第四章 VS 石の巨兵
拝読していただきありがとうございます。
第四章です。
互いが睨み合う。
その視線には、微塵の恐怖もなかった。
ルシウスの額を伝わった汗が、地面に落ちた――
その瞬間。
先に仕掛けたのはゴーレムだった。
「ガァァ――――ッ!!」
咆哮と同時に、ゴーレムが地面を力任せに叩きつける。
衝撃波が走り、後方にいた2人の足元まで震わせた。
「なんだ!脅しのつもりか!」
「いや違うッ!見ろッ!」
ルシウスの指示にレオンが頭を上げる。
「なッ…!?」
何と、ゴーレムの周りに無数の石が浮いていたのだ。
「なんだあれは!?」
「くッ!(何をする気だ!)」
2人が想像もつかない現象に戸惑った矢先――
「ウホッ!」
合図のような一声とともに石の群れが真っ直ぐ2人に向かっていった。
シュンッ!!
石は飛翔の途中で空気を裂き、刃のように研ぎ澄まし、その殺意を増していった。
「噓だろッ!?。」
咄嗟にレオンはルシウスの前に出た。
「――ッ!やらせるかッ!!」
「はッ!!」
―《イージスの盾》―
ルシウスは剣を解き、両手を前に突き出す。瞬間、巨大な盾の形をした魔法障壁を展開した。
「うおッ!!流石ルシウス!」
「浮かれるな!!来るぞ!!」
ガガンッ!!
ガガガンッ!!
ルシウスの盾に石の弾丸が被弾した。
「うぐッ!!(馬鹿な…最高硬度で生成した盾だぞ!?)」
あまりの衝撃に体制が崩れそうになるルシウス。
彼は歯を食いしばりながら、その猛攻に耐えていたが――
ピキッ…!
「――ッ!?」
パリーン!!
盾に亀裂が走り、ついに一発が貫通した。
「(まず―――ッ)」ルシウスが死を悟った時。
「でりゃッ!!」
燃え上がる拳が、石の弾丸を砕いた。
「レオンッ!!」
「へッそう簡単に、ダチをやらせるかッ!!」
「おりゃ!!」
レオンは拳を振るい、弾丸を次々と拳で迎撃していった。
「ルシウスッ!!お前はッ!盾に注力していなッ!」
「後は、俺が!全部ッ!!ぶっ叩く!!」
「はぁぁああッ!!」
ガンッ!
バンッ!
ボォッ!!
炎を纏った打拳の威力とともに上がり、石の弾丸を次々迎撃していった。
「ふんッ!相変わらず無茶だな!」
「はぁッ!!」
ルシウスは一瞬の余裕を得て、盾の強度を引き上げた。
「小癪ッ!!」
苛立ちを露にしたゴーレムは、さらに石を引き寄せる。
ブンッ!!
ブンッ!!
弾数も、威力も更に増した。
「ぐッ!!何が”小癪”だ!それは、こっちのセリフだッ!!」
吠えるレオン。
「まずいぞッ!!こっちも盾が持たない!!」
迎撃しながらも、徐々に押されていく二人。
「痛ッ!!このッ!!」
「くッ!!」
致命傷ではないが、石の弾丸が徐々に二人の体を削っていった。
「そっちが飛び道具なら――こっちもだ!!」
「はぁぁぁ!!」
―《爆・炎》―
レオンは両拳を前に出し、特大の炎を盾に向かって噴射した。
ボォォォ―――!!ッ
激しい火柱が盾を押し当てた。
「―――ッ!!なるほどッ!!」
ルシウスが即座に意図を理解する。
「いくぞルシウスッ!!」
「ああッ!!」
「「はぁぁぁ!!」」
二人の気合いと供に、盾が炎に押し出されていった。
その一撃が、石の弾幕を押し返し、
遂にゴーレムの元まで迫っていった。
「ウホッ!?」
まさかの反撃に驚愕するゴーレムは、迫って来る炎の盾を腕で防いだ。
ドッカァァーーン!!
「ウホォ―ンッ!!?」
凄まじい衝撃に、腕のガードが弾かれ、巨体がよろめいた。
「ウッ…!」
「ニン、ゲン、フゼ、イ…ガ!」
体制を立て直し、二人を睨むゴーレム
その目には怒りが滲んでいた。
はぁ…!
はぁ…!
