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object maker  作者: 舞崎柚樹
4:秘めた想い
34/106

一人戦、終幕

「どういうこと?」

 ノッシュは考えながらデオルダに聞く。その隣でクルーニャとチーシェもデオルダを見ていた。

「簡単に。十七年前のこいつの状況だよ。」

「さすがだな。デオルダ。」

 ルギも観念したように椅子の背もたれに寄りかかった。

「十七年前のルギ?」

「十七……?」

「ところで、お前歳いくつだよ。」

「今更な質問だな……。」

 チーシェがルギに聞くと、呆れたように答えが帰ってきた。

「二十……二?」

 ノッシュがルギの顔を見ながら言葉を絞り出すように言う。

「うーん……顔だけならもっと下なんだけどさ……。」

「わ、わかってるよ。こいつがまさか未成年なんてことはないって言ってんだろ?」

「まあ……。」

「み、未成年……。」

 ノッシュ、チーシェの疑問は一致しているようで、お互いに顔を見合わせていた。

「やっぱり皆言うこと同じみたいだな。」

「うるさいな……。」

 デオルダの笑いながらの声に、ルギは嫌そうな顔をした。

「そんなに幼く見えるのか……?」

「え、いや……。」

「大丈夫、未成年だとは思ってないから。」

「きっと、幼くはないだろうけど。」

「あのなぁ……。」

 言葉に詰まったノッシュと、悪口としかとれないチーシェ。

「童顔っていうのは当てはまるんじゃないか? 猫のお兄ちゃんって言われてたくらいだし。」

 ノッシュはフォローをしたつもりで言った。が、ルギは嫌な顔をしたままノッシュを見ている。

「……それは褒めてるのか?」

「老けてるよりいいだろ。」

「まあ……。」

「もうちょい上なのかな?」

「二十六だ、これでも。」

 これ以上何かを言われるのが本当に嫌だったのか、ルギが自分から答えを言う。

「二十六だと……!?」

「あ、俺同い年じゃん。」

「お前は俺を年下だと思ってたのかよ!!」

「いや、まあ……顔的に?」

「……。」

 ルギは散々顔のことを言われたからか、口を閉じた。

「ま、面白い話はそこまでにして。これでわかっただろ?」

「へ?」

 笑いながら間に入ったデオルダ。だが、クルーニャを含めた三人は、何を言われているか見当もつかない。

「……十七年前、コイツは九歳だったってことだよ。」

「ああ、それはわかったけど。」

 単純に計算でわかることである。だからこそ、それ以上がわからない。

「九歳だったら……普通に学校行ったりとか?」

 チーシェは、普通の九歳の子供を想像して言った。

 その言葉がノッシュとクルーニャにあることを気づかせる。

「あ!!」

「思い出した……。」

「え、学校が関係してんの?」

 チーシェが驚いたようにノッシュとクルーニャを見る。

「学校っていうか……なんていうか、ね?」

「まあ、その……な?」

「なんで二人のアイコンタクトで終わるんだよ。」

 ノッシュとクルーニャのアイコンタクトだけで会話が成立していることに不信感を覚えながら聞く。

「説明しにくいというか……おい。」

 ノッシュがチーシェに理由を説明しようとしてルギを呼ぶ。

「あん?」

「なんでお前が言わねえんだよ。」

「ややこしくなる。」

「本人が言わずに何がややこしいんだか……。」

「とにかく、これでわかっただろ?」

「まあ。」

「話の流れは。」

「聖域エース級の被検体が実験台にならないのは、おかしい。」

 デオルダの言葉に頷く二人。

「そんなやつがいたのか……。」

「……。」

 この中で、唯一話を理解できないチーシェを隣で無言で見ていた。

「でも、なんでだ? そんなやつがいて、研究者が使わない手はないだろ? もう既に死んでたとか?」

 チーシェはもっともな疑問を言ったつもりだった。

「いや、それはない。」

「まあ、な。」

「うん。」

「え?! 三人共そんなあっさり俺の考え否定すんのかよ。やっぱり知らないの俺だけじゃねえか。」

 三種三様に否定され、チーシェは知らないのが自分だけだと確信する。

「う、うん……まあ。」

「ギリギリ逃げた。」

 ルギが話を進めるために言う。

「は?」

「多分な、死ぬ勢いで逃げたんだったと思う。」

「お、おう……。」

「え、今ルギの話して……んの?」

 会話から何か情報を読み取ろうと質問をしたのだが、チーシェはデオルダの視線を感じて黙った。

「とりあえず、チーシェ黙っとけ。」

「おう。」

「それで? 逃げたって?」

「逃げた……と思う。そこらへんまでは覚えてるんだけどなぁ……。」

 ルギが頬杖をつきながら思い出そうとするが、なかなか先に進まない。

「じゃあ、賢者長に聞いたほうが早いのね?」

「……きっとな。」

 ルギが換気のために開けられていた窓の方を見た。

「呼んだかい?」

 その窓の外にエデンが立っていた。

「きゃあ!?」

「うわっ!?」

「あ、おかえりなさい。」

 驚いたクルーニャとノッシュ。

「クルーニャは気を抜きすぎだよ。ルギ達は気づいていたみたいだし。」

「ノッシュー……。」

 エデンに自分だけ注意され、涙目になりながら一緒に驚いていたノッシュを見る。

「いや、俺一応一般人なんだけど。」

「あれ、一般人……デオルダ?」

「俺は一般人だが?」

「気づいてたの……?」

「……まあ。」

「……お前、ホントに一般人?」

「当たり前だろ。」

「話は聞かせてもらったよ。」

 ノッシュとクルーニャがデオルダに驚いている間にエデンが家の中に入ってきていた。

