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ファンタスティック!ブンカサイ!

ブンカサイってカタカナで書くと、サイの仲間かな?って思った。今。

 …


 こんにちは。僕の名前は早良和輝。福崗県立二階堂高校に通う、二年生です。スペックは丸メガネに坊ちゃん刈りというイケイケのスタイルで、趣味はゲームとアニメを少々。所属している部活動は新撰部。個性豊かな仲間たちと切磋琢磨しながら学校生活を送っております。


 いやしかし、すっかり梅雨ですね。教室の中はジメジメむしむし。今どきエアコンもついてない教室なんて…これはもう暴力ですよ!パワハラだ!非国民扱いだ!我が国の電化製品は世界一のはずなのに、それを使わないとはどういうおつもりか!


「よし、早良!この問いに答えろ」


「はい!?」


 うわ…全然授業聞いてませんでした…担任の門司先生の視線が、うわの空だった僕にロックオンしちゃったわけですね。


「先生、僕からも質問いいですか?」


「どうした」


 ここは話題を逸らして逃げるしかない!


「空調設備がないせいか、体調が優れません。授業にも集中できなくて…エアコンはつかないんですか」


「あーね」


 ん…?あれ、それだけ!?


「和輝ぃ、わからないならわからないって言えよ!男らしくねーぞ!」


 隣に座るクラスメート、金髪オールバックの強面な生徒、黒崎健吾くんがそう言った。


 なんだとぉ!この…ごもっともです。


「すいません…わかりません」


「なんだ?廊下に立っとくか?ん?」


「昭和…」


「立っとけ!」


 しまった。変なツッコミ入れてしまいました。門司先生、顔真っ赤です。


「ちなみに回答は『昭和』が正解だ!」


 奇跡じゃね!?そしてなぜ正解ならば立たせるのか!



 放課後。部活動の時間となりました。


「昭和…」


「あ、あたしもやろ。昭和…」


 部活メイトで同じクラスでもある黒崎くん、久留米さんによる『早良和輝モノマネ大会』が始まっていますね…


「くっ!二人してバカにしてるなっ!」


 ま、久留米理沙さんは学内のアイドルと呼ばれるほどの可愛さだからいいですけど。あぁ…今日も二つ結びがよくお似合いですなぁ…


「さっきから何をなさってるんですか、先輩たち?昭和って?」


 そう言って不思議そうな顔をしているのは、一年生でイギリス人とのハーフ美少女、朝倉浮羽さんだ。もう一人、黙々とノートパソコンのキーボードを打っている一年生の男子生徒。大牟田翔平くん。


 カタカタカタ…


 彼は、特にモノマネ大会には興味がないようです。


 あ、そうだ。一つ、素晴らしい出来事がありました。

 この時期の教室は先述の通り、ひどい有り様なんですが、今僕たちがいる新撰部の部室は快適です。なぜかというと、学校の屋上にテントを張っただけの質素なものから、六畳一間のプレハブ小屋へとメガ進化したのです!もちろん毎日どしゃ降りの続く中では、いくらテントがあっても活動に支障が出るという僕らの言い分が通ったわけなんですが、生徒会長の飯塚さおり先輩の強い後ろだてがあったそうです。しかも照明とエアコン完備!お値段コミコミで三十万円也!屋上に部屋を作らせる影響力!生徒会万歳!


「そうだ、早良先輩。文化祭が近いですけど、私達新撰部はどんな催しをするんですか?」


「あー…そっか。もうそんな時期だねぇ」


「昭和…」


 うるさいぞ!黒崎くん!


 毎年六月に文化祭が行われるのが、我が二階堂高校の伝統です。土日の二日間、一般のお客さんも呼んで、グラウンドや体育館、教室を使い、各部活動が露店やイベントをやったりするんですが、梅雨の時期にそれをやるってのはどういうつもりなのか…もちろん僕たち新撰部が何かやるとなれば、この広い屋上を使う事になるでしょうね。ちなみに前年度、帰宅部だった僕は雨ガッパを着て校門に立たされ、色んな部活動のビラ配りをさせられてツラい思いをしていました…うっ、思い出すだけで頭がっ…


「あたし、食べ物屋さんがやりたい!クレープとかたこ焼きとか!ブラックモンブランとか!」


 最後のは無理ですよ、久留米さん。ていうか売店にあるじゃん。


「大牟田くんは何かある?」


「…ネカフェ?」


 せっかくの文化祭で引きこもりを誘発するのか君はっ!?


「じゃあ…黒崎くん!」


「あぁ?あー…メイド喫茶だろ、視聴率的に。ウチには最強の美少女キャストが二人もいるんだぜ?」


 こらこら、視聴率とかメタいこと言っちゃダメですよ!


