76話 魔法が使えない俺と嬉しい、楽しい、凍結龍
トリシューラから放たれる、バカでかい切先が三つに分かれた氷の槍。
こりゃ確かに、地面に着いた時点でここら辺の地帯が死ぬって言われても納得するな。
もう形容し難いレベルで大きいし、寧ろどうやって止めるの?って普通の人なら思う大きさだね。
吹雪というか、もう氷の暴風?が槍に纏わりついて、触れる前にもう凍っちゃいそうだよ。
これが地表に着弾した瞬間、ここら一帯が氷河期になるらしいから、意地でもぶっ壊さないとね!
んじゃあ、体を少し逸らして両手で握った剣を、背中にくっつくくらいに振りかぶる。
「だめだ!!逃げろ!!あんなのに勝てるはずがないだろう!!」
「そうよ!あんなもの、いくら貴方が強くても常軌を逸してるわ!!」
んあ?なーんか親子が諦めムードに入ってんなー。
全く、トリシューラといい親子といい、もうちょっと自信を持って欲しいね。
「まー見てなって、逃げるより進む方が得られる物が尊いって、証明してやっからさ!」
「な、何言って・・・」
「・・・いや、彼なら、できるのか・・・?」
ふう、まあ黙って見てなさいって。
槍はもはや目の前。さて、ぶっ壊しますか!
『剛破斬』
全身全霊の一振りが槍と衝突した瞬間、余波が波紋のように広がってく。
剣と槍の侵食合戦は、そう長くは続かなかった。
ちょっと重いけど、これくらいなら大丈夫かな!
でかいだけで、結局魔法なわけだし!そんなもん、ぶっ殺してやるよ!
「おっるぅぁあ!!!」
押し返されそうにちょっとなるけど、体重かけてこのまま
斬!!
パン!と音が鳴ったわけではないのに、聞こえたと錯覚するような衝撃が、頭の中に響く。
槍なんて最初からなかった!
そう言っても過言ではないレベルで、跡形もなく、あの凶悪な槍は無くなってた。
ふぅー、ちょっと冷やっとしたけど、斬れないものは、あまりなかったね!
よし!あの飛んでるドラゴンを何枚に刻んでやろうかな!
「・・・クカ、カ、よもやよもやだ。全身全霊の一撃を、こうも簡単に消してしまうのだな」
「そうだね、ブリューナクもガングニールも、お前みたいな反応してたよ!」
なんだろ?自分の最強魔法が破られたってのに、随分嬉しそうだなぁ。
秘策でもあんのかな?
「ねえ、お前嬉しそうじゃない?どしたん?話聞こか?」
「嬉しい・・・これはそうだ、感情だ。我は嬉しいのだ!存分に自分の力を払うことができる、唯一の相手が目の前にいるのだこらな!」
「俺は嬉しくないし、さっさと終わらせたいんだけど?」
どーやら感情が昂ってるみたいだね。寒いし雪がうざったいし、もうここら辺でおさらばしたいんだけどね。
「ふん、釣れないやつだ。まあ良い、我の全身全霊を持って、貴様の存在を我の脳裏に刻んでやる」
トリシューラの体の周りから、先程放ってきた氷のつぶてとは比較にならない、一本一本がちゃんとした氷の槍を出現させ始めたね。
んで、三つの口からそれぞれ、親子に対して放ってたような、魔法の冷凍光線のチャージをし始めてるよ。
「では、我を楽しませろ。人間よ」
「楽しませる前に殺してやるって」
『縮地』で、思い切り雪が被った地面を蹴り上げて高速接近。
放ってくる大量の氷の槍を、走りながら一網打尽にして、冷凍ビームもついでにかわすと。
芸がないなぁ、それしか出来ないならパターン読めちゃうんだよなぁ。
って思ったけど、今度は左右の口から光り輝く氷の刀身を覗かせて、大振りで乱舞してきたよ。
「クカカカ!!あぁ!当たらない!当たらないなぁ!!しかし!戦っている!心が躍るのだ!!」
「戦闘狂って、自分の事ばっかじゃん?人の事、少しは考えなよっと!!」
一番近くの右ドラゴンヘッドの斬撃をかわして、首元まで接近。
んで、首を叩っ斬る!わぉ!切断面からダイヤモンドダスト!
「まだ!まだだぞ!!人間んんんん!!!」
氷の槍を弾いて、かわして、空を蹴りながら左ドラゴンヘッドの追撃をヒラリ上に回避。
重力に身を任せて上空から下へぶつ斬り!これで、首は後一個だね。
「頭3つもあるのに、脳みそ一個?ただの飾りだね」
「カカカ!!!言われた事ないわ!そんな事ぉ!!!」
氷の槍を雨みたいに発射しながら、最後に残ったドラゴンの口から、極太凍結魔法ビームが発射。
全く、これじゃあただの悪あがきだね。
『牙陣烈斬』
スピードに身体を任せながら、剣を突き立て凍結魔導砲に突っ込むと。
紙が破れるみたいに魔法が裂けてって、遂に本体の頭まで到着。そのまま斬撃体勢!
クソでか氷結ドラゴンの頭に向かて剣を振りかぶる!
「見事なり、人間」
「んー、50点かな」
斬。
最後の首を飛ばして着地っと。はい、おしまい。
明けない冬はないってね。




