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常夕闇の森 2

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.オートバランサー   OK

.各部アブソーバー   OK

.各部アクチュエーター OK

.油圧         OK

.光軸センサ      OK

.モニタ・カメラ    OK

.対電磁防御      OK

.火器管制       OK

.各レーダー      OK

.疑似神経       OK

.各部人工筋肉     OK

.搭乗者神経接続    OK

.搭乗者生命維持    OK

.対攻勢プログラム障壁 OK

.マニュアルコンソール OK

.音声識別       OK

.各駆動機構部     OK

.GPS         NG

.冷却機構       OK

.バッテリー容量    OK

.ジェネレータ     OK

.核融合炉       OK

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視界の中で人の胴体を鷲掴みにできそうな鋼の掌が360度回転し、指を握り開いた。


高さ3メートルほどのロボットは足元の化物が死んでいるのを確認する為に、右脚を再度踏みつける。


肉の潰れる不快な音がしたが、化物はピクリともしない。


黒い鋼。


そのロボットは体には不釣り合いな大きな脚部を持っており。

さらに弾体や衝撃を受け流すよう流線型のフォルムで構成されていた。


肩には機関銃とグレネードランチャーが、背面には巨大な長物が装備されている。

そして所々に金網が張り巡らされていた。


所々、修理された痕跡が見え、何度も戦場を乗り越えて来ただった。


化物が死んだのを確認したロボットを操る男の視界が、依然としてこちらを油断なく見上げるギロシェをフォーカスした。


赤い長髪をヘリコプターの風圧でなびかせるギロシェに向けて、肩にマウントされた機関銃が僅かなモーター音を響かせ銃口を向けた。


果たして相手にこの意味が通じるだろうかと言う考えがロボットを操縦する男の頭の中で過る。


だが男はすぐにその考えを止めた。

何せ全く謎の文明、全く謎の土地の原住民だ。

分かるわけがない。


そう結論づけ、ロボットの操縦者はギロシェと周囲に気を配りつつも危険要素は低いと考え、上空のヘリコプターへ無線で通信を始めた。


「こちらクロガネ。機体損傷無し。

 周囲に大型熱源、敵性体見当たらず。

 安全確保した。アナと博士を降ろしてくれ」


「ラージャ。予定通り両名を投下次第、本機は帰還する」


ヘリコプターのオペレータから応答が返され、ロープが地上に向けて垂らされた。

そのロープから滑るように降りてきたのは男と女が一人ずつ。

 

