146話 魔法が使えない俺と二体の邪龍
剣を破壊したら、邪竜が小さい女の子になった!
あと、ついでにクランが出てきたな。意味わかんねえ光景だなぁ。
いやだってさ?
あくまで封印の剣ってのは、邪龍を封じ込める為の武器であって、あれ壊したら女の子出てくるとは、思わなくない?
ってことは、この女の子が邪龍ってこと?
おお、皆が集まってきたな。
「やりましたねたくやさん!!」
「わーやったよーー!!!!」
「ご主人様やりましたのですー!!」
うお!アンジェ、ニナ、ミュラが助走をつけて抱き着いてきたんだけど!
そのまま勢いで地面に頭ぶつけたの痛すぎ・・・
「まあ、皆のお陰だよ。ありがとう」
俺のねぎらいの言葉にニヘラっと笑う3人。これはこれで良かったかもなあ。
「サリス、よく頑張りましたね」
「・・・っ!は、はい!!団長!!!!!」
「ねーねー!ロビの研究手伝ってくれるよねえ?」
騎士団組の方も喜びを分かち合ってるみたいだね。フィラがサリスを褒めるのって、初めて見た気がする。
一方で、カーシャとキアラはクランの元に駆け寄って、彼の状態を心配して様子見してるみたいだね。
「クラン!しっかりしてください!」
「ちょっと!目を覚まさなかったら承知しないからね!」
二人の切なる願いが届いたのか、クランは「ん」と小声を漏らした後に、ゆっくりと瞼が開き始める。
眩しそうに細める目が、仲間を認識した瞬間徐々に見開かれて、薄く笑顔を作った。
「・・・やあ、ごめん。迷惑かけて・・・」
「クラン・・・!良かった!」
「たく!・・・心配させないでよね!」
彼女たちはクランに抱きつき、肩を震わせる。
まーまー、無事に勇者が帰ってきて良かったじゃんね。ちょっとは俺の事も労ってほしいんだけど。
お、師匠と国王が近づいてきたな。
師匠が俺の頭上まで回り込み、しゃがみ込んで覗いてきた。
「たくやー、よくやったねえ。師匠孝行ものだよぉ」
「師匠、ありがたいけどその言葉初めてきいたよ」
「ありがとうございます皆さん、剣の破壊をして頂いて」
皆お祝いムードだけど、個人的に倒れてる女の子が気になるんだけど?
「ねえ師匠、あの女の子なんだろう?」
「んー、邪龍?ちょっと見てみようか」
女性陣が俺から離れて、邪龍?と思わしき女の子に近づく。
黒髪に白いワンピースを着た女の子。10歳くらいかな?
皆が女の子を覗く中、国王はそっと近づき正座。その後、少女の頭を太ももに乗せ始める。要するに膝枕だね。
少しすると、女の子の瞼に力が入り、そっと目が開いていく。
暫く女の子がじっと国王を見たのちに、小さな口から紐が切れるようなか細い声で言葉を発し始める。
「・・・貴様は・・・もしや・・・」
「お久しぶりですね、りゅーさん」
どうやら、りゅーさんというのは邪龍もといこの少女の事みたいだね。
てか、国王って邪龍と知り合いだったんだ。意外だね。
「カバネ・・・か。あの時、我は・・・」
「りゅーさんのせいじゃ、ないんですよね?貴方がそんなことをするとは思えません」
んー、どういう事だろう?実際にリーンカーラを滅ぼしたのは邪龍なわけだし、こいつが悪いんじゃないの?
・・・あーなるほど、察しがついたよ。
先程の黒いオーラが再び地上に降り注ぎ始めて、龍を形作り始める。
「た、たくやさん!!り、龍が!!」
「うん、もしかして、国王が言ったことの意味って・・・」
どんどんと邪悪な魔力の塊が募っていく傍ら、倒れている勇者が俺達に説明を始める。
「ヴォルゼアスは、国王の過去がきっかけで二分化したんだ。白と黒みたいにね。国王の故郷を滅ぼしたの張本人は、恐らくあいつだよ」
「クラン、それはどういう・・・」
「じゃあ、この女の子は邪龍だけど、邪龍じゃないっていうの?」
なるほどな。
要するに、この少女は光の龍であっちの黒い塊が闇の龍ってことだ。んで、どっかのタイミングで龍は二体に分裂したと、多分そういうことだな?
「では、またあの化け物と戦わなくてはいけないという事ですか」
「ちょ、きついですよ団長・・・」
「サリスって、自信過剰なのか自信がないのかはっきりしなさいよ」
フィラ達の言葉に対して、ヴォルゼアスは首を横に振る。
「いいや、それはない。我が離れた今、あいつはただのバカ魔力の塊だ。魔法障壁は無いと言っていい」
「だが」と続け、不穏そうな顔を見せる。
「我の魔力をほとんど吸われた今、能力は抜きにしても奴の力は先ほどと変わらない。気は抜けないぞ」
「じゃー、実質弱体化してるのとどういってことだねー」
邪龍の言葉にニコニコしながら返す師匠。
まあ大体この人が思ってることは分かるよ。
「あれだね、みんなの攻撃が通用するようになったから、あいつは弱い。そう言いたいんでしょ?師匠」
「おーご名答~!流石弟子だねえ」
いや、胸を押し付けないで欲しいんだけど。視線が痛い・・・
その間にも、黒い魔力が膨張し、遂には完全に邪龍が復活を遂げた。
見た目は確かに先ほどと一緒だけど、でも前提条件が全く違う。
縛りがない分、心置きなくやれるってこったな。
さて、最終決戦だね!




