93話 魔法が使えない俺と首席との対談
扉を開けた俺の目の前には、広い空間が飛び込んできて、真ん中には白い豪華そうな椅子。
その椅子の後ろにはベランダがあって、街を一望できるスポットがあるみたい。
そこにいたのは甲冑に身を包んで、赤いマントを垂らしてる白髪を生やした奴の後ろ姿。
街を見下してそんな気持ちいいか?こいつ。しかも、振り向く気配はないな。
いつでも戦闘が出来るように剣を構えながら、ゆっくりその甲冑野郎に近づいてく。
それでも、後ろを気にする気配はないね。舐めてんのかな?
「リーナと・・・誰だ?君は」
「気づいてんならこっち見なよ。客人だぞ」
背中を向けながら話しかけてくるおっさんの声。失礼な野郎だな、目を見て話せっての。
「客人にしては、乱暴じゃないかな?」
「人の親殺しといてよく言うわ。」
「ハハハ、失礼。随分と自信があるんだな?・・・フム、俺の選抜騎士たちがいたはずだが?」
「え?あんなのが?今頃寝てるよ」
「フフフ、腕っぷしには自信があるようだ。で、何の用かな?」
背中が笑ってるよ。マントのヒラヒラが癇に障るなあ。余裕ぶってるその態度も不愉快だし。
「政権交代をしに」
「それはクーデターというのだよ。俺も人の事を言えた義理ではないがな」
「ほんとだよ。その席返してもらうからな」
ゆっくりこっちを振り向く白髪マント。後光がさしてるよ、偉そうだなあ。
顔は、白髪の髭がぽつぽつ生えてる、オールバックの中年っぽいおっさん。さわやかな感じだけど、作り笑顔だってすぐわかるくらい胡散臭い。
「俺はキルスティンの首席、エジールだ。よろしく頼むよ」
「冒険者のたくや。あと、首席名乗るのも今日で最後だからな?」
「ふむ、面白い冗談だな。あと、リーナを連れてきてくれて、感謝するよ」
空気に緊張の糸が張り詰めてるね。
「なんでこんな事してる?」
「あぁ、間引きのことかい?そうだね、一言でいうなら完全な国を作る為だ」
「は?」
なんかよく分からねえこと言ってんなコイツ。
リーナはなんのリアクションを取らないで、ただ真っ直ぐにエジールを見つめてるね。
「俺はね、元々王都の騎士団長だったんだ」
・・・あー、バーグの村を燃やしたサイコ野郎だったか、お前。そりゃこんな事するわな。
「当時、騎士団としてやっていたのは、馬鹿な民衆の粛清だ。問題を起こす奴らの撤廃に勤しんでいた。しかしだね、無くならないんだ。馬鹿は馬鹿なままなんだよ。いくら努めても消えない、変わらない、ゴミだ」
うわー、思想つっよ!
長々オッサンの話聞くのって、ふっつーに嫌なんだよなぁ。説教くせーし。
「偶々さ、ある事件があってね。村で危険な物を製造をしてるって情報さ。俺は思ったよ、コイツらを根絶すればミセシメになるってね。気持ちよかったなぁ、人々の阿鼻叫喚はさ。正義の名の下に天誅を下す。なんて素晴らしいんだろうってね」
いや、言ってる事普通にキモいんだけど。
正義だな何だのぬかして、結局自分が気持ちよくなってんじゃん?
「その時思ったんだ。魔力が低い連中が低俗な事をするんだってね。なら、その魔力が低い奴らを消去して、高魔力の連中のみで運営する国家は俺の理想とする完璧な理想郷なんだってね」
あーうざ。こいつそもそも自分がいっちゃん偉いって思い込んでるだろ。
そろそろコイツ斬ろうかな?
「しかし、俺も鬼じゃあない。低魔力者への救済措置を用意しているのさ」
「へえ、どんな?」
「気になるかな?そいつらだけの仕事を与えてる。魔力増強石の製造を任せてるからね」
「あんな粗末なもの作らせるのが仕事か?」
頭痛くなってきたなぁ。
1ミリも共感出来ないし、言ってる事めちゃくちゃだし、普通に飽きてきたし。
「粗末か、今はな。今後完成した時、この世界は、より豊かなものになる。その為に彼らには理想郷の犠牲になって貰うのさ」
「犠牲?」
お、リーナが喋った。
流石に聞くに耐えなかったのかな?すげぇ握り拳プルプルさせて、身体中震えてるみたいだね。
「そうだ。石を作るため、彼らには研究材料になって貰ってるのさ。素晴らしいだろう?使えないやつが、国の為になるんだ。これ以上の誉は・・・」
うお、リーナが火属性魔法を放ったぞ!?よっぽど頭に来たんだろうなぁ。それはそう。
「リーナ、無機質な奴だと思っていたが、感情があるのだな」
「許さない、全部。街の事、お父様の事」
「父親?あぁ、アイツは相応しくないからな。死んで当然だ。なんなら今から合わせてやる。そのつもりで殺そうと思ってたからな!!!」
あーあ、リーナが泣いちゃったよ。このおっさんほんと、年齢の割に幼稚じゃない?
それで、おっさんが火属性と風属性の混合なのかな?コンパクトな炎の竜巻みたいなのを発動させてきたよ。
はい、斬!
「・・・む!?」
「ったく、大人げねーよおっさん。今からテメーの馬鹿な作戦も、下にいる奴らも、街も、全部ひっくるめて丸く収めっからよ」
ん、リーナが裾を引っ張ってきたけど、不安なのかな?
頭にポンと手を置いて、慰るか。
「すぐ終わらすから、ちょっと待っててね」
こくって頷いて後ろに下がるリーナ。よしよし、おっけーだな。
「はぁ、そうか。お前は噂の魔殺の剣士か?でも残念だ、俺には勝てな・・・」
「わーったって!話飽きたから、とっととかかってきなよ。うざいよおっさん」
ってことで、元騎士団長と戦闘になったよ。