「う、うきは!何か意見は無いかなっ!?」


 ここは新撰部いちの優等生、朝倉浮羽大明神にありがたい御言葉を求める他無いな!


「意見というか…ちょっと小耳に挟んだ話なんですけど」


 なになに?彼女は生徒会にも出入りしてるから、飯塚先輩から何か聞いたのかな?


「今年は、もっともお客様を集めて売り上げを多くいただいた部活動に、賞金が出るそうです。確か…十万円だったかしら?」


「…な、なんだって!?それ、本当に!?」


 部費が十万円!これは大金だぞ!文化祭を盛り上げる為の策だろうが、そうなってくるとどの部活動も本腰を入れてくるに違いない!


「すっごーい!あたし、百本くらいブラックモンブラン売るくまぁ!」


 絶対それじゃ足りません。しかし、黒崎くんや、大牟田くんの目も輝き出したぞ!

 よし、みんなの本気を見せてくれ。人任せとか言わない!


「十万…わが輩のデスクトップPCに、新しいハードディスクを…」


「十万…俺の零号機に、新しいマフラーを…」


「使い道じゃなくて、催しの内容を先に考えませんかね!?」


 馬鹿者共が!十万円の使い道は部室に飾る美少女フィギュアに決まっているだろぉ!?デュフフ…はぁ…はぁ…


「じゃあキャバクラで決定な、和輝」


「は!?なんで!?」


 突拍子もなく何を言い出すんですか…ここ、高校ですよ。


「高い売り上げ叩き出すには飲み屋のオーナーか賭博の胴元しかねーだろ!」


「極端すぎぃ!」


「ならお前が考えろ!」


 あーいたたたた…ついに言われちゃいましたね。あえて言おう。僕に自発的な意見を求めるな!


「で、でも…キャバクラって…」


「賞金が出るってんなら、メイド喫茶ごときじゃ勝ち目はねぇ!演劇部とか仮装してそういうのやりそうだし、茶道部なんかはおもてなしのプロ集団だろうよ!」


 意外に冷静なリサーチご苦労さまです。


「そんで幸いにも俺たちには、りさっくまとうきはっていう校内最大とも言える武器があんだぜ!?打ち出していかねーでどうするよ!」


 うきはは困ったようにまごついてますが、久留米さんはVサインを向けてくれている。しかも両手で二つ。かわゆす。文化祭でやるには問題ありまくりな催しだと思うし、でも十万円は欲しいし、どうしたものか…


「客は一般人だろ?酒は扱っても、コイツらに飲ませなきゃ構わねーって!キャバクラの事なら俺に任せろ!神室町のキャバ嬢は全員落としたぜ?」


 それ『龍が如く』のキャバクラじゃないか!?ゲームの中とは違いますよ!そして久留米さんが黒崎くんに嫉妬混じりの殺気を放っているっ!


「で…でもキャストが二人じゃ、大した人数のお客さんを回せないよ?」


「生徒会長を手伝わせる!あのぼくっ娘だ!きっと変態共にウケるぜ!それなら同時に生徒会のお墨付きまでいただけるしな!ついでに保健室のセクシーねぇちゃんにも声かけてみよう!」


 あぁ…どんどん話が進んでいっちゃうよぉぉ…うん、もういいやそれで。



「えぇぇー!?キャバクラぁ!?しかも、ぼくにキャストをやれだってぇぇっ!?」


 生徒会室。メガネに三つ編みの会長、飯塚さおり先輩が、気持ちいいくらいのリアクションを返してくれましたね。今日は他の生徒会の面子も室内にいて、ものすごい注目されちゃってます。


「無理…ですか?」


「やれよ」


 ちょっとちょっと、黒崎くん!せっかく僕が頭を下げて一生懸命お願いしてるのに、その俺様な態度はダメだろ!


「でも、いくら何でも飲み屋さんはなぁ…ぼくも首を縦にふるわけにはいかないよ」


「ですよねぇ…」


「やれよ、ぼくっ娘」


 やめてってば!


「と、ところで早良くん。こないだのクッキー食べてくれたかな?」


 ん…クッキー?そうだ!僕のポケットに入ってたクッキーは、飯塚先輩に貰ったんだった!


