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object maker  作者: 舞崎柚樹
4:秘めた想い
23/106

素直になれない

6月22日に再編集していますが、内容に変更はありません。


「え? 何もしてない?」

「ああ。俺はちょっとだけノッシュの心の声をからかっただけだ。」

 昨晩のことをデオルダにもう一度聞いたルギ。

 デオルダは笑いながら何もしてないと言う。

「何もしてなくは、ないな。」

「まぁ、俺は面白かったぞ?」

「お前は、な?」

 ノッシュの様子を思い出したルギは、楽しげに笑うデオルダを見ながら苦笑いを浮かべた。

「まぁ、昨日は……。」


「なんだよ、デオルダ。」

 ほぼ無理矢理、ノッシュを部屋に連れてきたデオルダ。文句を言うノッシュの顔は未だに赤い。

「とりあえず、自分の顔がどうなってるかわかってるか?」

「う。」

 言葉に詰まり、デオルダから目を反らしたノッシュ。

「わかってるようだな。じゃあ、本題に入るぞ。」

「ほ、本題って……。」

「クルーニャの気持ちには気付いてるんだろ?」

「ここまできて……気付いてなかったら、俺は鈍感以上の何かだろ。」

 目を反らしたままではあるが、ノッシュは気付いている。

「俺はお前が鈍感だと思ってたけど。」

「酷いな……。」

「お前が会った時からあいつはお前に好意を寄せていたけどな。」

 ここでノッシュがデオルダを見る。数秒固まっていたが、デオルダが嘘はついてないと、言うと驚きを隠せていない。

「はっや!? え?! 早すぎじゃない!?」

「だから鈍感だって言ったんだ。」

「な、なんで?! 俺はまた何を……!?」

 ノッシュの驚きはパニックに変わり、そのままあらぬ方向への勘違いとなりかけた。

「落ち着け。好意を向けられてるんだから、焦らなくてもいいだろ?」

「あ、ああ……。」

 見かねたデオルダが落ち着かせる。

「教えてやれるのは、クルーニャにとって他人から握手を求められることは重要な意味を持つってことだ。」

「握手なんていつ……。」

 ノッシュはまだ焦っているようだ。

「覚えてないのか?」

「あああ!!」

「思い出したか?」

「……はっきりと。」

  過去の自分の行為を反省するかのように呟く。

「別に悪いことじゃないからな?」

「わかってるよ……。」

 あの時は考えもしなかった。

 それでも、変だと思わなかったわけではない。

 なぜ、握手だけでこんなにも嬉しそうなのかと。

 あの笑った顔が可愛らしいと、思わなかったわけではない。

「でも……。」

 俯いたまま、ノッシュは黙ってしまった。

「仮に、お前が好きな人がいて、クルーニャを振ることに何か後ろめたさがあるとか?」

「違うよ。別に今そういうこともないし……。」

 冷静になれていなかったと思われたノッシュの声は、いつも通りの調子に戻っていた。

「じゃあ、何だ。」

「クルーニャは、賢者なんだぞ? きっと、俺よりもクルーニャに似合う人がいる。」

「だから、振ることに後ろめたさを感じてるんじゃないのか?」

「そう、かも……。」

 ノッシュは、目線を床に落としたままである。

「だったらそう言えばいいだろ。」

「単に、恥ずかしかった……。」

 ノッシュが指を忙しなく動かしている。

「さっきの、握手が重要な意味を持つなんて言われたら、クルーニャは本気なんだろうな……とか思って……どう、したらいいかな。」

「もしかして、俺に助けを求めてたりするのか?」

「いや、これはきっと、自分でどうにかしないとならないんだと思う。」

「お、おう……。」

 自分の心配のしすぎであったかと思ったデオルダ。それでも、一つだけ確認しておきたいことがあった。

「ところで……。」

「?」

 考え込んでいたノッシュが不思議そうに顔を上げた。

「お前は、クルーニャのことどう思ってるんだ?」

「なっ!? 突然なんだよいきなり!! 」

「いや、だって……。振る話前提みたいだったから。」

 どうやら、直球に対しては弱いらしい。

「お、俺だって何もなければあんな綺麗な人と付き合えたらいいなとか思わないわけじゃないっていうか何言ってんだ俺は!!!?」

「お、落ち着けよ……。」

 本音が出たことを喜ぶべきなのか。

 デオルダの一言で落ち着けるノッシュではなかった。

 思っていることを自分の意思に関係なく一言で喋り続けた。

「だから、後ろめたさを感じてるんだと思うんだけども!! なんだかもうどうしていいか検討もつかねぇんだよ!!」

「……素直になればいいじゃねぇか。」

「っ?! そっ、それができたら今こんなことになってないんだって!!」

 自分の気持ちも、ちゃんとわかっているようだ。

「じゃあ、ぶっつけ本番いってみるか。」

 今のノッシュなら、思っていることを自分の意思に関係なく喋るだろうと思い、行動に出る。

 そして、デオルダは部屋のドアを開けようとする。

「そこまでわかってるなら、頑張れよ。」

「まっ、待て待て!! 開けるなああああああ!!!?」

 既にドアは開けられていた。


「つまり、ドアを開けたのはお前か。」

 一通りの話を聞き終え、自分の勘違いを訂正するルギ。

 ルギは、ドアを開けたのがノッシュ本人だと思っていた。助けを求められたのも理由だが、話を聞くうちに、ノッシュが助けを求めた理由も勘違いであると判明した。

「そういうことだな。」

「その後は見ての通りだ。」

「一回部屋に戻っただろ?」

「あれは、落ち着かせて、話す機会が欲しいなら家に泊めてやれって。」

