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ヌヴェル49 袖振り合うも

作者: 寺澤樹生
掲載日:2026/09/27

西日の射し込んでくる文具店。

手紙をしたためたいと思っている男と女がいた。


男は、青いインクとインクペンを探していた。

最後の一点だった白い便箋を手に持っている。

けれど、青いインクとインクペンは見当たらない。


女は、白い便箋を探していた。

最後の一点だった青いインクとインクペンを持っている。

けれど、白い便箋は見当たらない。


男は、レジの店員に尋ねた。

「青いインクとインクペンは、ありませんか?」

店員は答えた。

「店頭に出している分だけなので、無ければ申し訳ありませんが・・・」


女は、レジの店員に尋ねた。

「白い便箋は、ありませんか?」

店員は答えた。

「店頭に出している分だけなので、無ければ申し訳ありませんが・・・」


男は、女と店員のやり取りを聞いていた。

女は、男と店員のやり取りを聞いていた。

男は、女に白い便箋を譲った。

女は、男に青いインクとインクペンを譲った。


男と女は、恐縮してそれぞれを受け取ると、支払いを済ませて店を出た。

文具店の看板に灯りがともった。


男は、白い便箋を買わなければと店を探した。

女は、青いインクとインクペンを買わなければと店を探した。

男と女は、それを面倒なこととは思わなかった。


やがて二人は、どこかで欲しかったモノを手に入れることができるだろう。

少々時間がかかったが。

それに見合った何かを得られたと、ふと思うことだろう。


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