90話 魔法が使えない俺と前夜
イジャとの邂逅後、暫く歩いて今は夜。
森がひらけて、木々も減ってきた感じ?見通しがいいところで野宿するところだね。
焚き火の周りを囲ってる?俺ら。いや、囲うっていうより1対4の構図になってるね。
無論1はリーナ。
俺の左右と上にアンジェ、ニナ、ミシアが俺にずっとくっついてるもんだから、ちょっと辛い。
こっちはくだらない話をしてるんだけど、一方リーナは黙って本読んでるね?何の本だろう。
「リーナ、何読んでるの?」
「・・・令嬢伝説」
んー、墓穴掘ったな。俺本読まねえから全然分からねえや。
「あーそれ読んだことあります!良いですよね!それ!」
「アンジェ知ってんの?」
「はい!」とか言って、アンジェは内容をペラペラ喋り始めたよ。
なんか、貴族令嬢の両親が悪いやつらに殺されて、国を乗っ取られたと。
んで、逃避した所にたまたま伝説の聖剣が刺さってて、それを引き抜いたらめちゃんこ強くなって、悪い奴らに復讐するって話?らしい?
随分とご都合主義だなぁ。まあ、爽快感があっていいのか。
「そういうのが面白いんだ?」
「わたくしには理解しかねるわね」
「ニナ文字分からないのです!」
「面白いですよ!ね、リーナさん!」
リーナは無言。もしかして、面白いって感情も分からないとか言わないよな?そうなったらいよいよ俺、親の教育を軽蔑するぞ?
「・・・面白い、というか、この本の主人公。私と同じ」
やばい、なんも言えねえ・・・
リーナって目の前で親殺されてるんだよな?そしたら、本の令嬢と境遇が一緒だから、感情移入してるんだろうなぁ。悲しい。
でも、リーナはここまで一回も泣いた顔を見せないで、ずっと涼しい顔をしてるね。
普通だったら、親殺されて、国乗っ取られて、挙句の果てには殺されそうになってるんだぜ?泣くよな?
感情が無いとも受け取れるけど、本の令嬢と自分を重ねてるところを見るに、そんなことは無いんだろうな。
「なあ、リーナは何がしたい?復讐?それとも・・・」
「私は、キルスティンを助けたい。今のよりも自由な街にしたい」
驚いた、てっきり乗っ取った奴を殺したいとか言うと思ってたけど、見てる方向は違うみたい。
俺だったら、真っ先に殺すって言う自信しかないね。
「そっか、絶対叶えような、それ」
「そうですよ!私たちがお手伝いしますし!」
「ニナもビッグウェーブ乗るです!!」
「なによ、NOって言えないじゃないの」
なんだかんだ俺らが励ましたら、黙って俯いてしまった。
彼女はもしかしたら、シャイなだけなのかもしれないね。
そう考えたら、リーナがかわいく見えるな。
◇◆◇
次の日、森を抜けてしばらく歩いた時、奥の方にでかい街が見えてきたなぁ。
王都みたいなでかい城では無いものの、細長くて高い建物が目立ってて、それを囲む感じで塀がそびえたってるね。
「あそこがキルスティン?」
「すごい高い建物ですねえ!あそこに悪い人たちがいるのでしょうか?」
「高い高いなのですー!!」
「偉ぶってる奴は大体高いところから見下してるものよ。おそらく最上階でしょうね」
リーナの反応を見る限り、あの高い建物がある場所がキルスティンみたいだね。それに、高いところにいるっていうのも正解みたいだ。
でも、あれだけ厳重な塀に囲まれてるわけだし、恐らく出入り口も封鎖されてたり、門番とかいるよな?
そうなってくると、どうやって中に入ろうか?って問題があるね。
別に俺一人だったら強行突破で、正面から突っ込んでもいいんだけど、いかんせんリーナがいるからね。
仮に強引に入ったとしても、敵に囲まれ足りでもしたら、誰かしら危ない目に遭いかねないから、さてさてどうしたものか。
「多分門から入るのは愚策だよなぁ。どっかに抜け道とかあればいいんだけど」
「ある」
「あるの!?」
抜け道があるらしい。
確かにそうだよな、リーナが無事・・・ではないけど、逃げる時に態々門から逃げたら的みたいなもんだよな。
「私が逃げた時使った。バレて無ければまだある」
「それがいいわね。囲まれるよりはマシだわ。あ!あなた様が弱いって言ってるんじゃないですよ??」
「いいよ、フォロー入れなくても」
とりあえず、リーナに道案内をしてもらって、抜け道まで進もうか。