 結局は、ノッシュがデオルダのその提案を受け入れたのだ。

「お前が一番悪役だな。」

「誉め言葉だな。」

 デオルダだけは敵にしたくはないと、改めて認識したのはルギだけではないだろう。


「一つ、聞いてもいいか?」

 朝食を食べ終わり、片付けを手伝ってくれていたクルーニャに話しかけたノッシュ。

 デオルダの言う通り、機会はいくらでもありそうだ。

「何?」

「この国の審判について、どこまでルギに聞いたんだ?」

「あの時はあまり詳しい話ができなかったから……。街の人が知らないってことと、ルギが軍事力をどうにかしようとしてるってことね。」

「俺も同じことくらいしか知らないけど……。状況は今、変わってる。」

 ノッシュが洗い終わった皿を拭きながら言う。

「状況?」

「ルギが、街の人に協力を求めることができないわけじゃないんだ。」

「!! 確かに。」

 状況はルギとデオルダから聞いていた。そして、ルギとどんな話をしたのかもクルーニャから聞いていたノッシュは、ルギが最初に考えていたことが無理ではないと思い始めていた。

 つまり、ルギが武器を作りどうにかしようとするのではなく、街の人の協力を得てどうにかできるのではないかということだ。。

 やり方に関しては、おそらくルギに託すしかないのだが。

「ミルシェさんはルギを疑わなかった。」

「そうね。」

「ただし、問題が二つほどある。」

 ノッシュがため息をついた。

「二つも?」

「一つは、ルギが果たして街の人に協力を求めるかどうか。」

「?」

「あいつの性格からして……やらないような気がしてならない。」

「……否定できないかも。」

 この意見は二人同じである。

「だろ?」

「それで、二つ目は?」

「国王だな。」

「国王って、この国の?」

「そうそう。謁見しに行くって言ったの聞いて思ったんだ。」

「何が問題なの?」

 国王の問題は国の問題に等しいと考えていたクルーニャ。

 だが、街の人々を見た限りでこの国に問題があるとは思えなかった。

「考えてもみろよ。神の審判の話すら国民に話さない王様なんて、その時点で問題ありだ。」

「そう、ね。忘れてたわ。」

「ちなみに。この国の国民の一人として言わせてもらうと。この国の国王は好きじゃない。」

「好き嫌いの問題なの?」

 国王の好き嫌い、信頼の問題にはなるのかもしれないが……。

「それは街の人に聞いてみるんだな。」

「好き嫌いを?」

「そ。好きっていう物好きはいないだろうな。」

「そこまではっきりしてるの?」

「国民の声を聞く気がない王様だからな。」

 ノッシュは笑いながら「他国にそんな国王はいないだろうな。」と、付け加えた。

「いいの、それ?」

 クルーニャも、聞いていて不安になってきた。

 この国の審判を手伝いには来た。ルギもいた。

 不利な状況、条件ではあったが、ルギがいることはこの国にとってプラスになるだろうと思ってはいた。

 だが、国王が国民の声を聞かず軍事を目指すなど……。

 いつかのどこかの国と似ている。

 そうなった時、この国はどうなるのか。

 賢者として、自分は阻止できるのか。

 人間として、何ができるのか。

「まあ、今審判のことを知ってるのは俺らだけだからなぁ……。ルギが武器作れるって言うなら別なのかもな。」

「作れるとは思うわ。」

「そうなのか?」

「ええ。それでも、ルギが……諦めてた。」

 クルーニャが寂しい顔をした。ルギを頼っていたのだろう。

「諦めてた、か。」

「創造神と言っても、作っていたのは主に子供に対してだから……。」

「玩具ってことか?」

「そうは言い切れないわよ。家、直してたこともあったし。」

「家ってな。」

 ノッシュが笑った。

 確かに、家を直しているのを見たばかりである。

「それでも、軍事介入をいいとは思ってなくて安心したわ。」

「あいつが人を殺すなんてやるとも思わないけど、言うとも思えないからな。」

「暴言として、言うことは……あるかもしれないけど。」

「そうか?」

「一回だけ、本気で怒ったことがあるのよ。」

 ルギが怒った話なのだが、クルーニャは楽しそうに笑っていた。

「なんで怒ったの?」

「チンピラが孤児院に強盗に入ったからだったと思うけど。」

「誰でも怒るな。」

「チンピラが泣いて助けを求めたそうよ。」

「起こしてはならない鬼を起こしてしまったか……。」

 想像はできないが、なんだか笑えてきた。

「そうみたい。」

 クルーニャも笑っていた。

「ところでさ。」

 台所を片付け終わり、二人は椅子に座る。

 ノッシュは、聞こうか迷っていた疑問をぶつけることにした。

「?」

「クルーニャにとって、握手って大事?」

「な、何? 突然。」

「いや、デオルダが言ったのが気になってて……。」

 本当はそれだけではないのだが……。

「フフ……気になる?」

「……気になるけど。」

「いいわよ。教えてあげる。」

 いたずらっぽく笑う顔がノッシュを見ていた。

 その顔を見る度に、ノッシュの心が揺れていたのかもしれない。


読んでいただきありがとうございます。


今日はいつもより遅くなり……。

いや、いつも不定期更新の奴が何を言ってるのかと。

まったく、その通りです。


今回は、前回のデオルダが何をしたかでした。

ドア、開けただけではないような……。


次話。

次話こそは握手。


総合アクセス数が1000を超えました!

ありがとうございます。

またよろしくお願いします。

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