肩で息をしながら、二人も睨み返す。
全身はかすり傷だらけ。
それでも――二人は笑っていた。
「ふんッ!何か言ってるぜ。レオン…」
「へッ人間様を舐めるから、こうなるんだぜ!ゴリラ野郎ッ!」
一歩も引かない、三つの視線。果たして決着は如何に…。
――場面は変わり、陽光が照りつける大平原。
どこまでも続く草原の風を切りながら、ケンタウロスの集団が移動の合間に休息をとっていた。
子供たちは駆け回り、草を編んで遊び、大人たちは穏やかな笑みを交わしながら道具の整備や食糧の分配を行っている。
そこには束の間の安らぎがあった。戦もない静かな時間が流れていた。
だが――その中心に、ひときわ異質な存在がいた。
人間の女性。
肩まで伸びた髪を風になびかせながら、ケンタウロスたちと一緒に料理の手伝いをしていた。
「…ッ」
ふと、彼女の手が止まる。
混ぜていたスープが静かに揺れ、杓文字が鍋に触れる音が小さく響いた。
風向きが変わった。
彼女は顔を上げた。
遠く――遥か彼方の地平線の方角。
「…もしかして、あの子?」
胸騒ぎが抑えられず、彼女はその方向を見つめ続けた。
「どうしたんだい?怖い顔して」
異変に気づいた族長が声をかけた。その瞬間。
「ごめん!ちょっと出かけてくる!」
彼女はそう言い残すと、返事を待たず疾風の如く、駆けていった。
「あの子…迷惑かけてなきゃいいんだけど!!」
草原を懸ける彼女。
その眼差しの先――遠く、地鳴りがこだまする。
―――再び、戦場へ。
先に動いたのは、またしてもゴーレムだった。
しかし、今度は牽制ではない。直接2人を狙ってきた。
一直線に突進するゴーレム。
「――ッ!来るぞ」
ルシウスは即座に魔力を収束させ、蒼い剣を再生成し、攻撃に備えた。
「おうッ!」
レオンも拳を構え、重心を落とした。
――次の瞬間、
グンッ!!
巨体からは想像もできない、獣のような加速。
「速ッ!!?」
「――ッ!避けろッ!!」
2人は左右に回避へ跳んだ。
「ウガ―――ッ!!」
ゴーレムは右腕を石斧に変形させ、そのまま地面へ叩きつける。
ドカァァーーーンッ!!
衝撃波が地面を裂いた。砕けた土砂が宙に舞った。
回避に成功したものの、その余波で二人の身体は大きく弾き飛ばされた。
「うおおおおおッ!!」
「ッて!そういつまでも―!!」
レオンは踏ん張る。
「ぐうううッ!!」
「やられっぱなしでいるかッ!!」
剣を地面に差し、踏ん張るルシウス。
「「いくぞぉぉ―――!!」」
二人の掛け声と共に、真の反撃が始まる。
「はぁッ!!」
初めにルシウスが切りかかる。彼は無防備になったゴーレムの脚を攻撃した。
ガキィーンッ!!
火花が飛ぶ。しかし、ゴーレムの硬い装甲に阻まれてしまった。
「硬いッ!ならッ!…」
即座に狙いを切り替え、関節部へと剣を滑りこませた。
「ウホッ!!」
確かな手応え。
だが、次の瞬間、ゴーレムがルシウスに向かって斧を振りかぶった。
「くッ!!」
「だぁッ!!」
ルシウスのピンチにレオンがゴーレムの顔面を殴り、斧の軌道を逸らせ、攻撃を防いだ。
「ウゴッ!」ゴーレムが叫ぶ。
「大丈夫か!」
「あぁッ!助かった!」
すぐさまゴーレムがレオンを掴もうとする。
「おっとッ!」
レオンは身軽にかわし、間合いをつめ、更に追撃をする。
「ウゴッ!!」
レオンの重い一撃がゴーレムの胴体に響く。
「へッどうだ――ッ!」
着地の瞬間。
「あッやべ!!」
巨大な腕が薙ぎ払われる。
「レオンッ!!」
ルシウスの斬撃がゴーレムの脚関節を切り裂き、ゴーレムの体制が崩れる。
腕の軌道がそれ、レオンは紙一重で回避した。
「サンキュー!ルシウスッ!!」
「ったく!!無茶しやがって!」
ルシウスは思わずレオンの手を見る。
「お前ッ、手、大丈夫か!?」
直接、硬い皮膚を殴っていたレオンは、ルシウスに心配される。
「岩盤サンドバックッ!!帰ったら。教えてやるぜ。」
「聞かなかったことにする。」
レオンの無茶苦茶な練習メニューを聞いてドン引きするルシウス。
「さッ気を取り直して!!いくぞッ!」
レオンが号令する。
「おッ、おう!!」
ルシウスもそれに続く。
「チョコ!マカ!スルナ―――!!」
ゴーレムは怒りに任せ腕を振り回した。
吹き荒れる風圧は、一撃でも食らえば、致命傷になりかねない。
――だが、
二人は臆しなかった。
アイコンタクトを取り、同時に踏み込んだ。
「はぁ!」
ルシウスは脚を中心に、連続で切りかかった。
(動きは俺達が有利だ!!)