「悪趣味だな。」

「おや、まだご機嫌斜めか。」

「別に。」

 毒を吐くようなルギの言葉に笑うエデン。

「十七年前とは。随分懐かしい話をしているね。」

 エデンは笑いながらルギを見た。

「あの頃は素直で可愛い子だったのに……。」

「悪かったな、ひねくれてて。」

 ルギはエデンと目を合わせない。

「ルベルが羨ましいよ。」

「ルベルが、ですか?」

 驚いた表情をしたのはデオルダである。

「そういや、俺ルベルって人のことあんまり知らないんだよな。」

「俺も。会ったことはあるけど。」

 ノッシュとチーシェはデオルダとエデンを見る。

「ルベルか、なんて言ったらいいかな。」

「ルギはルベルに対しては素直なんだよ。」

 エデンがため息混じりに言葉を出した。

「賢者長、嫉妬してるわよ。」

 クルーニャが苦笑いを浮かべながら、そっぽを向くルギに話しかけたが、返事がない。

「……ルギ?」

「……。」

「ルギー?」

 ノッシュがルギの目の前に立って、ようやくルギが顔を上げた。

「あ、何だ?」

「何考えてたんだ?」

「別に。」

「どうするんだい? ルギ。」

 エデンの呼びかけにルギが振り返る。

「ルベルは。」

「どうするもこうするも……考え中だ。」

「珍しいね。ホントに手詰まりとは。」

 エデンが軽く笑いながらルギを見ていた。

「うるさい。俺は兵器開発者じゃねえんだよ。」

「だからと言って、何もしていないわけではないんだろう?」

「っ……だったらなんだよ。」

 わかってて言わせているのかと、ルギの中には小さな怒りが生まれていた。

「……さてと、チーシェ。仕事も終わったことだし、帰ろうか。」

「なっ!? 話の途中だろ!?」

 エデンは話をいきなりチーシェに振り、ルギが慌てて立ち上がる。

「わ、わかりました。」

「ルギ、この国の審判はお前次第だな。」

「……途中で捨てる気はない。」

「そうだね。そこは心配してないよ。」

「……。」

 意味がわからないと言いたげな目をエデンに向けたルギ。その目を真正面から受け取るように笑いかけるエデン。

「困ったときは親を頼っていいんだぞ。手詰まりは嘘じゃないみたいだし。」

「……好きで嘘をついているわけじゃない。」

「だからこそ、だ。こういう時くらい親に頼ったらどうだ?」

「考えておくよ。」

 ルギが目線を横にずらした。

「おやおや、まだ完全に信頼されてないみたいだ。」

 エデンがその様子を見てチーシェ達に笑う。

「それじゃ、行くとするか。」

「はい。じゃ、またな。」

 先に外へ出たエデンを追いかけるように、玄関に向かうチーシェ。外に出る前に振り返り、手を上げて笑いながら出て行った。


 二人が出ていき、少しだけ静かになった部屋の中。

「で、創造神(クリエーター)?」

「なんでいきなりそういう呼び方になるんだよ。」

「からかってるからに決まってんだろ。」

「なんだ。」

 デオルダが話しかけてきた時の顔を見て、なんとなく察しがついていたので、あえて何も言わず、からかわれることにした。

「手詰まりは本当ってことでいいんだな?」

「本当だ。だから困ってんだろ。」

 誰もが、ルギの手詰まりを疑って止まない。

「そろそろ、さ……俺らを頼ってくれてもいいんじゃねえの?」

「は?」

 この状況で、からかわれているのはルギであって、デオルダではない。それなのに、なぜ、デオルダが照れ隠しをするようにそっぽを向く必要があるのだろうか。

「まあ、力にはならんがな。」

「そうだな。お前はもう少し人を頼ったほうがいいと思う。」

 そして、その話に楽しそうにノッシュが加わる。

「え。」

 なぜ楽しそうなのかがわからないルギ。

「そうそう。これは審判なんだから。街の人々だけじゃなく、私達もね。」

「えっと……。」

 そして、そこにクルーニャまでもが加わった。もう、状況がわからない。

「?」

「なんで、手伝ってくれるんだ?」

「……はあ?」

 ルギの真面目な顔の質問に三人は目を丸くして、お互いの顔を見た。

「だってそうだろ? 別にわざわざやる必要は……。」

「理由がなかったら手伝っちゃだめなのか?」

 ノッシュが呆れたようにルギを見る。

「そ、そういうことは言ってない……。」

「じゃあいいだろ? そんなこと。」

 ノッシュは嬉しそうに笑っていた。

「そんなことって……そんな、こと……か……。」

 納得できたようなできなかったような、曖昧な感じではあったが、この三人にこれ以上何も言う必要はないと思い、言葉を打ち切った。

「よし!! できることを探すぞー!!」

「おおー!!」

 ノッシュの掛け声が合図となり、デオルダとクルーニャが団結した。

「わ、わけが……わからない……。」

「やるぞ、この国の審判。」

「はい?」

「絶対に成功させてみせる!!」

「あ、ああ……。」

「当事者がそんな弱気でどうすんのよ。ほら、気合入れて!!」

「が、頑張ります……。」

 こうして、一人戦が本当に幕を閉じた。


 ルギ・ナバンギに残された時間はあと、337日。


読んでいただきありがとうございます。


久々、となりました今回ですが……。

長い長い一日が終わったような感じです。

結局アフェトロッソについてわかったようなわからなかったような。


とりあえず、一区切りです。

また次話から発明家に戻るかと思います。

ろくなもの作ってないんですけども。


またよろしくお願いします。

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