01.女騎士×オッサン
よろしくお願いします。
一話短めでサクサク読めそうな話です。
「アデラ、お前との婚約は、今この場を持って破棄させてもらう。異存は認めん!」
呼び出しにわざわざ来てみれば、突然の婚約破棄の申し出だった。
人を馬鹿にしているにも程がある。
「よろしければ、理由を教えていただいても?」
「ほら、そういうところだ! そもそも女だてらに騎士などと。女は男に黙って従っておれば良いのだ!」
ああ、やっぱりそうか。
この男は、自分よりも私の方が強いことが気に入らないのだ。
国を守るために騎士になったというのに、見た目の華やかさだけで近衛に配属されてしまったのも、すべてこの男が裏で手を回したからだ。
「心配しなくても、ちゃんと次の嫁ぎ先は決めてやったぞ。キンマン伯爵がお前のような男女を貰ってくれるそうだ。有難く思え!」
キンマン伯爵と言えば、女をおもちゃにするだけが趣味のデブでいけ好かない男、豚貴族ではないか。当然ありがたいなんて思えるはずがない。
言いたい事だけ言って去っていく、かつての婚約者の後姿を呆れたような顔で見送りながら、私の頭はフル回転する。
この国、特にこの王宮では、女にまともな自由など無い。この無理やりの婚約を拒否することなんてできない。
このまま黙って王宮に居続ければ、間違いなく伯爵のおもちゃにされて自分の人生は終わりだ。
せっかく騎士になれたというのに。
もう逃げる以外に道は無い。そうだ、辺境に行こう!
夜の闇に紛れて、私は王宮から立ち去った。
★☆★ ??視点 ★☆★
「う~ん、もう朝か、面倒くさいな」
朝日が明るく照りつける辺境の山小屋で、俺は尻をぼりぼり掻きながら、のっそりとベッドから這い出した。
以前は日本でおっさんの技術者をやっていたが、今では異世界でデブータの名前でオッサンをしている。
一応、冒険者っていう仕事はあるけれど、面倒くさいんで今では町はずれの山小屋で狩りをしながら一人暮らしだ。
ああ、尻がかゆい。虫にでも食われたかな?
「さて、今日はどうするかな……」
転生したときは「よし、チート来た!」とやる気に満ち溢れていたけれど、神様に貰った能力は、健康、強靭、そして怪力。チートどころかただの一般人レベルで、ちっとも大したことはない。
いや、大したことないどころか、生活レベルは転生前よりもショボくなった。
ダメだこれ、転生ガチャが外れたってやつだ。そう悟ったのはもう二十年以上も前のことになる。
「もうちょっと寝る……、いや、たまには散歩でもするか」
剣術の練習……そんなことをしたところで、何かが変わるわけでもない。
努力っていうのは、機会に恵まれている奴がやるもので、機会の無いものがやったところで未来は何も変わらないからな。
二度のオッサン生活で、それぐらいは骨身にしみてわかっているのだ。
丈夫な革の服にそでを通し、腰に剣を吊るすと、俺は裏の山を登り始めた。別に目的なんてなんにもない。ただの散歩、暇つぶしだ。
人があまり通ることがない獣道を、バサバサと大きめのナタで藪を払いながら進んでいく。
しばらくそうして進んでいるうちに……飽きた。
なんで俺はこんな、何の役にも立たないことをやっているんだろう?
ガサッ! ガサガサッ!
「な、なんだ?」
「助けて……」
草むらから突然、小柄な人影が飛び出してきた。
声が高い。少年か?
胸に飛び込んできた少年を思わず抱きとめる。
高価そうな服だ。それにこの髪、プラチナブロンドってやつか?
もしかしたら貴族……、いや、大きな商会の子供かもしれない。
なんてこった、気を失ってやがる……。
これは嫌な感じがするぞ。面倒なことになりそうだ。
そう思って耳を澄ましてみると、少年がやって来た方向から、草の揺れる音、そして何やら話し声が聞こえてくる。
「こっちで間違いない、行くぞ!」
「ああ、もう捕まえたも同然だ」
どうやら少年を追いかけてきたようだ。
「くそう、やっぱり面倒ごとじゃないか……」
俺は手にした大ぶりのナタを前に大きなため息をついた。
ああ、尻がかゆい。
逃げだした女騎士アデラ。
彼女は一体どこで何をしているのか!
これは面白そう! そう感じてくださった皆さん、ぜひとも★感想と評価★をお願いいたします!




