな。和輝、りさっくま、行くぞ」


「へっ?」


 お客さんをひたすら待つものだとばかり思っていました。確かに、キャッチって言うのかな?お店へ誘う役割の人もいますね。


 他のみんなを留守番に残して、僕たち三人は露店が並んでいるグラウンドへとやってきました。黒崎くんがりさっくまと呼んだのは、この二階堂高校いちのアイドル、久留米理沙さんだ。とにかくむちゃくちゃ可愛いので、キャバクラをするに当たって彼女の存在は大きい。


「でも、客引きってどうするの?」


「簡単だ。数をあたるだけだよ。…っと、すいません!お客さん、飲み屋さんお探しじゃないですか?」


 おぉっと、本当にいきなり知らない男の人に声かけちゃったよ!すごいな…


「飲み屋?文化祭じゃないの?」


 黒崎くんが声をかけたのは二人組の若い男性。大学生くらいかな?服も髪型もおしゃれで、少し遊んでそうな印象を受けます。


「文化祭だからこそ!現役の女子高生達と楽しめる場を提供するんですよ!ほら、こちらウチの看板娘のりさっくまです」


「ほぇ?あたし?こんちはー。お店で待ってるよっ!」


 ここで久留米さんを出すか!なるほどなるほど。


「へー、可愛いじゃん。面白そうだし、行く?」


「そうだなぁ。値段が気になるよね」


 なんと、二人が相談をし始めました!興味を持たせるってなかなか難しいはずなんだが!


「セットが三十分で短いんですけど、お一人様千円ですよ!飲み物は別途千円です。今さっき開けたばかりなんで、マンツーマンで女の子二人つけますよ。あと、もし店が混んできたら延長はご遠慮願います。大丈夫ですか?」


「悪くないね。それじゃあ行こうかな」


「あざっす!お二人様ご案内ー!」


 早っ!流れるような客引きだ!お客さんの方も、やはりと言うべきか、飲み遊び慣れてるようですね。会話からなんとなく分かります。


 二人を先導しながらすぐさま携帯を取り出し、黒崎くんはさらに仕事を一つこなす。


「あ、翔平か?お二人様、今から通すから出迎えにキャスト並ばせとけ」


 パーフェクトぅ!!あまりにも見事な客引きに、近くで見ていた別の男性二人組まで勝手に僕らの後ろをついてきちゃってます。


「お二人様、ご来店でーす!」


屋上の扉を開き、黒崎くんが声を張る。


「「いらっしゃいませ!」」


 あぁん!やっぱ何度聞いても良いねぇ!お客さんも上機嫌だ。


「へー。テラス席なんだな。高校生らしいよ」


「ありがとうございます。和輝、席にご案内しろ」


「あ、うん!こちらへどうぞ!」


 こうしてすぐに僕たちのキャバクラはほぼ満席状態になり、その後いつの間にか噂が広まったのか、二時間待ちの大行列が出来てしまうほどの大盛況となりました。



「いらっしゃいませ…はっ!?」


 ゴゴゴゴ…!


 てんやわんやの店内に、異様なまでの覇気を放つ大男が一人現れる。


「ここか…健吾の店は…」


 お、お兄様だぁぁぁ!

 黒崎くんのお兄様の基本スペック。世紀末覇者。デカい。怖い。


「あ…えっと…」


「制服姿の女子高生の尻を叩けるのはこの店か?」


 お引き取りください。


「あ!?兄者!?何しに来たんだよ!帰れよ!」


 接客中だった黒崎くんも、思わぬ人物の登場に飛んできた。頑張れ!君が追い返せないと他の誰にも出来ないよ!

 店内のキャストやお客さん達にも不穏な空気が流れ始める。そりゃ、いきなりあんなスーパーサイヤ人みたいな御方が来られたら、誰だってビビってしまいますよ…


「なんだ、僕は客だぞ。丁重にはからうが良い」


「うるせー!邪魔だから帰れ!」


「…」


 あぁっ!お兄様がプルプルしてる!デュアルショックかな?


「ぬぅん!」


 大きな拳が黒崎くんに襲いかかる!この兄弟は言葉では決して通じ合えないのだ!


「甘い!」


 そう来ると予測していた黒崎くんが右にそれをかわす!


「なにっ!?」


「食らえ!あたぁ!」


 黒崎くんの反撃がお兄様の鳩尾にめり込んだぁっ!


「ば…バカなっ…!がはぁっ!」


 お兄様が片膝を地面につき、血を吐いた。効いてる効いてる!


「ふ…ふふ…ふははははは!」


 立ち上がった!?そんなバカな!


「くっ…!とっととくたばれよ!化け物が!」


「貴様の拳では死なん!」


 ん?お兄様が屋上のフェンスによじ登ってます。まさか…


「さらばだ!ケンシロウ!」


 えぇぇぇ!?…と、飛び降りちゃいましたけど…?

 さりげにキャラが入れ替わってるが、原作を忠実に再現されました。お見事です。


「い…以上、悪漢と戦うボーイさんの余興でした!」


 黒崎くん!?無理がありすぎるっ!


