72話 魔法が使えない俺と村の異変
異常な雪が降る花の村カサブラにやってきて、おっさんの豪邸に着いたところ。でけえエントランスで女の子の怒号が屋敷中に響き渡ってる。
「今この村は大変なのよ!急に雪降るし!魔法の花が取れないから、みんなどん底だし!しかも、魔物まで増えて意味わからないし!わかる!?」
「なぜそんな・・・」
「魔王の配下が現れたの!!!」
え!?やっぱり?じゃないと説明つかないよなあ・・・
「魔王・・・だと!?さ、サレビア、怪我はないのか・・・?」
「うるさい!そういう事だから、あなたが帰ってきても迷惑なの!私を置いてった癖に!父親面しないで!!」
「サレビア様、旦那様はあなたの為に・・・」
「やめて!とにかく、私がこの村で一番強い魔法使いなんだから、配下を倒すの!!」
これは思ったより関係の修復が難しそうだなあ。あのサレビア?って娘、今日が誕生日なのに可哀そうだね。
メイドも中立の立場できついよなあ。お互いの気持ちが分かる訳だし。
それにしても、魔王の配下がここにいるのか。なんだってこの村に?お花が好きなのかな?
「たくやさん、今確かに魔王の配下って・・・」
「こここ、この寒さがそいつのせいなら、早くたたたた倒さないとね」
「そうだな、この村を放っては置けない。早急に対処を・・・ぶわっくしょん!!!!」
「おいバカ!!」
あーあ、気付かれちゃったよ。この窓際ほんとに余計な事を・・・
「誰?あなたたち」
「あー、えーっと俺らはー」
冒険者って言おうと思たんだけど、クレマが言葉を重ねてきた。
「彼らは私が頼んだ冒険者だ。彼らなら配下をどうにかしてくれるはずだ。だから、サレビアはここに」
「そんなの頼んでない!だから、父親面しないでって言ってるでしょ!わかったら出てって!!」
怒鳴った後、部屋に戻るサレビア。その背中をただただ見続けることしかできない父親の図。いやー、見ててきついよなあ。
両方の気持ちが分かるから、メンタルに突き刺さるよねぇ。
あ、おっさんと目が合っちゃった。
「・・・すまないな、こんな無様な姿を見せてしまって」
「反抗期なんだよ。そっとしてあげたら?」
「すまんな」
場の空気が、外みたいに寒いよ・・・。なんか話題を作らないと・・・魔王関連以外の話題がいいよなあ。
「えと」ってアンジェが口を開いた!ナイス!
「あの、サレビアさんの花飾り、かわいいですよね。見たことない花ですけど、手作りですか?」
「確かに!あの飾り私も気になってたんだ―!いいよねあれ!あれがこの村特産品魔法の、魔法の花なの?」
あーあの赤と青の奴か!確かに王都の花屋とか、道端とかでも見たことないよな。すげえ綺麗だし、ガラス細工みたいだね。
「あれは奥様の形見なのです。生前にプレゼントなさったもので、ずっとつけられてるのです。恐らく奥様が作ったものかと・・・」
「うむ・・・」
メイドさんが説明してくれたね。まーそっか、肌身離さず持ってる訳だし、よっぽど母親が好きなんだなあ。
俺は親いないから分からないけどさ。・・・でも一応父親はいるんだよな?俺って。
「あの飾りは・・・」っておっさんが言いかけた時、バン!!と扉が開き放たれた音が館に響いて、スタスタこっちに来るサレビア。なんか、大きい杖みたいなの持ってない?
「おい、サレビアどこに行く!?」
「私の勝手でしょ!邪魔しないで!!」
サレビアは猛ダッシュで行ってしまった・・・一応、気配探知で場所は分かるけど、どこに行くんだろう。
「ねえ、もしかして魔王の配下を倒しに行くんじゃないかな?」
「ミュラ、流石にそれは・・・あるかも」
「たくやさん!追いかけた方がって、クレマさん!!」
娘を追いかけるように、おっさんも走って行ってしまった。あーこれはまずいぞ?とっとと行かないと・・・
「たくや様・・・でしたか」
「え?うん」
メイドさんが俺に話しかけてきたけど、なんだろう?
「勝手なお願いです。お嬢様と旦那様を守ってくださいませんか。お嬢様も多分、旦那様に引け目があるんです。素直に話せない不器用な方々なのです。だから・・・」
メイドさん、本気の目をしてるね。気持ちは十二分に伝わってくるよ。声だって震えてるし。
なら、それに答えないとね。
「分かったよ。絶対助けるし、配下なんて瞬殺するからさ!安心して料理でも作って待っててよ」
「・・・ありがとう、ございます・・・」
やめてよ、湿っぽいの苦手なんだからさー!ちゃちゃっと終わらせて戻ってくるっての!
「よし!アンジェ、ミュラ、サリス・・・ニナはいい加減雪遊びやめて、追いかけるぞ!!」
「はい!絶対助けましょう!」
「ああ!配下の思い通りにはさせ・・・っくしょん!!!!!」
「大丈夫!なんとかなるよ!!・・・寒い寒い寒いぃ・・・」
「むー、ご主人様と雪遊びしたかったのですー」
・・・はあ、締まらないなあ。