「ウホッ!イタイ!?」
鋭い痛みがゴーレムを襲う。
その斬撃のスピードはゴーレムの動きでは捌き切れず、動きが鈍った。
その瞬間――
「しゃあッ!!」
レオンの重い一撃が胴体を穿った。
「ウゴッ!ウボォ!!」
“紅い炎の軌跡“と”蒼い閃光“
二人の連携が嚙み合い、石の巨体が確実に追い詰めるらていく。
そして―――
「はぁぁぁ!!」
遂にルシウスの一撃がゴーレムの硬い装甲を切り裂いた。
同じ箇所を攻撃していったルシウスの斬撃がやっと聞いたのだ。
「ウッホオォォ!?」
まさかの破壊にゴーレムが戸惑う。脚を破壊されたゴーレムは大きく体制を崩した。
「レオンッ!!」
「シャアア――ッ!!」
―《爆・炎・拳》―
拳を打ち込む瞬間、炎の火力を一気に上げ、その勢いと拳の威力を合わせたレオンの攻撃。
追い打ちするレオン。
崩れ落ちるように倒れるゴーレムにその拳を食らわした。
ボォォッ!!
ガァンッ!!
「ウゴッ!!ガ―!!」
レオンの拳がゴーレムの顔面の一部が剝がした。
ドッ!! カン―――――ッ!!
地面に思いっきり叩かれたゴーレム。全身を巡らせいた赤いエネルギーは、みるみる弱くなった。
はぁーッ、はぁーッ
はぁーッ、はぁーッ、はぁーッ
それを見たレオンとルシウス。二人とも息が上がっていた。
ルシウスの剣はボロボロで点滅していた。
レオンも火力が弱くなり、自慢の拳も血まみれになっていた。
限界が近かった。
「はぁッ!はぁッ!どうだ!ゴリラ野郎ッ。はぁ。はぁ」いつもの軽口を言うレオン
「はぁ、ぎりぎり、だった、けどな。はぁ。はぁ」ルシウスが突っ込む。
「オレッ…負ケル…?」
「…イヤッ!違、ウ!」
ゴーレムは過去を断片的に巡っていた。
「大丈夫?」
「よし、今日から私がママだ!」
「名前は――。」
――”あの人”に出会った日。
――初めて、家族の温もりを知った日。
「モウ、家族、失イタク、ナイ!」
「――モ、本当、ノ、家族 失ナッタ。」
「――モ、イッパイ、悲シンダ!」
「ダカラ、オレ、誓ッ、タ!」
「今度ハ、オレ…ガ。守、ル!!」
その瞬間―――
ゴーレムの瞳が眩く輝いた。
「ゴガァァアアァッ――!!」
咆哮と同時に、全身から凄まじい熱波が噴き出す。
「あッ!!!熱ッ!」
「ぐッ!!!」
灼熱が空気を歪め、二人は思わず後退した。
ドカァーン!!
耳を裂くような爆音が轟く。
「今度は、なんだ!!」
「レオン、上だ!!」
見上げた先、
なんとゴーレムが、巨体を宙へと跳ね上げていたのだ。
「ウォオ――ッ!!」
そのまま二人めがけて地面に降下する。
バァッコォー――ン!!
大地が爆ぜ、巨大な土煙の柱が立ち上がった。
その衝撃が森全体を揺るがし、そのあたりの木を薙ぎ払った。
そこには、深く抉られた巨大なクレーターができていたのだ。
「あっ…!!ぐッ!!ぐはッ!!」
遠くにに飛ばされ、地面に何度も叩きつけられるルシウス。
「くそッ…!まだ…そんな力が…!?」
「あいつは!?…――いた!?」
「うぐッ!?うぐぐッ…!!」
視線の先。
地面に頭から突き刺さり、もがいているレオンの姿を見つけた。
――生きている。
その事実に、一瞬だけ安堵したルシウス。
だが――
土煙の中から、ゴーレムが現れた。
全身に無数の亀裂。
石の皮膚が崩れ落ち、隙間から白い蒸気が噴き出している。
それでも、その歩みは止まらない。
足を引きずっているが、確実に――レオンに確実に迫っていた。
「まずい!!レオンッ!!!」
ルシウスは叫び、走り出した。
「くそッ!おいこっちを向け!!」
魔法を収束させ、弓矢を生成。
放たれた一矢が――
プシュンッ!
