127話 魔法が使えない俺と邪龍
何処だここは?
見渡す限り真っ暗。
立っているのか、浮いているのか。
上下左右何もない、ただ広がる闇。
何があったんだっけ?
僕は、港にいて、貨物船を見て、魔王幹部が出てきて・・・
そこからの記憶はあまりない。
ただ、怒りの感情が湧き上がった記憶しかない。
・・・カーシャは?キアラは?
仲間は何処へ?
こんなところに居られない。早く仲間の元へ戻らなければ。
不思議と歩くことが出来る。
暗闇の中を一歩、また一歩と進んでく。
闇の中をひたすら歩く。
歩いて、歩いて、歩いて、歩いて。
だが、何もない。
進んでいるのかも不明瞭で、不安に襲われてしまう。
一生このままここに?
ゾッとする。
・・・だめだ、弱気になっては。
僕は勇者で、魔王を倒す存在なんだ。
『諦めろ。ここには何もない』
声が聞こえた。
野太い声が、頭の中にこだまする様に。
「誰だ!ここにいるのか!?」
『目の前にいるだろう』
目の前とは言っても、黒い空間が続いているだけ。
いや、もしかしてずっと、僕は動いていないのか?
目を凝らす。
すると、見えてくる。
巨大な何かの姿。
シルエットがぼんやりしていて、認知はできないが、確かに存在する。
『見えたか?人間。忌々しいことだ』
「お前は、一体誰なんだ?」
黒より黒いシルエットに向かって問いかける僕に、謎の存在は鼻で笑った。
『貴様が渇望した癖に、我が分からないか?分かるはずだぞ?』
「僕が・・・渇望した・・・」
分からない、言っている意味が。
僕は一体何を求めたんだ?
考えても考えても、一向に思い浮かばない。
だが、口が勝手に動いてしまった。
「邪龍」
『分かるではないか』
邪龍の単語。
僕の中で妙に腑に落ちたと同時に、記憶の引き出しが一気に開け放たれる。
あぁ、そうだ。
幹部に劣勢だった僕は、力を求めたんだ。
奴らを完膚なきまでに叩き潰せるくらいの、大きな力を。
なんで、そんなことを思ってしまったのだろう。
カーシャとキアラと3人で団結して、苦楽を共にしてきたのに。
僕は一人で・・・
『フン、何を考えようと無駄だがな』
「なに?」
『今この体の所有権は我にある。この身体で人間どもを根絶やしにしてやろうか』
「・・・何故そんなことをするんだ?」
『簡単だ。人間は虫以下のゴミだからだ』
言葉の節々から伝わってくる、人間への憎悪。
僕は、怒りよりも寧ろこの邪龍に何があったのか、気になるようになってしまった。
何故だか分からないが、この邪龍から悲哀を感じるんだ。
「・・・君が人間を憎むきっかけを、僕に教えてくれないか?」
『どういうことだ?』
「君から、悲しみが伝わってくるんだ。感覚だけど」
『フン、いいだろう。ここにいても暇が過ぎるだけだ。少し昔話に花を咲かせてやろうか』
邪龍から語られる過去に、僕は少しだけ共感してしまった。
◇◆◇
騎士団本部から出た俺らは、屋敷に戻って寝るところ。
はー疲れた。なんか色々とあったから、頭が疲れちゃったよねえ。
国王も色々あるんだなーって、若干同情しちゃうね。
んま、明日から勇者の捜索が始まるし、今日はゆっくり休みたいね。
・・・というか。
「なんでサリスはこの部屋にいるのかな?後みんなも」
「ああたくや、お構いなく」
「お構いなくじゃないよ。自分の家あるでしょ?」
そう、俺の部屋にはアンジェ、ニナ、ミュラ、ミシア、そしてサリスがいる。
なんで?
「何故、私がここにいてはいけないんだ!私もお泊りしたいぞ?」
「いや、だから自分の家が・・・」
「私も!!みんなと!!一緒に居たいんだ!!!お泊り会したいんだ!!!!!!」
「・・・うん。もういいよ」
お泊り会って、明日から任務があるのに、なんで夜更かししようとしてるんだろう。
俺はこれが分からない。
あと、普通にみんな俺の部屋から出てって欲しい。
「たくやさん、朝までお喋りですよ!」
「お菓子食べるのですー!」
「サリスとお泊りなんて久々じゃん!」
「全く、困った子達ねえ」
「ミシアお菓子食べてるじゃん」
どうやら、俺の部屋で夜通し喋り倒す気みたいだ。
明日の為に、何が何でも阻止して睡眠を取りたい。
「あのさあ、せめて他の部屋で・・・」
「たくやぁぁああぁ!!!久々に一緒に居るのに、なんで冷たいんだよぉおぉ!!!寂しいよおおおおぉおおぉぉぉ!!!」
「えー・・・めんどくせえこいつ・・・。前に飯食ったじゃん・・・」
サリスに泣きながら抱きつかれ、身体を揺すられる俺。
なんかもう、どうでも良くなってきた。明日は地獄だな。




