第2話
放課後。
今日は部活がオフの日だったのですぐに帰宅する予定だったが、この日は運悪く担任に資料を職員室まで運ぶという仕事を押し付けられた。
見たいドラマあったんだけどなー。まあ、録画してあるから帰ってから見ればいいや。
ちなみに、私は弓道部に所属している。そして姉はソフトテニス部。これは被らなかったので少し嬉しかった。
これを聞くと姉を嫌っているように聞こえるかもしれないが、別に私は姉が嫌いなわけではない。むしろ家族として好きだ。性格もいいと思ってるし。
ただ…、逃げてるだけ。周りの人の比べるような視線、思惑から。そして自分の才能の無さを実感したくないから。
この話はやめよう。あまりネガティブに考えるのはよくないことだ。
「おお、中原じゃないか」
「北山先生…」
げっ…!と思ったことを口に出さなくてよかった。思わず言ってしまうところだった。
北山先生は、私の副担任で、私が最も苦手とする先生だ。
ぐちぐちと私と夏希を比べるような発言ばかりする。そんなに夏希がお気に入りかーっ⁉︎このロリコンめ!
そんな悪態を心の中でつきながら、顔に笑みを貼り付ける。
「ほお、資料を運ぶ手伝いをしていたのか」
「ええ、まあ」
早く会話終われ〜。
「もしや、点数稼ぎでもしようとしてるのかあ?」
「は…?」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
そんなこと微塵も思っていなかったから。
「まあ、姉はお前と比べものにならないほど優秀な生徒だからなぁ。お前はそうやって手伝いでもしなきゃ、点数が稼げないだろう。姉の方は今回の中間考査も学年3位だったじゃないか。お前ももうちょっと頑張ったらどうなんだ。双子なんだろう?」
「………」
「まあ、頑張りなさい。それじゃあな」
頭が真っ白になった。
散々言われてきた言葉なのに、言われるたびに傷つく。
ショックで悔しい。
でも、全部当たってることだからそう言われても仕方ない。
その場で下を向いて涙を堪えていたその時。
「北山先生、その言い方はないと思うぜ。中原に謝れよ!」
「……⁉︎」
えっ?
びっくりして顔を上げると、そこにはクラスメイトの西宮くんがいた。
「中原は中原だろ。姉と比べる必要がどこにあるんだ。失礼だろ、謝れよ」
「なっ…、本当のことを言っただけだろう。私は忙しいんでな。そんなことにいちいち時間を割けないんだ。じゃあな」
「ちょっと待てよ…!」
西宮くんは逃げようとする先生の肩を掴もうとする。
「にっ、西宮くん。私は大丈夫だから。もういいから!」
放課後だからあまり廊下に人はいないが、騒ぎになっては困る。
「けど…!」
「ありがとう。でも本当に大丈夫だから…」
彼は納得のいかないような顔をして、それからため息をついて、
「わかった」
そう言った。
「中原、その、本当に大丈夫か?いつもあんな風に言われてんの?」
「いやまあ、その、たまに、ね」
今日みたいに酷いのは初めてだけど。
「言い返そうとは思わないのか…?」
言い返そう、か…
「言われてるのは全部本当の事だし。私が悪いだけだから、言い返そうと思ったことはないかな」
「そんなことないのに…」
「え?」
「何でもないよ。中原には中原のいいところがあると俺は思ってる。そんなに気にしなくていいと思う」
西宮くんは何でこんなに優しいんだろう。
クラスメイトだけど、今まで彼とはあまり話したことはなかった。
なのに怒って、慰めようとしてくれてる。
「ありがとう…」
心が温かくなっていくのがわかった。
こんな風に言われたのは初めてで、すごく嬉しかった。
「中原はもうちょっと、自信を持っていいと思うよ」
「そう言ってくれるの、西宮くんが初めてだよ。慰めてくれてありがとう」
ふと、手元にある資料のことを思い出す。
「あ、先生に資料届けなくちゃ。また明日ね」
「ん、そっか。じゃあな」
北山先生に言われたことはショックだったけど、それ以上に西宮くんに言われたことが嬉しくて、その後はずっと気分がよかった。