カンッ!
ゴーレムの頭に命中したが、まるで意に介さなかった。
ドシンッ!!
ドシンッ!!
重い足音が、死の距離を。刻んでいく。
「うぐぐぐッ…ッ…ぷはぁ…!!」
「やっと抜けたぜ!…ルシウスはどこに――ん?…あっ!!?」
レオンが地面から抜け出したが、遅かった。
「マズハ、一人!!」
ゴーレムが腕の斧をゆっくり振り上げた。
その間合いは、もはや――致命。
「くそッ!!このままじゃ間に合わないッ!!」
ルシウスは更に焦った。
「俺は…また…」
ルシウスが歯を食いしばり、目から涙をこぼしながら、手を伸ばした。
その瞬間――視界が暗転した。
脳裏に蘇る、忌まわしい記憶。
ルシウスと同じ制服を着た一人の男性。次の瞬間――その男性が何者かに貫かれた。
「―――ッ!!」
ルシウスの顔に血しぶきが飛ぶ。
「だい…じょうぶ、…か?ルシ…ウ…ス…。」
その声は、次第に消え――
男がルシウスの腕の中で動かなかった。
闇が、すべてを覆い尽くす。
――しかし。
「ルシウス…」懐かしい声が響いた。
「一人で強くなろうとしないこと。」
母・セリカの言葉。
「そうだッ!!」
ルシウスは、はっと顔を上げた。
「俺はッ!!一人で強くなったんじゃない!!みんなだッ!!みんながいてくれたから!!今の俺がいる!!」
脳裏に浮かぶ、母の姿。親友たちの笑顔、これまで出会って来た大人たちの背中。
「みんなの為にッ!!」
「あの人が信じた平和の為にッ!!!」
「もう二度とッ!!後悔しないッ!!全力でッ!!守るんだぁぁ―――ッ!!」
ルシウスの瞳が蒼く輝を増した。
闇が晴れ、視界が澄み渡る。
伸ばした手を強く握りしめる。
――覚悟は決まった。
彼は手のひらを後ろに向け、魔力を解放する。
生成された槍の反動を利用し、ルシウスは大きく飛躍した。
ゴーレムの腕が上がりきった刹那――
ルシウスはレオンの前に勢いよく割り込んだ。
「ルシウス!!?ッ馬鹿野郎ッ!!逃げろ!!」
親友の叫びを、振り切る。
「ウガァァ―――ッ!!!二人マトメテ―ッ!!潰レロッ―ッ!!」
ゴーレムの一撃が降り注ぐ。
ルシウスは魔力をひり出し、今までよりも蒼く輝く剣を生成した。
その眼差しは、鋭く――揺るがない。
「うおぉぉぉッ―――!!!」
―《栄光の剣 エクスカリバ―》―
極限まで魔力を高めた剣を全力で振った。
剣と斧が交差する。
ガァンッ!!!
ピキッ!!!
ガガッ!!
グウゥゥ―――ンッ!!!
