150話 魔法が使えない俺と決戦後
首を跳ばす。
意外にもそこまで力は入れてないのに、割と刃はスッと入ったよ。
邪龍の頭は斬った勢いで空に舞い、やがて消滅していく。
それと同時に、闇の魔力で構成されていた胴体からつま先までもが、全て粉塵のように消えていく。
なんて言うんだろうなぁ、煙が上に昇ってくイメージ?
そして、その場には戦いの後だけが残った。
終わった。
邪龍との因縁に決着がついたな。
「ふう」
地面に着地した俺は、天を仰ぎ身体の力が全て抜けるような感覚に陥る。
すっきりした感じ?
立ち尽くしながら、空をぼーっと眺めてると周りから足音が聞こえてくる。
あ、4人が俺のところに近づいてきたんだな。
「たくやさん、終わりましたね」
「やっと終わったのです!」
「はー!疲れたよー!」
「私に感謝するんだな!」
アンジェ、ニナ、ミュラ、サリスが言葉を発し、各々自身の疲労を吐露する様に、俺に話しかけてくる。
「みんなお疲れ様。よく頑張ったよマジで」
「何言ってるんですか、たくやさんがいないと勝てませんでしたよ」
「いやでも、全員の力があってこ・・・」
「そうだ!!私を褒めろ!!!」
俺とアンジェがお互いを褒めあってたのに、窓際副団長が自我を見せるもんだから、雰囲気が変わっちゃったよ。
師匠に会った時は、あんなにしおらしかったのに・・・
「サリス、うるさいですよ。過度なアピールは逆効果です。あ、たくや様、ありがとうございました!」
「だ、団長おおぉぉぉ!!!」
「サリスうるさい!寧ろロビを褒めて欲しいんだけど!?」
「ロビだって五月蝿いじゃないかぁ!!」
フィラとロビもこっちに来たんだけど、ロビとサリスが喧嘩し始めちゃったよ。
フィラが頭抱えてるなぁ。
「フィラもお疲れ様、色んな意味で」
「はい、ありがとうございます・・・」
フィラと喋ってるところに、クラン達も合流してきたね。
「本当にありがとうございました。あなた方がいなければ、今頃・・・」
「まあ、感謝はしといてあげる。・・・ありがとう」
カーシャから感謝の言葉と、キアラから貰う意外な言葉に目を見開きつつも、「お疲れ様」の一言を返す俺。
そして、クランが一歩前に出て、皆を見回す。
「みんな、迷惑をかけた。本当に申し訳ない。僕はまだまだ未熟なんだって理解したよ。そして、ありがとう」
皆に向かって頭を下げるクラン。
まあ、自分が元凶なんだって自責してるんだろうな。しょうがない事案ではあると思うんだけど。
頭を上げた後、彼は俺に少しずつ近づいて、目の前で止まり、俺を見つめ始める。
・・・うわ!クランが抱きついてきたんだけど!?
「え、どうしたクラン?」
「ありがとうの言葉しか出てこない。君は僕にとっての勇者だ」
「いやいや、大げさだって・・・」
「大げさじゃないさ、助けてくれてありがとう。君が好きだ」
えー、男に告白されるのって、ちょっと嫌なんだけど。
俺そんな趣味ないし。なんか、そっち系ぽいし勘弁してほしいなあ。
「まあ、気持ちは頂いとくよ・・・」
「いやー青春じゃない?」
「師匠はこれが青春に見えるの?」
クランに抱きつかれてる最中に、師匠たちがこっちに来たね。
師匠の存在を察して、クランが俺から離れて一瞥する。
「流石私の弟子だねえ、よくやったよー。よしよし」
「褒めてくれるのはありがたいけど、抱き着かないで欲しいなあ」
「照れるなってー!」
相も変わらずこの人は、公で胸を押し付けてくるなあ。
何故だろう、男なら普通すげえ嬉しいシチュエーションのはずなのに、恥ずかしさしかないんだけど・・・
「なんだ、人間というのは、このようなことをする文化があるのか?」
「いいえ、ありませんよ。忘れてください」
俺と師匠を、冷ややかな目線で見つめる国王とヴォルゼアス。
俺までそんな目で見られるのは、ちょっと納得いかないんだけどなあ。
「皆さん、ありがとうございました。私の我儘に付き合ってくださって本当に」
「我からも詫びを入れよう。もとはといえば、我のせいなのだからな」
国王とヴォルゼアスが頭を下げる。
そんなことはどうでも良くて、ヴォルゼアスがなんでそんな体になってるのかが、気になるんだよなあ。
「ねえ、ヴォルゼアスはどうなんの?」
「私の元で暮らしてもらおうかと思っております」
マジで?大丈夫なのそれ?本人は悪くないにしても、名前に悪評がつきすぎなんじゃねえの?
あーでも、その見た目なら別に誰も邪龍だって分からないか。
「ヴォルゼアスはいいの?人間に恨みとか持ってたり・・・」
「我は気付いたのだ。人間は、悪い奴ばかりではないとな。まあ、滅ぼしてやりたい気持ちは無いでもないがな」
俺達は若干息を呑む。
もしかしたら、隙をついてまた人間に報復をするかもしれないという疑念が、若干起きてるからね。
しかし、ヴォルゼアスは「ククク」と笑う。なに笑てんだこいつ。
「ジョークだ。そんな気は毛頭ないぞ」
「笑えねえよ」
笑えない冗談に苦笑しながら、俺達は王都に戻ることにした。
さて、また帰るまで長いよなあ。国王もいることだし、不意打ちとかに気を付けないといけない・・・ん?
あれ、なんか体に、力が入らねえぞ?
そのまま寝そう。
遠くからみんなの声が聞こえるけど、どんどん遠ざかってく。
なんだなんだ?




