第十二章 オーラ
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第十二章です。
「え?」
レオンが首をかしげた瞬間、
空気が震えた。
グガァァァッ――――!!
直後、空いっぱいに響き渡る轟音と咆哮。
「な、なんだこの音――ッ!!?」
レオンが耳を塞ぎ、ルシウスが顔を上げた瞬間、
彼らの視界に巨大な影が現れた。
「なッなぁ…あれ……。」
「噓…だろ。」
震えた手で空を指した。
「「ドラゴンだぁ――――ッ!!!」」
身体から炎を出し、怒り狂う火竜がこちらに向かって飛来していた。
そのドラゴンは、なぜか頭の角の片方がなかったのだ。
ゴガァァァ――――ッ!!!
その咆哮だけで、空気が震え、地面が波打つ。
「くっ!!どうしてこっちに、向かっているんだぁッ!!」
「わかんねーよ!!しかも、めちゃくちゃ怒ってるじゃねえか!!」
取り乱すルシウスとレオン。
「ウホッ!?ウホッ――!?」
尋常じゃない怯え方をするゴリを見たサラは、何かを察し、彼を引きずり出した。
「ッ!ゴリッ! あんたッ!!何した!!」
「ウホッ!?…知ラ――」
目を逸らすゴリ。
「誤魔化すんじゃないわよ―ッ!!」
サラの怒号が響いた。
「ウホッ!!!散歩シテ、タラ、ソノドラゴン、寝テタ。角ガ、取レソウデ…カッコイイ、カラ、削ッテ、持ッテ、帰ッタ…。」
そう言うとゴリは指を差した。その先には宴会で自慢していた。巨大な角があった。
「バカかぁ!お前はァァァッ!!!」
レオンのツッコミが空に響く。
「ゴリ!!あんたって子はぁ!!人のモノ勝手に盗むじゃないわよぉ!!!」
血管が浮き出る程のサラの怒号が響いた。
「お馬鹿さんね。この子は…。」
ガルデアは溜息をつき、冷静に言った。
「つまり…ッ!あのドラゴンは角を折られた報復に来たってことかッ!!……」
とルシウスが顔を引きつり、焦った。
「ウホ~!!ゴメンナサイィ――ッ!!」
泣き叫ぶゴリが虚しく空に響いた。
ゴガァァァ――――ッ!!!
その声をかき消さんがばかりの咆哮が響き渡った。
ドラゴンがかなり迫ってきたのだ。
魔獣 火竜サラマンダー 危険度S
全身から炎を出し、向かってくる相手を焼き尽くす。普段は火山地帯にいるが、気分転換に色んなところを飛び回る。たくさんの種類のドラゴンがいるが、共通する特徴があり、それは角を自身の誇りのように感じている。
サラがすぐに一族に命令を飛ばした。
「全員っ! 急いで離れろ!!」
大人のケンタウロスたちが、子どもたちを案内しながら、草原の端まで逃げるように駆けだした。
蹄が地面を鳴らし、子どもたちの泣き叫ぶ声がこだまする混沌とした状況――
だが、更なる悲劇が襲った。
グガァァァ――――ッ
空のドラゴンが翼を広げ、巨大な火球を生み出すのが見えた。
「まずいッ! あの規模じゃ……この一帯ごと焼き払われる!」
避難誘導していたルシウスがその被害規模に慄いた。
「ルシウスッ!!俺たちで時間稼ぐぞぉ!!!」
「あぁ!!」
ルシウスは、空に向かって巨大な盾を展開し。レオンは拳に火力を貯めた。
しかし、二人は知っていた――自身の魔力では、あの火球を防げないと。
それほどまでに膨張する火球。その熱が、遥か下降にいたガルデアたちまで届いていた。
――くそッ!!ここまでか…。母さん、先輩ッごめん…。
――へへッ年貢の納め時ッ奴か…。
悟る二人。その心に絶望が広がった。
その瞬間。
「――諦めるなッッ!!!」
ガルデアの喝が響き渡った。
二人がはっと顔を上げる。
そこには、ただ一人“笑っている”ガルデアの姿があった。
「いいッ!!これから先、あなたの前に、もっと強大な敵が現れる!!
でも絶対に――諦めてはダメッ!!」
彼女の身体が徐々に光始めた。
「恐怖すら自らの糧にして、立ち向かおうとする意志……それこそが、”オーラ”ッ!!!」
その瞬間だった――。
コォ――――ッ!!