蒼い火花とお供にルシウスの剣が斧を砕いていく。
「「――ッ!!!」」
ゴーレムとレオンがその光景に驚愕する。
「はぁぁぁッ!!!!」
止まらない。斬撃はそのまま振り抜かれ、その斬撃波がゴーレムの片腕ごと打ち砕いた。
「(――やったぜ、母さん)」
微笑みながら、ルシウスは崩れ落ちる。
両腕は限界を超え、力が入らない。
それでも――その顔には、確かな達成の色があった。
「ガッ!!」
――しかし、ゴーレムが踏ん張り、もう片方の手でルシウスを殴ろうとした。
「はぁぁッ!!」
その瞬間、割り込んだのはレオンだった。
――なんと頭突きでその拳を跳ね返した。
「ウホォ!!ッ」
「なッ!!」
あまりにも予想外の反撃に驚愕するゴーレムもルシウスも息を吞む。
当然、無傷で済むはずもない。レオンは頭から血を流していた。
それでも――その瞳の闘志は、消微塵も揺らいでなかった。
「(同ジダ…青イ…ソイツ…モ。赤イ…コイツ…モ。アノ人ト、同ジ目ヲ、シテイ…ル。)」
「ハッ!!」
その眼差しを見た瞬間、ゴーレムはの記憶に”あの人”の姿と重なった。
育ての親であり、本能で“決して敵わない”あの姿に。
「アリ、エッ!グフーッ!!」
怯みを見逃さず、レオンは足に炎を纏いレオンは胴体に向けて、回し蹴りを食らわした。
―《爆・炎・脚》―
レオンのブーツとズボンの一部が焼けた。
灰と石の破片が飛び交いながらゴーレムは後ろに後退した。
レオンの炎は汗腺から放出できる。つまり理論上身体のあらゆるところから噴出可能だ。だが、この戦闘で、拳以外から、炎を噴出した。未発達な汗腺からの噴射は激痛が伴っていた。
それでも、レオンの表情は激痛で歪んでいなかった。
「ルシウス…すまねぇ。
また、お前一人で苦しまちまって」
その言葉に、ライラの声が脳裏によぎる。
――「そしたらさ…ルシウス…凄い怖い顔をしてた。」。
レオンの瞳が紅く、輝いた。
「もうッ!お前を一人にさせねェ!!俺がお前を守るッ!!」
「おいッゴリラ野郎ッ」低い声で言った。
「ッ!」
「逃げるならッ…今だぜッ。」
その目に宿ったのは、紛れもない”殺意”。
ゴーレムの身体が震え、一歩、後ずさる。
――理解したのだ。
この小さき人間が、自身よりも遥かに大きな存在になった事を。
「ウガァアアアァ―――ッ!!」
ゴーレムは自身の恐怖心をかき消すように叫び、残った腕でレオンを殴りかかった。
「忠告は...したぞォォォッ!!!」
レオンは殴る寸前、足を炎の噴射で力強く踏み込んだ。その反動のエネルギーを、胴体に伝え、更にそれを腕に伝えた。そのエネルギーに肘と腕からの噴射を加え、拳に載せた。
―《爆・炎・撃》―
刹那。
凄まじい衝撃と熱が炸裂して、ゴーレムの拳を粉々に砕け散った。
遅れて――
熱波と、衝撃音が辺り一帯を飲み込む。
「あっ――!!!」
離れた位置にいたルシウスにまで、その余波が届いた。
吹き飛ばされたゴーレムは、後方の距離まで吹っ飛び地面に激突した。原型はとどめていたが、両腕、片足は破壊され、もはや戦闘不能だった。
特にレオンに破壊された腕は胴体まで達し、内部にある赤いコアまで見えていた。
「なんだ…今の攻撃ッ!?」
「ッ!…レオンは!?」
ルシウスは必死に親友を探す。
「レオン?レオ――ンッ!!」
ルシウスが駆け寄った。
駆け寄った先にレオンは立っていた。
服はズボン以外ほとんど焼け焦げ、灰がまっていた。
血が流れていた。無理な噴射のせいで汗腺から血が流れていた。特に、ゴーレムに食らわした腕の出血がひどかった。
「ようー。ルシウス…」
「どうだ…。咄嗟にしちゃあ、悪くねぇ技だろ…」
満身創痍のレオンだが、笑っていた。
「レオン…。お前ぇ…。」
ボロボロ親友を前に、ルシウスの声は震えた。
―守ると誓ったのに、俺はまた―
しかし、その気持ちを察したかレオンは言った。
「へへッ全身、クソ痛いけど、俺、お前のおかげで、また強くなれたんだぜ!」
―あぁ、そうか俺はまた一人で、何もかも抱え込もうとしたのか―
「レオンッ!」
「俺も、お前がいたから、ここまでやれたんだ。」
「ありがとう…。そしてごめん…。」
ルシウスは涙を堪え、親友を誇りに思い、守ってくれた感謝と自身の力不足の謝罪を述べた。
「馬鹿野郎ッ!」
「何謝っているんだ!」
「俺だってお前に助けてもらってばっかりだッ!お前の”技”も”覚悟”も凄かったぞッ!!」
レオンもまた、胸を張った。
「…なぁルシウス」
「一人で勝手に行くなッ!」
「行くなら俺も一緒に行くッ!一緒に強くなろうぜッ!!」
「…あぁ」
「一緒に…。」
二人は拳を突き出し、固く打ち消した。
――激戦を越え、さらに深まった。
だが――
「マッ…モルッ!!」
「「ッ!!!」」
第五章 邂逅に続きます。




