10.追手
★☆★ 女騎士アデラ視点 ★☆★
小麦粉を練ったものと、お肉を茹でただけのシチュー。
それがなんでこんなに美味しいのよ!
私は料理はそんなに得意ではないけれど、でもこれはわかる。素材は単純かもしれない、でもこの奥深さ。宮廷料理なんかまるで勝負になってない。
料理はまごころ。そのはずだ。
それなのになんでこんな、人の心なんて持ち合わせてないはずの人食い鬼の料理がこんなに美味しいのか。
「ありえません、絶対にありえな~い!」
思わず叫んでしまった私はけっして悪くないと思う。
「そうだな、旨い物ではない。食べられればそれで問題ない」
しまった、怒らせたか? 少し冷や汗が流れたけど、どうやらそうでもないらしい。
まさか怪物にとったら、これが不味いものだっていうの?
やっぱり生の人間の肉じゃないと……
物思いに沈みつつ、結局三杯もお替りしてしまった私の耳に、山小屋の外から慌ただしい物音が飛び込んできた。
まさか追手? それとも誰かが助けに来てくれたの?
★☆★ おっさんデブータ視点 ★☆★
その通り、それはただの、うどんもどきというか、ラーメンもどきだ。そんなものが美味しいはずがない。
まあ、しっかり食べられたみたいだし、それで十分ってものだ。
食べ終わった食器を台所に運んでいると、何やら外が騒がしい。
山小屋から顔を出してみると、どうやらこの少女を追いかけて来た人たちがまたやって来たみたいだ。人数も倍ほどに増えている。
「で、出たぞ、人食い鬼だ!」
「取り囲め! 逃がすな!」
う~ん、だから挨拶もできないのは、社会人失格なんだってば。
あんまりこういうのは得意じゃないけれど、年長者としてちょっと教えてあげないといけないんだろうか。
面倒だな。
「あのぉ~……」
まずは声をかけてみる。
「来たぞ! かかれ!」
「一気に畳みかけろ!」
うわっ! 危ねぇっ! 剣を叩きつけて来るなんて!
さすがにそれは放っておけない。武器は人に向けちゃ駄目なんだぞ!
柄じゃないけど、これはちゃんと教えてあげないと。
「あのね、君たち」
ゆっくりと切りつけてくる相手から剣を奪って、ぽいっと投げ捨てる。
たとえゆっくりでも、当たると怪我するからね!
ぽいっ、ぽいっ、ぽいっ!
「つ、強いぞ!」
「怯むな! かかれ、かかれ!」
飛び掛かってくる相手を抱っこして、ぽいっと投げる。
ぽいっ、ぽいっ、ぽいっ!
半分ほどぽいっとしたところで、追手の人たちは一瞬で逃げていった。
もう、なんなんだろう、まずはちゃんと話し合いをしようよ……。
俺、喧嘩とかしたことないんだからね!
★☆★ 宮廷の豚貴族、キンマン伯爵視点 ★☆★
「伯爵! アデラを追った者たちから知らせが届いております!」
「ブヒブヒ、やっと捕まえたブヒか?」
「いえ、それが……治療費の請求書です……」
「それ、どういうことブヒ~!」
あの女騎士、まさかそこまで強かったとは!
いや、所詮は女、追手が弱すぎたに違いない。
「絶対つかまえてブヒブヒ言わせてやるブヒ~!」
女騎士アデラに新たな追手が迫る!
オッサン、思ったより強かった!
しかし女騎士に新たな追手が迫る!
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