男はスキンヘッドで筋骨隆々の黒人で、サングラス。

ポロシャツと黒いジーンズといったラフな格好。

片手にジュラルミンのスーツケースを持っている。

パツパツに張ったポロシャツとジーンズを見るに相当鍛えている様だ。


女の方はショートヘアでもみあげが長い。

そして背が低く身体の凹凸は貧相であった。

薄く焼けたような肌色は中南米の出身か。

こちらは闇に溶け込むような黒いぴっちりしたバトルスーツ(ライダースーツのような)に同じく黒いポンチョを羽織っており華奢な印象だ。


ヘリのオペレータが成功を祈ると無線で告げ、バタバタとローターの音を響かせながら去って行く。


風が止んだ頃。

残されたのはクロガネというロボットの操縦者。

アナという女、博士と呼ばれる男、そしてギロシェの四人だ。


場に緊張した空気が流れる。


そこに博士が両手を開き、にこやかにギロシェへ歩み寄りながら話しかけた。


『やぁやぁ。星の光あれ。

 私はアイマン・マフディ・アルハズラットと言う。

 後ろの二人は申し訳ないがこちらの言葉が喋れなくてね。

 私が代弁させてもらうよ。

 あの大きい方はクロガネ、そしてこっちの小さいのがアナと言う。

 私の名は長いからね。

 アイマンとでも読んでくれ』


そう博士は大仰な手振り身振りで自分とクロガネ、アナの名前を紹介した。


星の光あれ。


ギロシェはそのありふれた挨拶の言葉に少し警戒を解いたのか、にこやかに笑顔を返しながら己の紹介を行った。


自分がヌ・ドゥリ家の使者である事。

これから数日は博士やクロガネ、アナ達と行動をともにする事を。


一方クロガネとアナはこちらの、新世界と呼ばれている大陸の言葉は分からないため互いに怪訝な表情をした。


「アナ。見ろよあいつの額。

 角が生えてるぞ。部族の装飾かなんかか?」


「資料で見たでしょ。あれはああいう種族。

 角獣族。

 見た目は私達とほぼ変わらない。

 でも構成要素は架空構成素(エーテル元素)から成り立ってる」


「あぁー……。すまん。

 男はあんま見てなかったわ。

 美人が多いらしい樹葉族やら水魚族は見てたんだが。

 あとは魔法が使えるとか、まるで絵本やら童話の世界だな」


「ボンクラ」


「アナちゃんひでぇ」


「クロガネ、今年で何歳?

 言ってみて」


「二十九でーす」


などと無線でやり取りしているとギロシェとアイマン博士は互いに抱擁し合った。

ファーストコンタクトは成功に終わったようだ。


『アイマン。これはヌ・ドゥリ家から友好の品です』


抱擁を終えたギロシェは旅人の館で受け取った黒い木箱をアイマンへ手渡した。


アイマン博士はお礼を述べてそれを受け取り。

興味深そうに目の高さまで持ってきて観察し、紐で結われた封を解くと。

 

「クロガネ君。開いてくれないか。できれば慎重にね」


アイマン博士はそう言って、箱をクロガネに渡した。

その言葉の意味を汲んだクロガネは後ろに下がり手を掲げる。


巨大な鋼の手が器用に木の箱を掴みとり。

その手首あたりから、にゅっと伸び出た精密作業用のマニピュレータが繊細な動きを見せ、その箱を開いた。


途端に轟音とともに箱が炸裂し爆風が場にいた4人を襲った。


腕で顔を庇うアイマン博士とアナ。

ギロシェはあまりの事に何が起こったのか分からず呆然と立ち尽くした。

 

爆風は焚き火から伸びていた煙を一瞬で消し飛ばした。

ギャアギャアと森の獣達が叫びを上げ、木々はガサガサとざわめいた。


「博士!こいつ!」


アナがギロシェを睨みつけ叫ぶ。

しかしそれと同時に木陰から射られた矢が4人を襲う!


ギロシェは咄嗟に鞘の付いた剣で振り払い。

アナは人間離れした素早さでアイマン博士に駆け寄ってポンチョを翻し矢を弾いた。


クロガネが脚部に備えられた高速移動ホイールから土埃を撒き散らし、アナと博士に駆け寄り鋼鉄の壁となって死角を潰した。


そして考える間もなく、木々の影から緑の衣に包まれた何者かが踊り出る。


数にしておよそ12人。


武器はそれぞれ剣や槍、ナイフ、双剣、棍棒など選り取り見取り。

その内5人がギロシェへ、5人がクロガネへ、残りの2人がそれぞれ博士とアナへ飛びかかった!


その速度はまさに風の如き速さ。

およそ50メートルの距離を瞬きの間に詰める!


常人では反応した段階で首を跳ねられただろう。

常人であれば!


ギロシェは既に鞘から剣を抜き去り大剣を構えている。

その刃は夕闇に輝き透けて輝く水晶で出来ていた。


タイミングを図った渾身の横振りは突進してきた二人を巻き込み血の旋風を巻き起こした!


