78話 魔法が使えない俺とサレビア
こんな夜に、サレビアとおっさんが外に出てったもんだから、なんとなく気になった俺。
別にやましいことはないだろうけど、『気配遮断』してこっそりおっさんの後ろについてってるところ。
「んー、どこ行くんだろ」
独り言を呟きながら、夜空を眺めたらまあキレイ。満点の星空に満月。夜なのに明るいって矛盾してるけど、うっすら周囲を見渡せるくらいには明るいね。
俺にはあんま関係ないけど。
抜き差し差し足って音を立てないで、ひたすら少し離れたおっさんの背中を追ってるんだけど、この道ってトリシューラと戦った崖の道じゃない?
あそこってなんかあったっけ?
「夜に女の子一人で危ないから、おっさんがついてったのかな?」
◇◆◇
やっぱあの崖だね。崖下って雪で気が付かなかったけど、海なんだね~。
満月が反射して風情があるよ。
んで、崖の蕾畑に立ってるサレビアに、後ろから話しかけてる様子のおっさん。特に怒ってる感じもないなあ。聴覚集中して盗み聞きしようかな!
「どうして来たの?」
「ここに来たかったんだ。ずっとな」
「ふーん、なんもないのにね」
「特別な場所なんだ」
なんか気まずいし、会話ってほど会話になってないような・・・。一応そっか、2人って険悪な仲なんだっけか。
そうだ!おっさん、ここで仲直りだぞ!
「・・・悪かったわ。今更だけど、あの時の事。お母さんが死んで気が気じゃなかったから、あんなこといっちゃって」
「いいんだ、わたs、俺が悪いんだ。サレビアの気持ちを考えられなかった。父親として失格だな」
「ううん、そっちだって辛かったのにね。私、この年になってやっとわかったのよ」
おお!仲直りできたじゃんか!!良かったなおっさん!サレビアの方も引け目を感じてたんだなあ。
「サレビアも14、いや今日で15だもんな」
「そうよ、よく覚えてたわね。忘れてると思ってた」
「忘れるわけないだろう、父親だからな」
お互い言葉がまた詰まっちゃったみたいだね。波の音だけが聞こえててそれ以外無音。
まー流石に、まだ完全に打ち解けました!とはならないよなあ。
「・・・その頭の花飾り、つけてくれてるんだな」
「これ?お母さんから貰った形見だもの、当然よ」
「それはな、俺と母さん・・・ロズと見つけた本物の花なんだよ」
「そうなの?これ本物?」
そうなの?てっきりアクセサリーとか、ガラス細工の類だと思ってたけど。へー、そういうのあるんだあ。
「ああ、この崖に1輪だけ咲いてた、魔力で育つ花だ」
「一凛って、今は何処にも・・・もしかして」
「ああ、今ここに生えてる全部が、その花だ。苦労したんだぞ、ロズと研究して、試行して、失敗して、ようやくここまで増えたんだ」
「お母さんと・・・、でも、どれも咲いてないよ?」
魔力で育つ花・・・つまり、トリシューラはこの崖の魔力を吸収するために、ここにいたってわけだな。なるほど、ちょっと納得。
「今日が、開花する日なんだ。15年に1度だけこの崖に流れる魔力は、特殊な挙動を見せる。その魔力で花が咲くんだ」
「15年・・・私の歳・・・。ねえ、この花って名前はついてるの?」
「そろそろ咲くぞ」
「あ・・・」
「ロズが名前を考えたんだ。名前は・・・」
崖から数多の暖かい光の玉が現れて、崖一帯を包み込む。
その光を浴びた、崖に生える垂れた蕾たちは、次々に空に向かって伸び始めて、徐々に花弁が開き始める。
赤と青のグラデーションが広がり、夜なのにはっきり分かるくらい明るい。まるで、花自体が発光してるみたいに。
やがて、崖一面はさっきまでの雑草畑ではなく、鮮やかな赤と青が入り混じった庭園に変わっていた。
崖から発せられる、光の玉とは別に、その花々自体からも鮮やかな赤い粒子と青い粒子が現れて、その粒子は天に向かって上がっていく。
今まで見た光景の中で、一番幻想的で美しい場所だ。
その光の中でにただ二人の親子が、この幻想的な花畑を独占している。
・・・って思ったけど、もう一人いないか?クレマの横に、女性の姿。
二人は気付いていないみたいだけど、俺からははっきりと見える女性の姿。二人を見て微笑んでる。
あれってまさか・・・
『私ね、お花の名前を考えてきたの』
『フフフ、気になる?』
『名前はね』
鮮やかな景色に息を呑む娘を前に
赤と青の色彩が、3人を包む光の中
クレマと女性は言った。
「「サレビア」」
我が子の名前と花の名前は、同じだったみたいだね。
「これが、誕生日プレゼントになるか分からないけど、どうかな?」
後ろから見てる限り、肩を震わせて俯いてら感じ、泣いてるのかな?
俺がこれされたら、どうだろ、泣いちゃうかなぁ?
「・・・最高のプレゼントだよ、父さん」
サレビアはただ一言、感謝述べるのだった。




