ヌヴェル49 袖振り合うも
西日の射し込んでくる文具店。
手紙をしたためたいと思っている男と女がいた。
男は、青いインクとインクペンを探していた。
最後の一点だった白い便箋を手に持っている。
けれど、青いインクとインクペンは見当たらない。
女は、白い便箋を探していた。
最後の一点だった青いインクとインクペンを持っている。
けれど、白い便箋は見当たらない。
男は、レジの店員に尋ねた。
「青いインクとインクペンは、ありませんか?」
店員は答えた。
「店頭に出している分だけなので、無ければ申し訳ありませんが・・・」
女は、レジの店員に尋ねた。
「白い便箋は、ありませんか?」
店員は答えた。
「店頭に出している分だけなので、無ければ申し訳ありませんが・・・」
男は、女と店員のやり取りを聞いていた。
女は、男と店員のやり取りを聞いていた。
男は、女に白い便箋を譲った。
女は、男に青いインクとインクペンを譲った。
男と女は、恐縮してそれぞれを受け取ると、支払いを済ませて店を出た。
文具店の看板に灯りがともった。
男は、白い便箋を買わなければと店を探した。
女は、青いインクとインクペンを買わなければと店を探した。
男と女は、それを面倒なこととは思わなかった。
やがて二人は、どこかで欲しかったモノを手に入れることができるだろう。
少々時間がかかったが。
それに見合った何かを得られたと、ふと思うことだろう。