「あ、はい!いただきましたよ!しょっぱくておいしかったです!」


「むっ!やはりうす塩は高評価かね!」


 なんかそんな味だったけど、せんべいじゃないんだから…


「えーと。それでは…失礼しますね」


 残念だが、他の案を探すしかないようだな。ひとまず退散しよう。


「ぼくっ娘、一つ訊いていいか?賞金の話なんだが」


 あれ?どうしたんだろう、黒崎くん。


「なんだい、黒崎健吾くん」


「和輝は十万円を手にしたら、少なからずお前にお礼がしたいと思っているようだぜ?以上です」


 へ?なにそれ?まぁ、感謝はするだろうけど。

 だが…狙うはフィギュア一択だ。それ以上でもそれ以下でもない。


「ひぁっ!?お、お、お礼とはなんぞなっ!?ふしだらな事ではあるまいなっ!?ふしだらな事ではあるまいなぁっ!?」


 はい。大事な事なので二回言いました。しかし、どうしたんですか、その食いつきは…


「言え和輝。やれよ、だ」


「はい?」


「いいから!押すなら今だ!お前にしか出来ない!」


 なんかよくわかんないけど…


「えーと、先輩。やれよ、キャスト」


「きゅぅぅぅん!」


 もう何なんだよこの状況はっ!



 さて、生徒会長を味方につけたところで、続いて保健室ですな。ただ、教員とは違う職員なので、あの先生が放課後にいるかどうか…


 ガラガラ。


「失礼しまーす!」


 元気があってよろしい!


「失礼します」


 黒崎くんに続いて僕ら新撰部も全員入室するが、やはりあの色っぽい保健の先生はいらっしゃいませんね。


「ゆ…輸血を…」


「…」


 門司先生、床に倒れて何をしているのかな?とりあえず放っておきます。


「いねーな、セクシーねぇちゃん」


「そうだね」


「そんなに美人な先生がいらっしゃるんですか?知りませんでした」


 うきはは保健室に来るのも初めてなんだろうな。大牟田くんは…ありそうな気がする。なんとなくだけど。そして見事にみんな門司先生をスルーなんだね。見直したよ。


「あら?どうしたのかしら?」


 おっ!グッドタイミングですね!赤いシャツと黒いミニスカート。それに白衣を羽織った先生が保健室に入ってきました!大人な色気むんむんでたまりませんな!デスクの前の丸椅子に座り、脚を組む仕草にすら目を奪われます。はぁ…はぁ…そのヒールで僕を踏み…じゃなくて!ちゃんと話をしなきゃ!


「あ、あの、お願いがあって来たんですが」


「なにかしら?」


 先生が前のめりになると、はちきれんばかりの胸の谷間が僕の目の前に襲いかかるっ!いや、違うんだ!僕は小さめの方が好みで!ロリこそ正義なのだ!うほっ。で、デカい…


「ふ…踏んでください…」


 あぁっ!?しまったぁぁぁ!!


「踏む?何をかしら?」


「ち、違います!今のは忘れて下さい!」


「なーにを変態な妄想してんだよ、和輝?」


 全力でごめんなさい。うぅ…刺激が強すぎて疲れる…


「あたしたち、文化祭でキャバクラをやるんです!でも、キャストが足りないから先生にも手伝って欲しいの!」


「人手不足だし、私達だけでは接客も心許ないんです。お願いします」


 久留米さんとうきはがそう言った。


「キャバクラを?あらあら、おませさんね。手伝いたいのは山々だけれど、文化祭当日も私はこの保健室を留守にするわけにはいかないわ。ごめんなさいね」


 あぁー、確かに文化祭だからって保健室が休みなわけはないんだよな。惜しいなぁ…


「保健室のドアに張り紙でもしときゃいいだろ!ご用の方は屋上まで、ってよ!心も身体も癒やされて一石二鳥じゃんか!」


 けが人や病人さえも客にする気なの!?


「うーん。そこまで言うなら、校長先生にお願いしてみるわね。救急箱くらいなら持ち歩けるから。会場は屋上なのかしら?」


「おう!ありがとう!校長には飲食店って事にしといてくれよ!」


「はいはい。じゃあ早速訊いてくるから待っててね」


 おっ!これは期待出来るかも!



 数分後。


「ただいま…あらっ!?門司先生!?いらしてたんですか!?」


 わ す れ て た。


 だってもう、ピクピクしてるだけでしゃべらないんだもん。しかし保健の先生ともあれば、それを無視するわけにもいきませんよね。


「すぐに輸血しますからね!頑張って下さい!」


 だからどうしてそんな設備があるのかな…


「さて、これでよしと。…そうそう、校長先生からの許可は下りたわよ。ただし、輸血パックも持っていくようにと言われたわ」


 その人のせいですね分かります。


「良かった!ありがとうございます!」


 これで四人の美女達が味方となったぞ!二、三くらいのテーブル席ならば頑張って接客できるはず。ほんとに小さなキャバクラが出来ちゃうな!まぁ、本物がどんなものなのか知らないですけど。


「ゆ…輸血を…」


 うなされている門司先生。


「保健の先生を取られるのも面倒だから、門司先生にはお客さんとして来てもらおうよ」


 僕の意見に、反対する人などいるはずもなかった。



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