07.心とココロ
★☆★ 剛毛の女騎士アデラ視点 ★☆★
私のこの剛毛、これが呪いじゃなくてなんだって言うのよ。
しっかり固めていても、ちょっと気を許すとすぐにネギ坊主のように逆立つし、三つ編みにしても勝手にほどけてしまう。
もうずっと、物心ついてからというもの、ずっと悩んできた。
それを、それを……この化け物めっ!
そうだ。目の前にいるのは人間ではない、じきに私を食べてしまうだろう人食い鬼。こんな化け物に人の心なんてわかるわけがなかった。
それにどうせ全部見られてしまっている。
そんな諦めからか、気がついたら私は剛毛のこと、その悩みをすべて、目の前の怪物に語ってしまっていた。
「ふむ……おかしいな、竹だって編めるはずなのに……バネ定数の問題か? いやしかし……」
タケ? テイスウ? この人食い鬼は何を言っているんだろう?
やはりこいつは怪物。言葉は通じるけど、意味が分からない。
「試したいことがあるんだが……少しその髪に触っていいか?」
「もうどうにでもしてください」
もちろん見られたくない。触れられるなんてもっとイヤだ。
でももう、どうなってもいいや。変なことをしてみろ、このハリネズミのような髪で串刺しにしてやるんだから!
★☆★ おっさんデブータ視点 ★☆★
勝手にほどけるなんて雑な仕事だぜ。技術者ってもんが分かってなさすぎる。
ここは本物の腕の見せ所だ!
俺は二度の人生の中で、女性の髪なんて今まで一度も編んだことは無い。しかし電線ならば手の皮がすりむけるぐらいには編んできた。
無理、なんて言われたら、もう何があっても後には引けないのだ。
許しを得て、彼女の背後に回って髪のたばを手に取る。
ふむふむ、この程度なら大したことないな。AWG単線だと……ならばこの程度づつ纏めて……五つ編みでいくか。
さらさらと手を動かして豊かでつややかな髪を平編みにしていく。
おお、これはサラサラすぎて編みにくいぞ、シリコン被膜以上か!
負けるか、くそ~っ!
…………。
……。
よし! 完成だ! 我ながらうまくいった。
そう簡単にほどけないだろうけど、端っこは適当に包帯でしばっとこう。
まあ、ざっとこんなもんだな!
待て、俺は一体何をしたんだ……。
作業を終えて、俺は完全に我に返った。
ああああ~~~、女の命の髪をさわるなんて、俺は馬鹿だぁぁぁぁぁぁぁあああ!
つい技術者魂に火がついてしまった自分の馬鹿さ加減を、俺は大いに呪うことになった。
★☆★ ???視点 ★☆★
女騎士アデラが消えた王宮の一角で、一人の男が肩を落としてたたずんでいた。
「ああ、アデラ、僕はまた間に合わなかったのか?」
その姿の主は伯爵家の三男、クロード。伯爵家、それだけで周囲からは羨望のまなざしで見られるだろうけど、実際にはなんの価値も無い。
仕事も無ければ結婚もできない。ただの飼い殺しの部屋住みだ。
死ぬほど頑張ってやっと仕事を見つけた。でもその時には彼女は別の貴族の婚約者にされていた。
そして今、その婚約を無理やり破棄されて……。
彼女はどこにいるのだろう、諦めるのか?
まさか! 今この時、怪物に捕まってその餌食にされようとしているかも知れないのだ。
「待ってろ、アデラ! 絶対に助けてやる!」
王宮を飛び出し、一路、女騎士アデラの元へ!
クロード、始動!
無事に女騎士アデラを助け出すことはできるのか!
クロードを応援してくださる皆さん、ぜひとも★感想と評価★をお願いいたします!




