第二十一話 積み重ねた日々
それからの日々は、淡々と過ぎていった。
由貴の生活は大きく変わらず、ダンジョン通いというルーティーンをこなしながら、学校での生活を送り、帰宅してからはインターネットでダンジョンに関する情報を拾い上げていった。
朝はあんずと共に散歩と称して、佐倉の自然公園ダンジョンの一〜三層を脳内マッピングを行いながら、地形の把握をしていった。
ゴブリンとの戦闘はあんずに任せる度合いが強く、俺は広場の周りの森を見て歩き、一匹で歩いているゴブリンを小突いて回った。
森を確認することが増えてから、たまに木製であろう宝箱を見つける機会があった。
使用用途がわからないものが多く、ほとんどのものはアイテムボックス機能付きのリュックに放り込んでいる。このリュック、最大容量がいまだにわかっておらず、さらに重量制限もかかっていないようで普段使いに転用した。
俺は木箱しか見つけられなかったが、ダンジョン通いをしている間にあんずがたまに金や銀の宝箱を地面から掘り当てる。毎回匂いをかいでいるようだが、なんの匂いがするのかはわかっていない。土の匂いしかしない。
銀の宝箱からはメガネが見つかっており、かけてみるとダンジョン産のアイテムの名称がわかるようだった。それとなぜか視力の悪い俺でも視界がクリアになる。ちゃんと度付きのようだ。
ちなみに木箱からは犬用の服や首輪などのアイテムがたくさん見つかった。全てあんずのオシャレアイテムとなっている。
休日は四層と五層まで戦闘をメインに潜っている。あんずが先行してゴブリンを倒してくれるおかげで、おれはゴブリンを安定しつつ倒していける。
体の動きが最適化されていって、無駄な動きがない分、ゴブリンを倒す速度も早くなり、次のゴブリンへ向かっていける。その分あんずへの負担も減らせていると思う。
五層では無理をせずに、あんずの戦闘力を頼りに鍛錬を行っている。あんずは唐草模様の首輪をつけてから飛躍的に速くなりゴブリン共を蹴散らしている。おれはおこぼれのゴブリンを倒す作業を行うだけだ。
あんずとの連携はできなくもないが、おれがあんずの獲物を横取りしている感が否めない。あんずもちょっと不満そうだった。
世間ではダンジョンに潜る人間が増えてきた。
佐倉ダンジョンも千葉県には唯一のダンジョンとして、人が多く集まっている。習志野駐屯地からも自衛隊が派遣されており、五層では頻繁に遭遇する。事情を訊かれたりすることもあるが、このご時世なので体を鍛えるため、と説明している。
一〜二層では一般の人たちが三〜五人でゴブリンを袋叩きにしていた。三層以降では逆に人間が袋叩きに遭うので安全圏でみな戦っている。
装備は基本的にホームセンターで手に入るもので身を固めている人が多く、ヘルメットにバールや鉄パイプを持ち、ゴブリンと戦っており、堅実なやり方だと思った。
やはり震災当初にダンジョンに入った人間の失敗例が大きく報道されたのが大きい。
ダンジョンを出ると顔見知りのお姉さんやおじさんが声をかけてくる。お目当てはあんずのようで、撫でたりおやつをくれたりする。あんずも表情には出さないが尻尾が揺れていて喜んでいるのがわかる。
インターネット上でのダンジョンに関する書き込みやニュースも体験談で語られることが増えてきた。全国的にみても、やはり一〜二層を三〜五人でかたまり、ゴブリンを袋叩きにする手法が主流と語られた。
三層はやはり壁となっているようで、三体に対して五人だと、アドバンテージが低いらしく、どうしても怪我人が出るようだった。人が戦っているのを見ることがあるが、鉄パイプやバールで殴られているのに、なかなかゴブリンは消えなかった。あいつら意外とタフである。
おれの急所を狙う戦法は戦いに影響しやすいが、一般の武道の経験がない人にとっては、狙った位置に全力をもって武器を当てることは難易度が高いようだった。
たまに近所の高校の制服姿の学生も見ることはあるが、大抵一層で戦っているようである。無理はしないでほしい。
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