タイトル未定2026/03/01 11:45
音が聞こえる。
何処からか分からないけど、確かに聞こえるんだ。
外からなのか、中からなのか、ただ聞こえる甲高い音。
そして、小さいながらも僕を呼ぶ声が聞こえる気がする。
この真っ黒で、目の前にいる邪龍と二人きりの空間なのに。
「フム、何やら外が騒がしいようだ」
「もしかして、僕の仲間が助けに・・・」
こうしてはいられない、僕はここから出なきゃいけない。
でもどうすれば・・・
「無駄だぞ小僧。ここから出ることは敵わぬ。諦めろ」
「そんなこと分からないじゃないか。何か方法があるはずだよ」
「そんなものは無い。我が身をもって体験しているのだ」
そんなはずはない。絶対に方法が・・・
!?
なんだ!?
まるで重力が重くなるように、身体にのしかかってくる。
嫌な予感がする。
ぼくの直感はそう告げる。
邪龍はニヤッと笑う。
「兆しだな」
「兆し・・・?どういうこと?」
邪龍はため息をつき、いやいや僕に説明する。
「覚醒が近くなっているということだ」
「かく・・・せい・・・」
何を言っているかは正直分からない。
分かるとすれば、状況が悪化しているという事だけ。
早く、皆の元へ帰らないと・・・!
みんなが危ない!
◇◆◇
誤算だ。
魔法の吸収は、尻尾からだけだと勘違いしてた。
でも違ったね。
こいつ、兜の口の部分を開けて吸収しやがった!
マジかよこいつ!!
尻尾で吸収するところと、尻尾の攻撃を見せびらかすように見せて、他の部位への意識を反らして、最後まで他の部分から魔力が吸収できることを隠してたってことかよ!
こいつ、ただむやみに戦ってるだけじゃなくて、ちゃんと思考してやがったのかよ。
腹立つなー。
そして、クランの身体は歪に変形していく。
身体全体が大きくなっていき、着用している鎧はより禍々しく、翼が生え、尻尾は太く、腕と脚はどんどん筋肉量を増し、兜の部分はより龍に近く、形を変える。
そう、人間の身体から、龍の身体へと進化していくってことだね。
「そんな・・・まさか、私の魔法が・・・、ハアハア・・・ああ、ああ!!!」
「キアラちゃんは悪くありません!」
「そうそう、あれは誰でも気付かないって」
頭を抱えるキアラに対して背中をさするカーシャと、なんとなく励ます俺。聞こえてないだろうなー。
甲冑の面影を残しつつ、シルエットは邪龍そのもの。
俺らの倍くらいの大きさになって、凶悪さが増してしまった。
これもう、クランじゃないよねー。
「・・・これが邪龍ヴォルゼアス・・・ですか?」
「めちゃくちゃ強そうなのです」
「あれが、本当の姿・・・ってことぉ?」
「いや、まだ終わっていない!ここで倒せば済む話だ!!」
「倒しちゃダメなんだってば!」
驚愕の表情を隠せない彼女たちの前に立ちはだかる邪龍は、天を仰ぐ。
まるで久々に外に出た囚人のように。
先程まで持ってた黒い剣は右腕と一体化してるし、左手には龍の頭がついてる。
なんかー、前に戦ったバーグもあんな感じだった気がするなあ。
すると、邪龍は直立のまま翼を羽ばたかせ、空を飛ぶ。そして、空中から俺達に向かって左手を向ける。
左手先端の龍の口がガバッと開いたかと思うと、口の中に黒い魔力を溜め始める。
あ、これやべえやつだ。
俺は『空蹴術』で飛んで、邪龍に向かって剣を構える。んで、魔力を溜める口に向かって斬りかかる。
『剣舞・鳥襲刹牙』
邪龍から闇を圧縮したような魔導砲が口から発射される。
龍の頭を斬る勢いで剣を振るい、魔導砲に一振りをぶつける。
・・・げえ!圧えっぐ!!
魔法斬った時に手がしびれそうになってんの、初めてなんだけど!!
流れ続ける魔導砲を相殺し続けるさなか、邪龍の尻尾の存在を目の端でとらえた。
クッソ陰湿だなあ。こりゃ踏ん張らないと、っなあ!!
腕に力を入れて、魔導砲を斬り進んで、尻尾を交して入れ違いになる。
そして、遂には魔導砲の応酬は終えて、邪龍の身体はがら空き。ここまでくれば、まずは腕についてる龍の頭を斬り落として・・・
まてよ、尻尾の気配がこっちに来ない。
まさか!!
「尻尾から魔法が!!」
「や、やばいのです!!」
「魔法で反撃を・・・でも、尻尾で吸収されて・・・」
「ま、まずいぞこれは!!防御魔法もダメか!?」
尻尾の本命は俺ではなくて、地上にいるアンジェ達ってこった!
さっきの魔法吸収が脳にこびりついて、みんな正常な判断が出来なくなってる。
やべ、すぐ地上に・・・間に合わねえ!!!
このままだと、アンジェ達全員があぶねえ、どうする!!
もっと速く!
間に合えって!!
尻尾から、巨大な黒い球体が発射された。




