65話 魔法が使えない俺と魔王軍幹部
戦意喪失して、ひれ伏してるでかい歪な獣のミシアを、これから斬り伏せるところ。
「「わたくしは悪くない!わたくしは悪くない!!」」
「さよーなら!・・・あ?」
斬ろうとした瞬間、横から何かが飛んできたんだけど?あぶねー、ぶつかるとこだったわ!
横見たら、なにやら全身黒スーツの男が立ってて、シルクハット被ってる奴がいたんだけど、マジで誰?
「どちら様??」
「「お前は・・・!」」
ハットで顔がよく見えないけど、男かな?どっから入ってきたんだろうね?
自称神は知ってるみたいだね。
「戦闘中に失礼。私は魔王軍幹部の『マイフ』と申します。ウチの者が迷惑掛けた様ですね?」
「まあ迷惑っていうか・・・なに?幹部?」
シワ枯れた男の声で、とんでもないこと言ってきたマイフとか言う奴。
配下と幹部がいるの?魔王って。
「「貴様!何しにきたんだ!!」」
「いや失敬。ミシアの無様な様子がどうしても許せなくてですね、殺しに参りました」
「は?殺しに?仲間じゃねえの?」
驚きだよ、目の前で仲間割れ?が起きてるし。
今こいつらまとめて仕留めたら、存外今後楽になりそうだけど・・・いや、まだ油断できないかな。
「仲間・・・ですか?ご冗談を。こんな利己的で能無しの、挙句魔法を一切使えない人間にやられるなんて、魔王軍の恥晒しですよ」
「なるほど、一理あるかもね」
「「なんだと・・・!マイフ貴様!!」」
使えないやつを始末しにきたってことね。
でも、戦力を自分から削ぐ意味を俺は理解できないけども。
「魔王様もお怒りですよ。対して活躍もしないで、よくもまあまあ宗教ごっこなど、族物に成り下がりましたね」
「「貴様には関係な・・・」」
「はぁ、分からないのですか?貴女は要らないのですよ。魔王様も同じです。利益も生み出さず遊んでるだけの凡婦に価値はありません。さようなら」
うお、速!!背筋ピンとして背中で手を組んでるのに、よくそんなスピード出るね?
あー、でもなんだろう。
ミシアは別に死んでもいいんだけど、漁夫の利みたいに横から手を出されるのは、今一釈然としないなぁ。
俺の獲物なんですけど?
とりま、ミシアの前に立って、マイフの手刀を剣で受け止める俺。はぇー、手なのに岩みたいに硬いんだなぁ。
「どういうおつもりですか?庇うのですか?そのゴミを」
「いやいや、俺が戦ってたのにさ、他の奴にトドメ刺されるのが腑に落ちないだけ」
「「坊や・・・」」
剣と手の鍔迫り合いの中で、手刀の力が強くなってくね。へー、こいつ出来んじゃん。
「はぁ、仕方ありません。少年諸共殺すしかありません」
「へー、強気じゃん?老人にしては元気だね」
「少しだけ付き合ってあげますから、早く死んでくださいね」
おっと!不意打ちで蹴り入れてくんなっつの!あの速度だったら首飛ぶだろーが!
手刀の手数が多くて、確実に仕留める様な挙動を感じるね。まあ、全部防げるんだけど。
「驚きですね。手加減してるとはいえ、私の動きについて来れる人間がいるとは」
「俺も手加減してるけど大丈夫そ?」
「ハハハ!面白い小僧だ!この感覚久々だなぁ!!」
拳法使いなのか、武術っぽい乱撃を息をつく間も無く振り回してくるジジイ。
口調変わっとるやん。
その拳、蹴り、手刀、これらを全部いなして、弾いて、間合いを調整と。
まー大体このジジイのパターン分かってきたから、そろそろ攻撃に反転しようか・・・と?
なに?ジジイが攻撃をやめたぞ?なんだ?
「どうしたの?」
「やめです。こんな心踊る戦いを、こんな場所でするもんじゃない。もっとふさわしい場所とタイミングで、再びやりたいですね」
そんなもん?まーそっか、俺もちょっと楽しかったし気持ちは分かるかも。
いちごのショートケーキは最後に食べないとね。
「まあ、いつでもいいからかかってきなよ。相手になるからさ」
「ほほほ、元気がよろしいな。それじゃ、そのガラクタの始末は任せましたよそれでは」
とかなんとかいって、ジジイのマイフは消えていったけど、どうやったんだろうね。
さてと、この化け物の始末かな。




