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現代ダンジョン世界で、俺より先に柴犬が適応した  作者: 寺田Ⅳ式


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第五話 朝の散歩の延長

 朝の散歩は、いつもと同じ時間だった。


 あんずはリードをつけられると、玄関で一度だけこちらを見る。

 急ぐ様子も、待つ様子もない。


 俺は、昨日自然公園で拾った枝を手に取った。

 反りのない、まっすぐな一本。

 そのまま持って出る。


 街は静かだった。


 家屋は倒れていない。

 道路も通れる。


 ただ、近くで見ると分かる。

 ブロック塀の細いヒビ。

 欠けた縁石。

 立て直された三角コーン。


 人は少ない。


 自然公園の入口には、規制線が張られていた。

 三角コーンと、簡単な注意書き。


 誰もいない。


 あんずは立ち止まるが、こちらを見るだけだ。


「……見るだけな」


 通じたかどうかは分からない。

 あんずは、そのまま進んだ。


 奥へ入った、その瞬間。


 あんずが体をひねり、ハーネスが抜けた。


「待て!」


 声をかける。


 止まらない。


 そのまま、走り出した。


「……しょうがないな」


 枝を握り、後を追う。



 空気が、少し変わった。


 重さも、匂いも、音も変わらない。

 けれど、境目を越えたのは分かる。


 あんずは前へ。

 早足で、迷いがない。


 横の方から影が動いた。


 ゴブリン。


 腕を振る。


 あんずが距離を詰め、一瞬で倒す。


 体が崩れ、淡い光になって消えた。


 その光を見て、ふと思い出す。


 最初にここへ入ったとき。

 頭の奥で、鈴の音のようなものが聞こえた気がした。


 こんなときのお決まりは――。


「……ステータス」


 視界の前に、淡い光が浮かぶ。


 文字と枠だけで構成された表示。

 派手さはない。



名前:小松 由貴

レベル:1


筋力 10

敏捷 10

耐久 10

器用 10

知覚 10


スキル《自己調整》



 数値はすべて同じだ。


 高いのか、低いのかは分からない。

 比較対象がない。


 ザ・ファンタジーだな、と思う。


 意味は分からないが、表示されている以上、何かしらの基準なのだろう。


 頭の中で消えろと思うと、表示は消えた。



 道を進む。


 ところどころに、スライムがいる。


 道の端や、草の上。

 動かない。


 たまに、ぷるぷると揺れるだけだ。


 あんずも、無視する。


 奥へ。


 ゴブリンが、また一体。


 今度は、俺が前に出る。


「あんず、待て」


 声をかける。


 あんずは、ぴたりと止まり、その場で座る。


 間合いを取る。


 ゴブリンが踏み込む。

 腕を振る。


 顔を突く。


 枝の先が当たり、ゴブリンがひっくり返る。


 間を詰め、喉を突く。


 終わり。


 体が光になって、消えた。


 もう一体。

 同じように倒す。


 体の感覚は変わらない。


 これは、元から動けているのか。

 それとも、何かが補正されているのか。


 判断はつかない。


 先へ進む。


 あんずは、相変わらずまっすぐだ。


 視界の先に、壁が見えてきた。


 道の終わり。

 その手前に、下へ続く階段。


 今日は、ここまでにする。


「帰ろう」


 あんずがこちらを振り向く。


 鼻を、フス、と鳴らす。


 それから、こちらへ歩いてきた。


 昼になるまで、もう少し戦える。


 そう判断して、来た道を引き返した。

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