その気配を察知して寸でのところで飛び退いた三人は飛び退き際にナイフを投げつける。


その刃は毒々しい色に染まり、何かが塗りつけられていることは明白だった。


投げつけられたナイフを剣の腹ではじき、あるいは体を捻り躱すギロシェ。

飛び退き、間合いの外に出た緑衣の襲撃者と数秒のにらみ合いが続く。


そして反対側ではクロガネとアナ、博士の三人が襲撃者と退治している。

5人に一斉に襲いかかられたクロガネは肩に装備された機関銃で襲撃者に対抗する。


爆音と共にマズルフラッシュが明滅し襲撃者の一人が跡形もなく地面と撹拌された。


だが恐るべきことにその次のターゲットは、高精度な火器管制によってコントロールされた自動射撃を躱してゆく。


その動きはまるで慣性を無視したもので、クロガネは目で追う事がやっとの状態であった。


「マ、ジ、かぁぁぁ」


思わずクロガネの口から言葉が漏れる。


足や腕を時折切られているようだが、火花と音が上がるだけでダメージは今のところ無いようだったが、このままではいつか致命的な一撃をもらうだろう。


例えば装甲下の配管や配線であったり、カメラであったり。

相手がこちらをあまり知っていない事がクロガネを助けていた。


背中に装備してあった長物を手に取りなんとなくアタリを付けて振り回し牽制する。


アーマーグラインダー。


その長物は2メートルほどの柄の先に丸い刃―――というよりも砥石―――が付いており、それが高速回転して相手の装甲を削り切るものだ。


その回転音と巨大さから来る威圧感は確実に相手の警戒心を煽るようで、襲撃者の攻勢を一時的に弱めた。


「アナちゃーん、頼むよマジで!

 近付かれると駄目なんだって!」


クロガネが無線で泣き言を言い出した。

無論返答はない。


それも当然でアナと博士も今、正に襲撃されているからだ。


素早く腰のホルスターからオートマチックハンドガンを抜く。

風のように突進してきた相手の眉間に一発。


しかし相手はまるで弾丸が見えているかの様にそれを首を僅かに逸らしやり過ごした。


恐るべき身体能力。

それは正に人外と言うのが相応しい。

しかし。


「どうやら、やはりというか。

 またしても嵌められてしまったか。

 だが―――。」


博士が呟く。


アナは無思考でハンドガンを適当に投げ捨て。

左側の腰部分に収められていた得物を抜き放った。


それは彼女の身長の約半分ほどの刀。


抜き去り際に突進してきた襲撃者の胴体部を両断。

さらに返す刃でもう一人の襲撃者を受け止められた武器ごと切り抜いた。


驚愕の表情のまま斜めにずり落ちる襲撃者の上半身。


「どうやらこちらの戦力を見誤ったようだ。

 彼女が一番強くてね。よく言うだろう。

 鷹は爪を隠すと」


「博士、原住民のあいつ。どうする?」


アナは刀に付いた黄色い血を振り払いながらギロシェの方を見た。 


ギロシェは襲撃者5人のうち3人を既に倒し。

腰が引けた襲撃者をじりじりと追い詰めていた。


「どうもこうも、見るに彼も被害者のようだ。

 それでも申し訳ないが私達に巻き込まれてもらうしかあるまいよ。

 見た感じでは必要ないだろうが、助けて上げたまえ」

 

「了解」


そう言って駆け出したアナは襲撃者の死角に飛び込んでいった。


ギロシェが突進し、襲撃者の一人の心臓を突き刺す。

緑の衣が赤に濡れてガボガボと襲撃者の口から音が漏れた。


そして武器が突き刺さったままの隙だらけだったギロシェの側面にもう一人の襲撃者が襲いかかる。


しかしギロシェは突き刺さった死体をものともせず大剣を振り回す。

面から襲い掛かってきた襲撃者を叩き切ろうとし―――。

まるで羽を振り回すかのようにビタリと剣を止めた。


踊りかかってきた襲撃者の胸から刃が飛び出、ギロシェの眼前で止まったのだ。

その刃は小さな金切り音を出しながら僅かに振動している。

その様子を見たギロシェは大剣を下ろした。


『コレはとんでもない獅子が紛れ込んでいたようだ』


「何言ってるかわかんないわ。

 とりあえずアッチを手伝って」


「アナアアあぁァァァァァァァァ!」


そう言って無線で叫ぶクロガネの方をアナは指差した。


どうやらギロシェはその意図を理解できたようで、しばらく後に駆けつけた二人によって虫にたかられる人状態になっていたクロガネは助けられることとなった。


「アナちゃんラブ!」


「死ねロリコン!」


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