08.乙女の危機
★☆★ 女騎士アデラ視点 ★☆★
この見事なまでの編み込み……。
今までの苦労は何だったのかと思うほど、美しい素敵な仕上がりだ。絶対にほどけないわけじゃないけれど、それでも簡単にはバラバラにならない感触はある。
まさかあの怪物にこれほどの芸術的な感覚があるとは……。
少し嬉しくなって編まれた髪を撫でる。
その髪の先には……包帯……。
「なんでここで包帯なんですか! リボンとか、いやそこまでじゃなくても、何かあるじゃないですか!」
やっぱりあいつは怪物、デリカシーとか審美眼なんてどこにもないのだ。
もう一度、頭から毛皮をかぶる。
クマか何かだろうか。ふかふかだけど、獣の匂いが強い。
「あれ? もしかしたら毛皮自体の匂いかも。」
人食い鬼の臭いだと思いこんでいた。でも落ち着いてみたらそうじゃない。これは新しい毛皮の臭いだ。
スンスンっ
寝床の匂いもそうだ。たしかに体臭も混じっているけれど、それ以上に毛皮の匂いが強い。
部屋中を見回してみる。
部屋の隅にも埃はたまっていない。もしかしたら案外綺麗好きなのかもしれない。人食い鬼のくせに。
そんなことよりも。
スンスンっ
今度は自分の体を嗅いでみる。
「臭っ!」
乙女のピンチだった。
「水浴びか、わかった。用意しよう」
そう言われて連れてこられたところは綺麗な湖。
周りには花が咲き乱れ、まるで精霊が出てきそうなほどに水は澄んでいる。
「冷たっ!」
これ、入れるの? 私、人間なんだけど……。
そう思ったのは束の間。人食い鬼は焚火で大きめの石を真っ赤に焼いては、湖にポイポイ投げ入れていく。
「さっさと脱いで入れ。冷たくなる前に」
怪物が余所見をしているうちに、ささっと手早く脱いで入ってみる。暖かいとは言えないけれど、なんとか耐えられる温度だ。
いくつか石をポイポイ追加してもらって、気持ちよく水浴びする。
しばらくするとまた凍り付くほど冷たくなってきたので、陸に上がって焚火にあたった。
そんな私と交代で、人食い鬼が湖に向かう。
え? 入るの?
私の心配をよそに、人食い鬼は裸になると、ずんずん凍り付くような湖に入っていく。
ああ、やっぱり怪物なんだ……。
★☆★ おっさんデブータ視点 ★☆★
冷てえええ~~、死ぬ~~~~っ!
なんで俺、焚火を二つにしなかった! 馬鹿! 俺の馬鹿!
湖から上がったら、焚火にあたりに来るに決まってるだろ!
服着るのは体が温まってからになる、そんなの想像したらわかるだろうが!
それと、もうちょっと隠せ~~~っ!
俺は唇を紫にしながら、凍り付くような湖の中でブルブル震えていた。
オッサン、凍死が先か! 社会的に抹殺されるのが先か!
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