「なんだ、余興かよ」


「びっくりしたー。下にネットでも張ってるんだな」


 いやいやいやいや!

 …お客さん達が純粋すぎて僕は泣いた。



 ガシャァン!


 勢いよく扉が鳴る。今度は何ですか!息もつかせぬタイミングでまた別のトラブルがっ!?


「ゆ…輸血を…」


 ぎゃぁぁぁ!血みどろ!

 お兄様が戻ってきたのかと思ったけど、僕の担任の門司先生じゃないですか!また誰かに殴られたの!?


「あん?もじぞー?客か?ふんだくってやるか」


 絶対違うよ!?衛生兵!衛生兵!重傷者が一名!直ちに輸血の必要有り!


「あらあら、またですか。門司先生ったら」


 輸血液を手にした保健の先生が座り、仰向けに倒れている門司先生の頭を膝の上に乗せて高くした。こっ…これはっ!

 HIZAMAKURAだぁぁっ!!

 死ぬほど門司先生と場所を代わりたい。あ、でもあんなに血を出すのは嫌です。


「だ…男子生徒と…」


「男子生徒と?」


「手がぶつかって…こうなりました…」


 知らねーよ。



「ははは!一時はどうなることかと思ったよ!あ、早良!ビール追加な」


「あ、はい。少々お待ち下さい」


 回復した門司先生。酒まで頼んで席でくつろいでやがります。もちろん保健の先生をご指名で。


「いやー、ここは楽しいなぁ!まさに職場の中に突如現れた秘密の花園だ!」


「まぁ門司先生、お強いですね。明日も開店しますし、来ていただけるならボトルでも入れますか?」


「入れます!一番高いやつ!」


 保健の先生、超絶ファインプレー!完全にカモにされちゃってますね、ウチの担任…


「和輝、店の回転率上げるぞ。もじぞーにチェック出せ」


「あ、うん」


 黒崎くんから伝票を受け取って、客席の門司先生に渡します。


「門司先生、そろそろお時間です」


「そうか、ではまた明日でなおし…八万円!?嘘だろ!?」


 うっわ、ざまぁ。保健の先生が僕にどや顔です。思わず親指立てちゃいました。号泣しながらカードを切る門司先生を尻目に、次なるお客さんをどんどん入店させていきます。後ろ、詰まってますから!

 しかし、カードリーダーまで準備するとは、大牟田くん恐るべし。それほどまでの太い客が現れるとは思ってもなかったし。…ウチの担任なんですけどね。


「いらっしゃいませ!」


「よう!遊びに来たぜ!」


 ん…?この人達は…四人組の若い男の人達。恐らく僕らと同年代だ。黒崎くんに手を振っているから、友達かな?知り合いが多くて助かります…売上的に。


「なんだ。来たのか、てめーら。酒は出さねーぞ」


「おめーが自分から宣伝してきたんだろうが、健吾」


「大人しくしてろよ?あと、禁煙だからな!」


「へいへい」


 あっ!思い出したぞ!黒崎くんとやり取りしているリーゼントの人。暴走族のメンバーだ!

バイクも無いし、特攻服じゃなく私服なので気がつかなかったよ。少し心配な気はするけど、黒崎くんと仲違いしたわけじゃないとは聞いてるし、今のところ問題はないかな。


「酒が飲めねーのかぁ。ま、いいや!兄ちゃん、コーラ四つな!」


「は、はい!」


 もちろん見た目は怖いしガラも悪いですが、きちんとルールを守ってくれていますね!未成年の飲酒は法律で禁止されています!それに、先に恐怖の塊みたいな御方と遭遇したあとなのでかわいいもんですわ。


「おせーぞ!何やってんだ!ぶん殴るぞ!」


「す、すいません!」


 ひぃぃぃ!?前言撤回!充分怖いよこの人達も!


「りさっくまだよぉ!」


「うきはです。よろしくお願いします…」


「おっ!マジで可愛いじゃん!健吾がごり押しするだけの事はあるな!」


 ふー…女の子の登場でなんとか大人しくしていただけました。かわいいは正義。これは地球上すべてにおいての決定事項ですから!



 時刻は五時に近づき、間もなく閉店となります。申し訳ないけど新規のお客さんはお断りして、店内にいるお客さんが帰ったら今日の営業はおしまいです。


「よう、健吾。ちょっといいか」


 暴走族の人が席に黒崎くんを呼びつけた。他のテーブルの片付けをしながら、それに耳を傾ける僕。


「なんだ。不満でもありましたかね、お客さん」


「いや、最高だ。女の子もみんな可愛いしな!この、りさっくまと番号交換したぜ!明日も来ていいよな?」


「来てくま来てくまぁ」


 おぉ!こっちまで嬉しくなっちゃいますね!だが番号交換は許さない。


「べっ、別にまた来てくれだなんて言わねーからなっ!好きにしろよ!バカ!ボケナス!オサム!」


「えっ?お客様の名字ってバカ、ボケナスっておっしゃるんですか?」


 あの…?うきは…?


 そんなこんなで、僕らの文化祭、一日目は終了しました。



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