第九話 ネットの意見
地震から三日目の夜。
由貴は端末を開き、いつもの掲示板とSNSを順に眺めていた。
話題はほぼ一つに集約されている。
ダンジョン。
最初の一日は、好奇心が先に立っていた。
入ってみた、変な空間だった、怖かった。
そういう断片的な報告が多い。
二日目になると、数が増えた。
三人から五人くらいで入った、という体験談が目立ち始める。
一人より安全だと思った、囲めばなんとかなると思った、そういう書き込みが続く。
ただ、結果はあまり良くない。
前に出た一人が殴られた。
後ろからは何が起きているかわからなかった。
声をかける余裕がなく、動きが揃わなかった。
三日目の書き込みは、少し落ち着いている。
一層でも油断すると危ない。
単体相手でも、距離を詰められると対応が遅れる。
複数で入るなら、役割を決めないと崩れる。
由貴は画面を止めて、情報を頭の中で並べる。
誰もが同じように動けている、と認識している。
自分が特別だという話は出ていない。
ステータスが見える、という話題は増えているが、数値の意味は誰もわからない。
全員同じくらいの数字が並んでいる、という書き込みもあった。
違いがあるとすれば、感覚の差。
動きやすい、反応が少し早い気がする、その程度の表現に留まっている。
スキルについての話も出始めていた。
補助、向上、そういう単語が散見される。
ただし、具体的な中身までは誰も書いていない。
自分にしか見えないものらしい、という共通認識だけが広がっている。
由貴は書き込まない。
読んで、整理するだけだ。
今のところ、レベルが上がったという確定的な報告はない。
音がした、変化があった気がする、という曖昧な話はあるが、断言している人はいない。
画面を閉じる。
自分のやっていることは、まだ誰とも重なっていない。
ただ、それを特別だとも思わない。
明日も、同じように確認して、試すだけだ
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