ガルデアの身体があふれんばかりの輝きを放った。
「うおおっ!!……まぶしい……!!」とレオンが驚き声を上げた。
「くッ…この光は!?」
身体に刺さる程の強い光の波長が、レオンとルシウスを退かせ、上空の盾を打ち消した。
その光は彼女の全身を包み、まるで心臓の鼓動と同調するかのように脈打っていた。
「すげー!なんて…綺麗だぁ…。」
見とれるレオン。
ルシウスが気づいた。
「これが……昨日の……!」
「そう!言うなれば…“生命エネルギー”――己の魂を燃やし、力に変えるの!!」
説明が終わりかけたその時―――
ボォォ――――ッ!!
大火球が地上めがけて放たれた。
「みんな伏せてッ!!!」
ガルデアが一歩踏み込み、右腕を構える。
ボンッ!!
彼女の右腕が音を立てて膨張した。
「「…ッ!!」」
「――見てなさい!!これが、私の戦い方ッ!!」
――《煌・拳》――
ガルデアは拳を上空に向かって打ち込んだ。その威力が、巨大な拳の風圧と化し、光を纏って真っ直ぐ火球に打ち込まれた。
その直後――衝撃波が爆風と共に荒れ狂い、草原を駆け巡り、レオン、ルシウス、ゴリを吹き飛ばした。
「うおおおおお――――ッ!!!!??」
「だあぁぁぁ――――ッ!!!!?」
「ウッホォォォ――――ッ!!!??」
そして、轟音が後からやってきた。
ビュウゥゥゥ――――ンッ!!
「ははッ!!凄いわね!!前より強くなったんじゃないか!!」
サラが嬉々として言った。
「毎日鍛えているからねッ!!」
ガルデアも嬉しそうに言った。
音速を超え、空を切り裂く打撃が、大火球と衝突した。しかし、その威力はとどまらなかった。なんと、その勢いのまま、ドラゴンに向かって飛んできたのだ。
「ッ!!」
バゴォォ――――ッ!!
「ギャオォォ――――ッ!!?」
ドラゴンの腹に命中した打撃。その腹に巨大な拳の形のクレーターができていた。
「う、嘘だろ……今の火球を……拳で……!?」
「しかも、ドラゴンを殴った!!?この距離からッ!!?」
「ウホッ…!?」
あまりの衝撃にレオンはゴリの頭にしがみつき、二人は茫然と見ているだけだった。
「これが、伝説のガルデア……ッ!!」
ルシウスは信じられない顔をして立ち尽くしていた。
サラは静かに微笑んだ。
「まったく、相変わらず無茶するねぇ。」
「グギャ―ッ!!」
激昂したドラゴンは、全身をさらに燃やし、再び咆哮した。
サラは即座に行動を取る。
「ガルデアッ!! 行くよッ!!」
サラの身体も光だした。
「お願いッ!」
ガルデアが力強く駆け出した。
サラが後ろ足を地面に踏み込み、蹄とガルデアの足裏がぴたりと重なった。
「行っけぇぇぇぇぇッ!!!」
次の瞬間、サラの豪脚が、衝撃音と共にガルデアの身体が弾丸の如く打ち出された。
ビュンッ!!!
「ッ!!ガルデアさぁぁんッ!!!」
ルシウスの心配する叫びが天に響いた。
「ッ!」
怒れる火竜。今度は無数の小火球を連射する。
「噓だろ!!あれは避けられねぇ!!」とレオンが叫んだ瞬間、
「あまいッ!!」
ガルデアが、拳と蹴りの風圧で進行方向を変え、火球を次々と相殺していく。
「噓……空中で方向転換してる……!」
「ありえない…。」
「よく見ておきな坊やたち。あれが――ガルデアの戦い方よ。」
サラが誇らしげに言った。
空中を舞うガルデア。その顔はまるで久々の戦いを楽しんでいるかのように笑っていた――――
「ははッ!!どうしたの!!さっきの勢いがないみたいね!!」
挑発するガルデア。しかし、その眼はしっかりドラゴンを睨みつけていた。
「ガルデアさん――笑っている?」
「あぁ…まるで心の底からな…。」
あまりの戦いぶりに茫然と立ち尽くす親友二人。
「ッ!?おい一個こっちに来た!!」
ルシウスが反応した。
「まかせなッ!!!」
サラが跳躍し、光を纏った後ろ蹴りでその火球を蹴り飛ばした。。
――《烈風脚・煌》――
「ふ――ッやれやれ。」
「えッ!!?サラさん!!?オーラ使えたのッ!!」思わずレオンが叫ぶ。
「当然ッ!!」
「…ッ!!」
ルシウスはただ黙って見ているだけだった。
ドーンッ!
