09.違う世界のバケモノ
★☆★ 女騎士アデラ視点 ★☆★
この怪物、一体何なのだろうか。
私の首すじを凝視した時の、あの恐ろしいほどにギラついた瞳。
やはり私を食べようと思っているんだろうか。
それとも私の女の体が目当て……いや、それは絶対にない。だって私は男という生き物をいやというほど知っているんだから。
行水していると偶然を装って乱入してくる。いつも胸の先を見つめてくるし、わざと聞こえるような大声で人の体の品評を始める。
努力して鍛えて強くなっても、女のくせに、女風情がと蔑んでくる。
無理やり婚約させたと思えば、平気でゴミのように捨てる。それが男だ。
人食い鬼。
人間とは違う理の中に生きる怪物……。
人外の化生を前に、背筋が震え……る前に、お腹がぐうう~っと大きな音を立てた。
そう言えば昨日から何も食べてない。
再び迫って来た乙女の危機。
私、この先、生きのこれるのかしら……
★☆★ おっさんデブータ視点 ★☆★
湖からの帰り道、少女の体が空腹を訴えた。
しまった! ごちゃごちゃ考えていて、彼女の健康をないがしろにしていた!
「戻ったら食事にするか」
「はい……」
いや、これは間違いなく俺が悪い。完全に失態だ。
山小屋に戻ると台所に直行する。
この世界に来てからというもの、俺にとって料理は鬼門の一つだ。
別に料理が苦手ってわけじゃないけれど、なにしろ調味料が塩ぐらいしかない。飽食日本で生まれ育った前世から考えても、まともな料理なんてできっこない。
そして調味料以上に問題なのが火だ。電磁調理器なんてものはないし、ガスコンロさえない。あるのはかまどだけ。こんなものでどうやって火加減を調整すればいいんだ。
なので俺は考えた。温度計だ。鍛冶屋に無理言って作らせた鉄と銅のぐるぐる巻きの温度計。正確な温度の目盛りなんか入れてない。ただ料理が上手くいったときの場所を刻んであるだけ。
これで火加減を見ながら料理する。あとは下ごしらえを丁寧にするだけ。これでなんとか食べられるものができるって寸法だ。
血が足りないだろうし、肉でも焼くか? いや、いきなりだと体がビックリするかもしれん。ここは、そうだな……。
イノシシの骨とハーブを煮詰めたスープで肉を柔らかく煮込み、小麦粉をこねて寝かせたものを細く切って合わせる。
ダシも醤油も何もないからなぁ。でもまあ、食べられないこともないだろう。
「食ってみろ」
最初は警戒しているのか、なかなか口に運ぼうとしなかったが、俺がうながすと少女はゆっくりと食べ始めた。
ひと口、ふた口……。よっぽどお腹が空いていたのか、がつがつと食べ始める。
「な、なんですか! これはっ!」
いや、不味かったのは分かるけど、全部食べてから言うのってズルくない?
★☆★ 伯爵家三男クロード視点 ★☆★
「くそう、食料が尽きそうだ……」
辺境を彷徨う。ただひたすら女騎士アデラを助ける、そのためだけに。
「でも負けられない! 絶対にアデラを助けるんだ!」
僕は空腹などものともしないぞ。瞳は真っ赤に燃え滾っているのだ。
負けるな、クロード!
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