128話 魔法が使えない俺と出航
あー、朝日が眩しー。
マジで、一睡もできなかった。
何故かって?うるさかったから。
俺の部屋でひたすら繰り出される女子トークをひたすら聞き続けるのは、非常に辛い。
本当に、俺の部屋でやる意味が分からねえよ・・・。次からはマジで追い出そう。
そんなわけで、今俺達は船に揺られてとある目的地に向かっている。
目的地というのは、過去に邪龍を封印したと言われた街だね。
名前は『リーン・カーレ』。
昔、邪龍に滅ぼされた街で、現在の居住者はいないらしい。
陸路でも行けるけど、かなり遠回りになるから海を渡って直線距離で行った方近いってことで、騎士団の伝手で港から大き目の船に乗せてもらってるんだよね。
俺ら以外のクラン探索に参加した冒険者や、騎士団で編成された部隊も、各々散らばって探索に赴いてる。
んで、この船に乗ってるのは、アンジェ、ニナ、ミュラ、サリス、そして勇者パーティのカーシャとキアラ。
ミシアはギルドで待機して、いつでも連絡が取れるようにってある魔道具を渡してくれた。
どうやらこの魔道具は、ミシアとつながってるみたいで、一回きりだけど喋った事をミシアに送ることが出来る代物らしい。
そして、それとは逆にミシアの音声を一回だけ受信できる魔道具と、二つ持たされたのよ。
思うんだけど、声の発信が一回きりじゃなくて、ずっとお互い喋り続けることが出来たら、世紀の大発明になるんじゃねえの?
それにしても、海風と船の揺れが心地いいなあ。すげえ眠くなってくるわ。
このまま寝ようか・・・
「ニナ無理なのです!!おろろろろろ!!!!」
「ったく!ニナは根性が足りないな!!私みたいにもっと強くな・・・おろろろろろ!!」
「二人とも!大丈夫ですか!?」
「あー、船酔いかなぁ。よしよーし」
どうやら、ニナとサリスは船酔いをしてしまったようで、アンジェとミュラが介抱しているようだね。
賑やかだなあ・・・
五月蠅いから、ちょっと離れたところで寝ようかな。この船結構大きいし。
俺は、騒がしい女性陣から離れて、誰も来なさそうな場所まで移動することにした。
◇◆◇
「あっ」
少し離れた、誰も居なさそうなポイントを見つけたんだけど、どうやら先客がいたみたい。
そこにいたのはカーシャとキアラ。
彼女たちは怪訝そうな顔を浮かべながら、そこにいた。
まだ気づかれてないみたいだし、正直気まずいし、そのままフェードアウトしようかな・・・
「何しに来たの?」
やばい、バレたか。『気配遮断』使っておけばよかった。
「散歩。まさか、ここにいるとは思わなかったから。んじゃあっち行くわ」
「かまいませんよ。ここにいても」
えー、ここに居たくはないんだけどなあ。
特に話す話題もないし。
・・・いや、一応今だけは俺ら協力関係な訳なんだし、少しくらい雑談しといた方がいいよな。
「えっと、2人ってクランとどういう理由で、一緒に旅することになったの?」
なんとなくで馴れ初めを聴こうかなって思ったんだけど、少し俯いて考え始める。
なんで??
「私は、故郷の村が魔物に襲われた時、偶然2人に助けられた事がきっかけね。その時に強くなるためについていこうって思ったのよ」
キアラはそうらしい。
恩を返すって感じなのかな?
続いてカーシャの番。
「私は、村に傷ついた様子で訪れたクランを癒した事がきっかけです。その後、回復魔法が欲しいって事で、ついていきました。村を助けてくれたのもありましたし」
つまり時系列的には、カーシャ拾ってからキアラって順番なのね。
それにしても、クランがボロボロになって助けられたってのは、結構意外だなぁ。
「そしたら2人とも、クランに助けられたからって同期なんだね。あいつめっちゃかっこいいじゃん」
「当たり前でしょ、あなたも見習った方がいいんじゃない?」
「キアラちゃん、あまり煽らない方が・・・」
この魔女っ子は、なんでそんな目くじら立てて俺の事非難するんだろう。
クラン倒したから?
んまあ、仲間がやられたら敵対心も出てくるか。
・・・ん、この気配。
俺の不自然な行動が気になったのか、2人は俺に話しかけた。
「どうしたのよ、急に振り向いて」
「何か感じるのですか?」
「うん、海になにかでかいのがいるね。俺行ってくるよ」
「待って」の言葉を背に受けて、気配を感じる甲板に向かう俺。
これはー、魔物なのかな?