ボンッ!
空中では、轟音と炎と光が彩っていた。
「あぁ――懐かしいわ。この感覚…。この殺意…。」
ガルデアは悦に浸っていた。空中は完全に彼女の独壇場と化していた。
間もなく、全弾を弾き返されたドラゴンは、最後の手段に出た。
「ゴギャァァ――――ッ!!!」
怒りのボルテージを限界まで上げるドラゴン。
次の瞬間――全身から炎が吹き上がった。
それはまるで“炎の鎧”を纏ったドラゴン。
その顔は血走った眼をし、ガルデアを睨みつけた。
地上にいたサラたちまでその熱波が押し寄せ、草原に引火し始めた。
「まずいッ!!魔力数値が振り切った!!?」
ルシウスがマギポットを見て叫んだ。
「そんなの見りゃあ!!分かるだろッ!!」
「黙りなぁ!!坊やたち!!」
サラが仁王立ちして二人を叱った。
「これしきのことで、寝言言ってたら、生き残れないわよ!!」
笑顔で激励するサラ。
「サラさん!!そんな無茶なぁ!!」
レオンが叫んだ。
「見な!ガルデアをッ!」
「「…ッ!!」」
二人は驚愕した。
なんとガルデアは笑っていたのだ。この圧倒的危機的状況を楽しんでいた。口角が吊り上がり、瞳を恐々と輝かせて、ドラゴンを見つめていた。まるで獲物を見る捕食者のように。
「なんで……?」
「……笑っている?」
理解不能な状況に二人の脳はフリーズ仕掛けていた。
「全く……あいつの悪い癖が出ちまっているさ」
サラは知っていたガルデアは強者を相手する時、自身の高揚感を抑えられないことを。
「ッ!?」
「グギャ――――ッ!!!」
ドラゴンは不気味な笑みを浮かべた相手に一瞬恐怖を覚え、それを嚙み殺し、焼き尽くすと誓い、向かってきた。
「…楽しかったよ。トカゲちゃん。」
「はぁぁぁ――――ッ!!!」
次の瞬間、彼女の咆哮と共にオーラが爆発的に輝く。
その光はまるで第二の太陽。
「ガルデア――!!こっちは大丈夫!!思いっきりッ!!やってちょうだい!!」
「ッ!?」
「サラさんッ!?待って!俺たちまだいる――――!!」
「ウホッ――――ッ!!?」
ガルデアの右腕にすべてのオーラが集束された。
「さぁ、おねんねの時間よ。トカゲちゃん――。」
そう静かに語った。
ドラゴンが間合いに入った瞬間だった。
「はぁぁぁッ――――ッ!!!」
――煌神の一撃――
ドゴォォォォォン――ッ!!
眩い光が天空を覆い、激しい轟音が全てを切り裂くが如く走った。
「ギャオォォォ――――ッ!!」
ドラゴンの悲鳴が響いた。拳が顔面に直撃し、牙や鱗がいくつもの空中に飛び散った。
あまりの拳のスピードで身体に触れる直前には“炎の鎧”が吹き飛び、ガルデアの攻撃をもろに喰らったのだ。
巨体が力なく地上へ墜落する。その様子をレオンとルシウスはただ見てるだけしかできなかった。
「なぁルシウス……。人間ってあんな動きができたか。」
「……ははッ人間じゃあ、ないかもな……。」
「……でもよルシウス……すげーかっこよかったぜぇ」
レオンの瞳に涙が溢れた。
「あぁ…だな……。」
二人はガルデアの戦いぶりを見て、ある共通の感想を抱いた。
――強さこそ、うつくしい―――
ドラゴンが墜落した。その衝撃で大地が揺れ、砂煙が巻き上がる。
火竜はかろうじて息があるものの、身体は痙攣していた。
「……あれが、“英雄ガルデア”かぁ!……やっぱり……すげー!!」
レオンが涙を拭いながら呟く。
「そうだな……」
ルシウスが静かに言った。
「そして、俺たちの――師匠だ。」
感嘆に浸る二人。後ろからサラの声が響いた。
「さぁ、帰り支度をしな……。
あんた達の戦いは――まだ、始まったばかりだよ!!」
上空でその光景を見下ろしたガルデアは、そっと微笑み、ウインクをしながら言った。
「ごめんね♡」
――――今、黄金の光と共に、三人の新たな伝説が幕を開けた。
~第一話 完~
ここまで読んでいただきありがとうございました。
第1話完結です。次回第2話 力戦奮闘をお楽しみください。




